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朱き帝國  作者: reden
61/79

第51話 魔獣

更新遅くなって申し訳ありません。

仕事がかなり立て込んでまして…

 空路、モラヴィア王都キュリロスへと侵攻したソ連赤軍と、これを迎え撃つ叛乱軍。

 通常であれば外からの攻撃に対してこの上ない守りとなるはずの城門は、赤軍の空挺降下による奇襲によって為す術も無く突破されてしまい、戦場は早くも都市の内部へと移っていった。

 城門が突破されたのを見て取った叛乱軍は、すぐさま手持ちの戦力から市街戦の切り札ともいえるキメラ部隊を宮城攻略部隊から引き抜き、これに歩兵2個大隊と魔道院の高位魔術師たちをつけてソ連軍迎撃に向かわせる。

 未だ都市外で空挺降下後の集結・再編を行っている部隊も含めれば、ソ連側が今回投入しているのは1個空挺軍団――3個旅団にも上るのに対し、叛乱軍が用意できた戦力は余りにも寡兵。

 もともと、王都守備軍から離反した2個連隊に軽武装の衛視隊を加えた程度の戦力しかもたず、さらには宮城攻略のために戦力を割き、加えて城門を警備していた大隊をなすすべなく殲滅されているのだ。

 赤軍と叛乱軍。彼我の戦力差は絶望的に開いていたが、モラヴィア側将兵は王都防衛―――それも売国奴に引き入れられた侵略者が相手ということもあって士気は高く、もう一方のソ連側も戦争終結をかけた戦いという明確な目的を与えられており、もともと精鋭揃いの空挺軍団が出張っていることもあって、士気は充実していた

 両軍は市街の中ほどで激突し、双方とも退くことなく凄まじい消耗戦が繰り広げられることとなる。


「槍隊、前へ!」


 白鎧に身を包んだ叛乱軍魔道兵将校の命令が響き渡り、モラヴィア戦列歩兵の中隊横列は槍の穂先を揃えて槍衾を形成すると、一糸乱れぬ動きで前進を開始した。

 王都の目抜きであるアルトリート中央通り。2頭立ての馬車が3台並んですれ違えるだけの幅を持った大通りを塞ぐように、頑強な甲冑に身を包んだ重装歩兵が横一線に並び、その背後には第2列、第3列と後続の横隊が並ぶ。

 さらにその後方には火力支援と結界防御を担当する魔術師たちが配置され、これが指揮官の号令を受けて一斉に動き出した。

 魔術師の詠唱を背に、モラヴィア重装歩兵の横列は長槍の穂先を揃えると、前方に展開するソ連軍を威圧するように真っ向から突進していく。

 

 この攻撃に直接晒されることとなったのは、本隊に先行して市内に浸透を図っていたソ連側の偵察小隊だった。

 拓けた大通りをいっそ無防備なまでに堂々と突っ切ってくる叛乱軍に対し、小隊指揮官を務める空挺軍少尉は落ち着き払って迎撃を命じた。

 たちまち軽機関銃の猛烈な弾幕がモラヴィア戦列歩兵の横列に襲いかかる。 

 しかし、銃弾が鎧甲冑もろとも歩兵の肉体を引き裂かんとする間際、ソ連側にとっては信じ難い光景が彼らの視界に飛び込んできた。


 モラヴィア歩兵のやや前方の空間が一瞬歪んだかと思うと、連続した火花が弾け飛び、発射される機銃弾の弾幕は不可視の壁によって悉く跳ね返されていく。


「くそ、あれが防御結界か?ふざけた手品を…!」


 状況をみてとった少尉は忌々し気に罵声を吐き捨てると、傍らに控える軍曹セルジャントに視線を向ける。

 少尉と同じように苦い表情を浮かべた軍曹セルジャントは、少尉の視線に気づいて迷わず首を左右に振った。

 結界魔術。すでに幾度も実戦において遭遇している技術であるだけに、その突破法は赤軍において既に確立されている。

 やり方は単純明快。大火力の集中によって結界とその基点に負荷をかけ、純粋な力押しで打ち破るというのがそれだ。


 もっとも、このような方法で結界を攻略しているのは魔道技術を持たない一方でこの世界の常識を覆す規模の砲兵火力を有している赤軍くらいのものであり、この世界での一般的な軍が結界魔術に対する場合、それは同じ魔術師による結界解呪という手法が大概用いられる。

 そして、赤軍式の結界突破法を用いるにしても小隊の最大火力である軽機が完全に封殺されている現状では成功は覚束ない。


(やむを得んか…)


 少尉は後退と口にしかけ、軍曹の横に立つ政治将校ザムポリトの存在を思い出してすぐに表現を変える。


「…まずは中隊本部に伝令を。最悪の場合、本部の対戦車小隊と共同で片付ける。先ほど通過した2ブロック手前の交差路まで奴らを誘引するぞ。」


「了解しました、同志タヴァーリッシ


 指示を受けた兵が後方へ向けて走り、敵の迎撃に当たっていた他の空挺隊員たちも手榴弾を投擲すると牽制の射撃を行いつつ整然と後退していく。

 自身も後方へ向かって駆けながら、少尉は軍曹に呼びかけた。


「先行して狙撃兵を配置につかせろ。前列の歩兵より、後ろに控えてる連中を片付けるのが先決だ」


了解ダー


 軍曹は手近の兵4人を指名して大通りから逸れた脇道へと走り去った。

 


  

 ■ ■ ■




「敵は後退するようです」


「……思い切りが良いな。それに兵の動きも素早い」


 赤軍と接敵した王都守備軍魔道兵連隊の将校であるフレドリク・ヘーゲル魔道兵大尉は、己の眼前から波の引くような素早さで撤収していく赤軍の動きに内心で舌を巻いていた。

 ソ連側の動きを観察していた彼は、統制のとれた動きで退いていくソ連兵の動きを忌々しさと賛嘆の入り交じった複雑な面持ちで見やると、傍らに立つ幕僚のひとりに命じた。


「恐らくは斥候だろう。奴らを逃すな。魔道兵、弓箭兵に射掛けさせよ」


 指示が伝達される合間。ヘーゲルは先程のソ連兵の動きについて考えていた。

 

(散兵かあれは?しかし、それにしたところで動きの統制が取れ過ぎている。かなりの精鋭だな)


 内紛のただ中とはいえ、敵中奥深くの首都攻略に送り込んでくるほどの者達である。

 異界軍のなかでも選りすぐりの精鋭と考えるべきだろう。

 それに、あの鉄飛礫を放つ飛び道具も凄まじい。

 威力もそうだが、なにより脅威的なのは連射能力と面制圧力だ。

 結界なしにあの弾幕の中に飛び込もうものなら、中隊どころか大隊であっても瞬く間にすり潰されてしまうだろう。

 貴族将校の内心をよそに、叛乱軍の弓箭兵が攻撃を開始した。

 弓兵たちの背後には魔術師が陣取り、短杖ワンドを手に詠唱を行う。


 勢い良く放たれた矢は銀色の雨となって赤軍将兵の頭上に降り注ぎ、幾人かの不運な兵を射殺したが、半数以上の赤軍兵士は離脱に成功する。

 弓隊による曲射というのは、いってみれば赤軍の多連装ロケット部隊と同様に戦場の面制圧を行うためのものなので、ある程度纏まった大部隊を投入しなくては十分な効果を発揮できないのだ。

 モラヴィア軍の場合、これらの命中率や威力を高めるために弓兵隊に魔術師による支援部隊を随伴させて運用しているのだが、今回の場合、魔術師たちが十分に活動できない理由があった。

 後退する赤軍に追い縋ろうとする槍兵隊。その横隊に続く魔術兵部隊が通りの交差路に差し掛かったとき。

 建物の物陰で閃光が瞬き、詠唱を始めようとしていた魔術師の上半身が横殴りに仰け反った。

 白い軍帽が宙に舞い、銃弾によって穴のあいた側頭部から噴水のように脳漿の飛沫がしぶく。

 撃たれた魔術師の死体は、その真横を進んでいた別の魔術師に向かって投げ出され、互いにもつれ合いながら倒れた。


「!?て、敵襲!魔道兵が狙われているぞ!後衛にも結界を――」


 うわ擦った命令が再び響いた銃声によって掻き消され、たったいま命令を発しようとした魔導師が糸のきれた人形のように崩折れた。

 

「くそ、一体どこから狙ってる!?」


「結界だ!後衛にも結界を展開しろ!」


 立て続けに将校、魔導師を狙撃され、モラヴィア軍の隊形がたちまち乱れたつ。

 慌てて結界の展開範囲を広げようと詠唱を始める魔術師達。しかし、その詠唱がつづく間にも不吉な銃声が次々と木霊し、その度にモラヴィアの将兵たちが倒れていく。

 倒れるのは、いずれも将校、あるいは魔術師といった部隊の基幹となる者たちばかりだ。

 姿の見えぬ敵によって将校、指揮官達が次々に狙い撃ちされていく光景を前に、叛乱軍将兵の間に混乱が広がっていく。

 兵たちの動揺を鎮めようにも、それをなすべき指揮官自身が集中的に狙われているのでは思うに任せない。


「おのれ、悪辣な…!」


 旗下の部隊の惨状をまえに、叛乱軍指揮官は憎々しげに歯ぎしりした。

 このまま無理押しすれば、前進と引き換えに魔道兵が全滅しかねない。


「弓兵隊の支援魔術師に結界を張らせろ!」

 

 語気荒く指揮官が命じるが、詠唱が完了する前に狙撃される魔術師が続出し、中隊は潰滅こそ免れたものの進軍速度は大きく低下することとなった。


 このような光景は、赤軍と交戦にはいったモラヴィア軍歩兵部隊の多くで見られた。

 勇敢だが、しかし同時に無謀ともいえるモラヴィア軍の突撃をソ連軍がいなし、市の各所に散った狙撃兵たちによって指揮官や魔術師が次々に倒されていくと、次第にモラヴィア軍の動きは精彩を欠くものへと変わっていき、やがては指揮系統を完全に破壊され、軍隊としての体をなさなくなる。

 強引に接近戦に持ち込もうと無理押しした結果、将校・下士官が狙撃によって皆殺しにされてしまった隊などは指揮系統が完全に崩壊し、四散しはじめている有様である。

 そうなってしまえば、もはや兵がどれだけ生き残っていようとも脅威にはなりえない。

 しかし、モラヴィアの歩兵を赤軍が圧倒する一方で、赤軍の本隊も難敵による攻撃を受けていた。



 ■ ■ ■



 このとき、王都へ突入した赤軍空挺軍団の最前衛に位置していたのは、先遣隊含めて第一陣として降下を行った第9空挺旅団の4個大隊であり、これらの隊が目標地点である宮城を目指す一方、第10、第201の2個旅団がそれぞれ城門近辺の軍事施設、魔道院にむけて隷下諸隊の展開を開始していた。

 その軍団司令部は制圧した城門付近の守備軍営舎に置かれ、ほか城門付近の街区に転々と散らばる守備軍・衛視隊の詰所などに分散して、各旅団・大隊の指揮機能が展開した。

 総兵力1万、砲迫36門を有する赤軍側の兵力は、これまでの戦闘で消耗したモラヴィア側叛乱軍の3倍近くに達しており、最も有利に戦えるであろう城門の防御施設が既に抜かれていること、未だに宮城にこもる政府軍を排除できていないことも考え合わせるならば、既に叛乱軍に勝ちの目はほとんど残されていなかったといえる。

 その事実はソ連空挺軍団司令部も認識していたが、ソ連指揮官たちの表情には油断の色は無い。

 戦争そのものは優位に進めていても、屍兵戦術のようにモラヴィア軍の魔術によって裏をかかれ、大きな損害を被った事は一度や二度ではないからだ。


「敵の進路は?」


 占拠した守備隊屯所の一室。

 その中央に設えられた長机に地図を広げ、第9旅団第2落下傘大隊のエドゥアルド・ミーシン少佐は部下に訊ねた。


「まず、王都中央の通りから歩兵大隊1個。こちらは我が偵察小隊が確認しました。編成に魔術師を含んでおるようで、こちらの最初の攻撃は失敗に終わっています……例の、防御結界ですな」


 幕僚のドロズドフ中尉が答え、地図の1点―――市街中央の大通りを含めた周辺3街区を指でなぞった。


「作戦前に模擬戦で実施しましたように、まず周辺に埋伏した狙撃兵に魔術師を始末させます。幸い、連中の歩兵は古代ローマのファランクス宜しく隊形を組んでの横隊突撃が基本戦術のようですからな。まだ対処のしようがある」


 赤軍が今回の作戦に際して抱いていた最大の不安要素は、火力の不足だった。

 これまでの開戦で遭遇したモラヴィア軍は、いずれも自軍の防御に結界魔術を駆使しており、その性能はこちらの砲兵師団の攻撃にも耐え抜くほどである。

 もし、これらを王都のモラヴィア軍が使用してきた場合、最悪こちらの攻撃一切が跳ね返される恐れすらあった。

 通常、ソ連の空挺軍団は3個空挺旅団を基幹として編成される。

 各旅団は落下傘兵4個大隊に加えて対空・通信・偵察中隊を各1個、さらに砲や迫撃砲各6門程度を有する旅団砲兵隊を擁している。

 また、軍団司令部直轄として観測小隊、装備小隊、さらにT-26を50両ばかり配備された軽戦車大隊が加わるのだが、輸送機のペイロードの問題から戦車の空輸はできず、本作戦には投入されていない。

 この程度の火力で、王都守備軍の精鋭が展開するであろう結界を突破できるものか、という不安は常に付きまとっていた。

 それでもなおこの作戦が実施されたのは、政治的な要求もさることながら移動目標に対して施術する結界と、静止目標に対して施術する結界では、その強度に大きな差があることがわかっており、前者であれば大口径の機関砲でも突破は可能であることがクラナ大河突破戦において空軍によって証明されていたためだ。

 無論、それであっても防御結界の存在が脅威であることに変わりはない。なにしろ、施術を受けた歩兵一人ひとりが装甲車輌並の防御力を有しているのだ。

 ゆえに、まず赤軍が行うべきは結界術者である魔術師の排除だ。


「現在、狙撃兵により魔術師を漸減しつつ、敵集団を旅団砲兵の射界まで誘引しております。…モラヴィア人の結界は大きな脅威ですが、兵器・歩兵戦術双方の後進性に助けられました」


 ドロズドフ中尉の言に、ミーシン少佐は頷いた。


「建物の密集した市街地にあの横隊陣形では進路も自ずと絞られる。敵の動きは15分おきに旅団本部に報告を―――」


 ミーシンは、ふと妙な違和感を感じて言葉を止めた。


(―――なんだ?)


 突然、鼻についた獣の匂い。

 ごく微かな違和感。しかし、何かが彼に警告した。

 地図から顔を上げかけた矢先、少佐マイオールの視界の隅―――陽光の差し込む窓の外を黒い影が掠めた。

 

 背筋を貫くぞくりとした悪寒。

 直後、部屋の入り口横の窓がけたたましい音とともに破られ、飛び込んできた黒い鞭のような長い尾が扉の脇で立哨していた兵士を横殴りに叩き据えた。

 反応する暇さえ与えられなかった。

 空中を切りもみして吹っ飛んだ兵が壁に叩きつけられてグシャリと潰れる音を響かせるのと、屋内に飛び込んだキメラが床に着地したのはほぼ同時だった。

 窓が破られると同時に、幕僚たちが一斉に窓の方を振り返り、兵が吹き飛ばされる光景に幾人かがホルスターの拳銃に手をかける。


 だが、彼らが反撃に移るより、キメラが動くほうが早かった。

 獅子、狼、鷲の三つ首をもった異形の怪物――その獅子の首がぱっくりと裂けるように大口を開き、ヒュゥッと空気を吸い込むような音が辺りに響く。

 ソ連将校たちが拳銃を引き抜き、狙いを定めるまでに2秒。そして引き金が引かれる間際に、キメラの口から放たれた青白い炎がミーシン達を飲み込んだ。




 ■ ■ ■





 大隊本部の置かれている建物から響いた爆発音は、当然ながら周辺に展開する本部付き小隊にも聞こえた。

 部下と共に駆けつけた小隊指揮官のアントン・プレハーノフ少尉は破られた窓から青白い焔を吹き上げる石造りの建築物を見て一瞬呆然と立ちすくみ、続いて建物周辺に転々と転がる付近警戒にあたっていた兵の屍を見つけて顔色を変えた。


「くそっ!なんてこと―――」


 大隊本部を見舞った大惨事に引き攣った呻きを漏らす少尉だったが、それも建物の入り口の扉が吹っ飛び、そこから黒い固まりを口にくわえた異形の獣が飛び出てきたことで中断された。

 小隊員達の短機関銃が一斉に火蓋を切り切り、7.62ミリ弾の弾幕が怪物の総身を縫い上げる。

 耳を塞ぎたくなるような絶叫を三つ首から同時に放ち、魔獣は地面にのたうったが、直ぐに強靭な四肢で飛び上がると、近くに放置された馬車の荷台を踏み台にして燃えさかる建物の屋根に飛び乗り、そのまま屋根から屋根へと飛び移って瞬く間に兵士たちの視界から駆け去った。

 しばらくして、怪物の消えた方角から散発的な銃声が聞こえ、付近の哨戒に当たっていた小隊軍曹セルジャントが数名の部下を引き連れて駆けてきた。


「同志小隊長殿、先ほどキメラに遭遇しましたが、大隊本部が襲撃を?」


「何故分かった」


 俯き、感情の抜け落ちた声音で短く訊ねる少尉に、軍曹セルジャントは一瞬言いづらそうに口篭もってから、ややあって答えた。


「死んだ将校の首を咥えておりました。……その、パダーエフ大尉殿の」


 軍曹セルジャントが口にしたのは政治担当の副大隊長の名前だった。

 少尉の記憶通りならば、今頃は大隊長以下の将校たちと共に建物内にいたはずだ。

 軍曹セルジャントの言葉に応えることはせず、少尉は乾ききった己の唇を軽く湿らせると、大きく息を吐いて顔を上げた。

 

「まず、生存者の確認をしろ。それから全員を集める、ここにだ。通信班の安否を確認し、無線機を含めてここに移動させろ。キメラが屋内戦にも対応しているならば、建物内はかえって危険だ」


 頭の中の情報を整理しつつそこまで命じた少尉は、そこでふと、先ほど自分が何気なく口にした台詞について考える。

 


 ――――キメラが…屋内戦に対応している?



 キメラ。赤軍の戦車・騎兵に相当するモラヴィアの陸戦兵器。

 機動戦においては比類なき打撃力を有し、その強靭な生命力は小銃弾の弾幕に対してもある程度の耐久力を有する。

 事前情報、あるいは第9旅団が以前に遭遇したことのあるバルト方面での防衛戦では、大型のヒグマもかくやという巨体だったが、今回目にしたそれは、以前見たものよりも幾分か小さい。

 そう。一般的な家屋内でもどうにか動き回れる程度には…


 そこまで考えが至ったところで、少尉の背筋を冷たいものが滑り落ちる。


軍曹セルジャント。通信班のすぐに呼び寄せろ。旅団本部に至急報告する。急げ!」




 












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