ベネディクト2
さて、リルとの結婚のために、私は早速陛下の元を訪れた。
「ご無沙汰いたしております、陛下。私の為にお時間を取って頂いた事・・・」
「よい!よいから、お前の要件を言え!!」
・・・相変わらず短気な奴だ。
人の挨拶は最後まできちんと聞くものだ。
思わず零れる溜息に私はしっかりと陛下を見やって言った。
「・・・・そうですね。単刀直入に申します。我がリールをどこかの貴族の養女にして下さい」
「・・・・・・・・・・・」
なんだ、その苦虫を飲み込んだような顔は。
ん?飲み込んだんじゃないか、噛み砕いただったか?
まぁ、どちらでもいい。ともかく、その顔はなんだ。
「・・・・何か問題でも?」
「ないと思っているのか?」
「はい」
何か問題になる事があっただろうか?
陛下のあれに比べれば私のこんな願いはたやすいものだろうに・・・・。
「っはぁ~・・・。お前のその悪びれないところが最も嫌だ。あぁ嫌だ。なんで俺はこんな奴と同期だったんだ・・・。不幸だ。今まで生きてきた中で最も不幸な出来事№1としか言いようがない・・・」
何やらぶつぶつと言っているが、何が不幸かって?
私とリルの結婚を認めない陛下が不幸だろう?
「・・・・睨むな。殺気を出すな。仮にもこの国の王だぞ?いや、なんだ?その呆れた顔は。・・・いや、皆まで申すな。お前の言いたい事はすべて顔に書いてある。私にだって若気の至りがひとつや二つはあったっていいじゃないか!!あ~!!もう、わかったから!わかった。確か、ジョナ男爵の所の娘がこの前他国へ嫁いで寂しい寂しいとほざいておった。そこに話を打診してみよう」
はん、最初からそう言えばいいものを無駄に出し惜しみするから危うく昔のあれやこれやを王妃に告げてしまうところだったじゃないか。
王妃とは昔の・・・・・いや、思いだすのはやめよう。こいつも(本人に直接この様な事は言わないが・・)よくあんなじゃじゃ馬を嫁にしたものだ。
それでなくても、こいつの昔話を王妃にすれば、国の王という肩書などあってないものだろうに・・・。
「・・・宜しくお願い致します」
まぁ、ともかくこれで私の悩みも一つ解消された訳だ。
早速、ジョナ男爵に私の方からもお願いしておこう。
・・・・お願いをな・・・・・。
「・・・・すまん・・・。ジョナ男爵よ・・・・」
目の前で拝んでいる陛下は見なかった事にして、用事がすんだらリルのいないこんな所に用はない。さっさと屋敷に帰ろう。
「では、陛下御膳を失礼致します」
「んぁ?・・・あぁ・・・もうさっさと帰ってくれ。出来れば、もうここにきてくれるな」
まったく、酷い言い草だ。
昔何度その命を助けてやったと思っているのだか。
まぁ、今の私は気分がいいので無視して帰るとしよう。
あぁ、そうだ。帰りに男爵の屋敷によってお願いをして帰ればいいな。
リルにはまだこの事は秘密にしておこう。
驚く顔がまた可愛いからな。
おっと、私とした事が、彼女の花嫁衣装も早く用意しておかないと彼女に似合うドレスが作れなかった。
ふむ、結婚とは存外準備が忙しいものなのだな。
しかし、リルの為を思うとこの忙しさもまた楽しいものだ。




