ベネディクト15
す、すみません。随分と間が開いてしまいました。
あの扉を閉めて誰にも見つからない様に自分の部屋に戻ってみたが、やはり誰が何のためにあのようなものを作ったのかわからない。
父の代からあったものなのだろうか?それとも、最近作られたものなのだろうか?
実際に触って扉を開けて見てもそれはわからない。
古くもなく新しくもない。そう、本物の壁だと言われても誰も気づかない。その様に作られているのだ。
「一体誰が・・・・・」
考えた所で答えは出ない。
今、こんな時にこんなものを見つけてしまったのは偶然か・・・。はたまた必然なのか・・・。
問題が次々に降りかかってくる事に思わず頭を抱える。
「・・・リル・・・・・」
あの、無邪気な笑顔があれば癒されるのに・・・・。
傍にいないとはこんなにも辛い事だったとは思わなかった。
今頃、リルは何をしているのだろう・・・・。
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「ベネディクト!!」
大きな音をさせて私の部屋に飛び込んできたレイの声で私は目を覚ました。
どうやら、うっかりうたた寝をしていたらしい。
「・・・・どうした・・・」
頭を上げると珍しく慌てているレイの姿が目に飛び込んできた。
「見つけたぞ!!」
その言葉に寝ぼけていた頭が覚醒する。
「奴らの居場所か!?」
やっと、尻尾を捕まえたのか!?
「・・・いいや、それはまだだ・・・・。だが、最近新しくメイドが増えていると言うところがあった!」
その言葉に勢いよく身体を起こした。
「本当か!?すぐにそのメイドを捕まえてここへ連れてこい!!」
そのメイドに事情を聴き、奴らがどういう風貌でどういう風にこの様な事を行っているのか聴取しなければならない。
「あぁ!今向かわせている。・・・すぐにここに連れてくるだろう」
レイは少し落ち着くとソファに身体を沈めた。
「・・・御苦労だったな。とりあえず少しは奴らの尻尾がつかめるだろう。ところで、そのメイドが増えたという屋敷はどこだ?」
散々目を光らせていたのに、それを掻い潜りメイドを増やす事が出来たとなれば、その貴族も何かしら関わっているだろう。と思い聞いた・・・。
「ジョナ男爵の所だった」
その言葉に思わず、眉を寄せたのは言うまでもない。
なぜなら、そこには今、リルがいるのだから。
それに、リルを預ける為にジョナ男爵の所は散々調査した。彼には黒いうわさも影もなかった。それなのに・・・・・。
またしても、自分の目をすり抜けられた事に思わず机を思い切り叩いた。
「!?ど、どうしたんだ!?」
あまりの突然の行動にレイも驚いて腰を浮かせている。
「・・・・すぐにジョナ男爵の元へむかう」
自分で思っているよりも低くて怒りのこもった声が出てしまった。
「は?い、いや!!まて!今、お前が言ったら全てが無駄になる!!落ち着け!!落ち着けよ!一体何があったんだ!?」
すぐにでもジョナ男爵の元へ向かいたいのに、レイに抑えられて足が前に進まない。
もちろん、レイを投げる事は簡単だが、頭の隅ではわかっている。
今行っては全て無駄になってしまう事も。
俺は自分自身を抑えるために、深い息を吐いた。
「・・・すまない。少し頭に血が上った」
「あぁ・・・・。や、やめてくれよ。本当に・・・・」
ホッと息をつくレイを横目で見ると、すぐ傍にあるソファにドサリと腰を下ろした。
・・・・リルに何かあったら、俺はどうするかわからないぞ・・・・
聞こえるはずのない心の声をジョナ男爵家の方へと睨みをきかせながら呟いた。
その頃、ジョナ男爵が身震いをしていたなど、もちろん俺にわかるはずもない。




