ベネディクト14
まったく、あの女は一体なんなんだ!
自分の部屋を追い出された形になってしまった私は、行き場もなく廊下を歩いていた。
・・・こうして廊下を歩くたびに、よろよろとたくさんの荷物を抱えていたリルに出会っていたな・・・・
そんな事を思いながら、気分転換に庭へと下りた。
手入れが行き届いている庭は、見るものの心を癒す。
少し立ち止まって庭を観察していると、ふと違和感を感じた。
もう一度、ぐるりと見回すが、特に変わったところはない。首をひねりながら私は再び足を進めた。
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「・・・・・何もわかった事がないのか・・・」
あれから数日、奴らを追っているが今だに情報が上がってこない。
目の前には数日前と同じようにレイと2人で机を囲んで話している。
「ダメだな・・・・。本当にこっちの動きが全てわかっているとしか言いようがない]
レイの言葉に思わず頭を抱える。
疑いたくはないが、ここまでこちらの動きを読まれると情報が流れているとしか思えない。しかし、この話を知っているものは少なく、皆信用のおける者達だった。
相変わらず捕えられない人買い達の素性に思わず唇を噛みしめてしまう。
「・・・ならば、奴らをおびき寄せる他ないか・・・・」
危険が伴ってくるためあまりこの手は遣いたくないのだけれども、民を危険にさらすよりはマシだと自分に言い聞かせレイに答えを促すと、レイも苦い顔をしながら頷いた。
「・・・すぐに奴らが好む様な囮の用意頼む。お前なら多かれ少なかれ心当たりもあるだろう?」
裏でも表でも顔の広いレイならば、ぴったりの人材を探して来てくれるだろう。
「・・・はいはい。その分せびられるだろうけどそれは覚悟しておいてくれよ?」
息が詰まる空間が一転、レイの発言で周りの空気が少し軽くなったようだ。
「・・・あぁ。報酬ははずもう」
お互いに目を合わせると、ふっと頬笑みレイは部屋を後にした。
上手くいくかはわからないがやってみるしかないだろう。
少しでも奴らの動向が分かればいいのだが・・・。
重い空気が漂った部屋に新しい空気を入れる為、部屋の窓を開けると、さわやかな風が部屋に入ってくる。
ふと、その風の流れに身を任せていると、先日歩いた庭が目に入った。
「!!?そうか!この前感じた違和感はこれか!!」
私は慌てて部屋を出ると、庭へ急いだ。
庭を歩いているだけではなかなかわからない物も、別の角度からのぞけば見えてくるものがある。
しかし、そこにあるはずがないと思っているものを見つける事は難しいだろう。
庭でお茶会をする様な主のいないこの家には、庭を気にするものも少ない。
ふと、気分転換に出て見た時だって、毎日見ているわけではないので気づきにくい。
「・・・・まさか、ここから・・・・」
庭に出て壁伝いに手を沿わせて歩くと、ふとそこだけ感触が変わった。
そこを思い切り押すとそこは扉の様に静かに壁が開いたのだ。
「・・・・なんてことだ。まさかこんな所に出入り口があるなんて・・・・」
まさにそこは小さな出入り口だった。
人一人がやっと通れる大きさの扉。他の壁と何ら変わりない見た目に反して少し力を入れればそれは簡単に開く扉となっていたのだ。
鍛えられている自分では通る事の出来ない入り口をじっと見つめながら思う。
一体誰がこんなものを作ったのか。誰がこんなところを通るのか・・・・・。




