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若者の黒魔法離れが深刻ですが、就職してみたら待遇いいし、社長も使い魔もかわいくて最高です!  作者: 森田季節
アンデッドのタダ働き? 編

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103 スゴ腕ネクロマンサー

 その日の夜は、何事もなく過ぎた。相手の追手が来るかもだなんて危惧も少しはあったのだが。


「それはないと思ってたんだよね。正解だったね」

 朝、それについて話をした。

「なんで、ガーベラはそう思うんだ?」

「だって、アンデッド一人のためだけにそんな時間を費やすと、生産性が落ちちゃうからさー。利益を出すことしか考えてないような奴が考えたシステムの会社だから、利益にならないことはやらないんじゃないかなーって」


 ひどい話だとは思うけど、さもありなんという気はする。

 大量のアンデッドを働かせてるなら、一人欠けたからといって、そんなのを探すよりは新しいアンデッドを工場のラインに入れたほうが効果的だろう。

 代わりはいくらでもいるというわけだ。


 これはケルケル社長と話をするしかないな。もし、社長の度量じゃなかったら、厄介ごとばかり持ち込む問題のある新入社員って思われてるところだ……。


 会社に行くと、ガーベラも交えて、昨日聞いた話を社長に伝えた。


「う~ん……。これは難問ですねえ……」

 社長も珍しく、困り気味だ。

「その会社が非人道的だということはわかります。ですが、法的にはなんら違法性がないんです。ネクロマンサーが呼び出したアンデッドには人権がありませんので……」


 そうじゃないかとは思ってたけど、やっぱりか。

「でも、死体は墓場にあったわけですよね。死体を掘り返すのは犯罪じゃないんですか?」

「はい、埋めたばかりの、その家族もちゃんと存命しているような死体をお墓から出してきたら犯罪です。しかし――」


 社長もうつむいてしまう。

「たとえば身寄りのない死体なんていくらでもありますし、長い年月の間に墓地そのものが打ち捨てられてしまったところすら全国規模では相当数にのぼります。墓地の多くは二百年以内に機能を終えると言いますし」


「そういえば、三百年前や五百年前の墓がゴロゴロしてる墓地はまずないですよね……」

「となると、訴えを起こす権利を持ってる人がいないというわけです……」


「あ、そういえば、ワタシも百年以上前に死んでねー、肉体も朽ちてたから、そこはネクロマンサーが肉をつける施術をやったみたいだねー」

 そういうメンテナンスはしてるのか。そりゃ、今も機能してる共同墓地に行って、墓荒らしをしまくるほど敵もバカじゃないか。


「そのネクロマンサーって、ヴァニタザールって方でしょうね。本人ももうとんでもなく長く生きてる、なかばアンデッドじみた人で、長く生きているうちに紫魔法のほうもかなり習得したというわけです」


「社長もすぐに名前が浮かぶぐらいの有名人なわけですね」


「普通の黒魔法使いでは、そんな大量のアンデッドを使役して働かせるなんてことは到底できません。なので、そんなアンデッドの問題を前提にした法律など、なかったわけです……」

 ケルケル社長の尻尾がぺたんと垂れている。すぐには対策が思いつかないのだろう。


「巨悪は法を守りながら悪事をなすって言葉がありますわ。これはそういうケースのようですわね……」

 セルリアの言葉が的確に現状を示している。

 いわば、ヴァニタザールというネクロマンサーは法の抜け道を進んでいるわけだ。


 アンデッドをどう使おうと、そんなものはネクロマンサーの勝手だ。そのアンデッド自体に犯罪行為をやらせたりしないかぎりは問題はない。


「あの、長丁場になるかもしれませんけど、アンデッドの雇用条件を改善しろと運動をするとか……」

「フランツ、まさに長丁場になっちゃうし、その前にガーベラのことがばれて、こっちが訴えられるよ。わらわたちはガーベラというモノをネクロマンサーから『盗んでる』状態なんだから」

 メアリが腕組みしながら言った。


 この敵は手ごわいぞ……。


「まったくもって、この会社は社会悪なんですけどねえ。なにせ、アンデッドを使ったひどい雇用条件で、激安の商品を実現してるわけですから。まともな給料を払っている会社が駆逐されてしまうんです」


「そうですわね。たしかに時給ゼロ円で社員が働きまくるライバル会社があったら、まともな会社はやっていけなくなってしまいますわ」


 弱ったぞ……。

 解決策が今回ばかりはちっとも見つからない……。


 そんなところに、クルーニャさんがいきなり部屋に入ってきた。

 男に騙されて沼で自殺しそうになってるのを助けて以来、住み込みで掃除のバイトをしているわけだから、ここにいるのは何もおかしくないけど、やけに焦っているように見える。


「社長、大変、大変! 変なお客さんが来てるんです!」

「黒魔法の関係者の方は変な方が多いですから、それだけだと誰かわかりませんねえ」

 社長がのほほんと冗談みたいなことを言った。とはいえ、かなりの正論な気もする。


「いえ! ほんとにとてつもなく変な人なんです! おかしな仮面、かぶってますし!」

 それで社長の表情も変わった。

「そうですか。向こうはもう気づいてたらしいですね。お呼びしてください」


 この展開は、もしかして……。


「社長、ヴァニタザールってネクロマンサーが来たんですか……?」

「ええ、間違いないですね。まあ、いきなり襲いかかってくるような人ではないので、そこはご安心ください」

 社長の言葉は穏やかだけど、目が笑っていなかった。



 俺たちは応接室に移動した。

 今更、ガーベラを隠しても絶対にバレてるだろうし、同席させることにした。


 そして、入ってきたのはネコだかトラだかの仮面をかぶった人物だった。

 仮面の人物ってもっとボスキャラっぽい禍々しいのが来るイメージだったんだけど、コミカルなのが来たぞ……。


「あっ、魔界で流行ったタイガーニャンコのお面ですわ!」

「マジでキャラクターグッズなのかよ!」


 しかし、そいつがネクロマンサーというのは間違いないようだった。

 なにせ両側にやたらと体につぎはぎの痕があるアンデッドらしき子が並んでいるのだ。部下みたいなのを従えている。


「ずいぶんとお久しぶりですねえ、ヴァニー」

「なかなか楽しくやってるみたいじゃない、ケルー」


 社長とヴァニタザールはお互いにニックネームみたいなので呼び合った。

 ということは、二人は知り合いなのか!?


新キャラ、また登場しましたw

さて、明日、ついにダッシュエックス文庫より1巻が発売します!

特典情報は過去にも活動報告で書きましたが、再掲しました! さらにサイン本の情報なども追記しました! よろしければ活動報告をごらんください!

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> たしかに時給ゼロ円で 円、意外の表現のほうがいいのでは?
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