ベネディクト4
さて、頭も冷えた事だし、とにかくリルのドレスを作る手配をしないといけないな。
「うむ、あの時はリルに見つめられてうっかり欲望のかけらが顔を出してしまったな」
よくよく考えれば、私に採寸など出来るわけがなかった。
やはり、リルを自分の物にしたくてしたくてしょうがなかったのだろう。
「それにしても、やりすぎたかもしれんな」
頭を冷やしたら、女性の服を脱がすなど言語道断である。
服を脱がされそうになる事など、経験もした事無いだろうリルには申し訳ないことをしてしまった。
しかし、掴んだ腕の感触は柔らかく弾力のある肌だった。
あのリルを抱き込めばきっともっと・・・・・・。
はっ!いかんいかん。最近己の欲望に忠実になって来てしまっているな。
ともかく、今はリルのドレスを完成させる事が先決だ。
「おい!誰か!誰かいないのか!」
「はい。ベネディクト様。御呼びでしょうか?」
ふむ。メイド頭か。悪くない。
「リルに花嫁衣装をつくれ。もちろん、金に糸目はつけない。この世界で一番リルを飾り立ててくれるものを作るのだ」
ん?なんだ?私は何かおかしい事を言っただろうか?
「・・・・失礼ですが、ベネディクト様。なぜ、リルに花嫁衣裳を・・・・・?」
「それはお前に報告する義務があるとは思えんが?」
なぜ、私がお前にいちいち報告しなければならない。メイドのくせに図々しい。
「も、申し訳ございません。しかし、結婚の予定もないリルに花嫁衣裳とは、母変わりの私といたしましてはベネディクト様のお手を煩わせる理由がわかりません」
「そうだったな。しかし、気にすることはない」
「はい?」
「・・・・鈍い奴だな。リルは私と結婚するに決まっているだろう?」
まったく、ここまで言わないと気づかないなど、メイド頭としていかがなものか。
「え?・・・・・・・あ、ああの、ベネディクト様。し、しつれいですが、それはリルも承知の事で・・・・?」
メイド頭の驚きように少しいらっとしたが、まぁ、普通に考えれば無理もないか。
リルは下っ端メイド、その相手が私と言うのであれば。
メイド頭には、リルの母親がわりと言うこともあり、リルを男爵の養女とすることも伝えた。
「・・・いいか?リルにはまだ内緒だ。驚かせたいからな。お前もくれぐれもリルに気付かれる様な事はするな」
あの、可愛い顔が驚き歓喜に変わる様を早く見てみたいものだ。
「は・・・はい。しかし・・・・・」
「もうよい。要件は伝えた。下がれ」
「・・・・失礼致します」
メイド頭はまだ何か言いたげだったが、色々聞かれるのもめんどくさかった。いくら母親代わりとは言え、所詮メイド。私の事に関して首を突っ込む必要はあるまい。それに、私の妻となるのだ。彼女にとっても喜ばしいことだろう。
「さて、これでリルのドレスも問題はないだろう。後は何が必要だったかな」
あぁ、己の欲望に打ち勝つ為に少し体でも動かす事にしよう。
最近は屋敷の中で仕事するばかりで身体がなまっていたからな。ちょうどいい。
ほくほくとリルの事を考えながら、馬を走らせるのだった。




