ベネディクト13
「レイチェル。まずは我が領地内の子沢山な家庭を全て洗い出せ。それから、メイドを雇っている家のリストを作れ」
レイが調べた報告書をもとに、まずは人がいなくなったり増える事がすぐにわかるようにする。
「はいはい、そういうと思って作っておいたよ」
そういうと、再び、ぽんと机の上に書類を置いた。
・・・どこに隠し持っていたのか気になるところではあるが、今はそれどころではないのでとりあえず追求するのはやめておく。
ともかく、レイの出した書類に再び目を通せば、以外とこの領地も目をつけられそうな所が多い事がわかる。
「・・・で、今のところ、人が増えたりいなくなったりという報告はないのだな?」
「あぁ。しっかりと確認をさせたからそれはないと思うが・・・。人が増えると言うところは管理が杜撰な事もあるし、増えているかどうかは怪しいかもしれないな」
困ったようにそういうレイだが、たしかに管理の甘さに浸けこんでそれをされるとこちらでは確認の仕様がなかった。
「とりあえず、警備を厳重に。見回りの回数を増やせ。・・・・相手の人数もわからない。人相もわからないんじゃどうしようもないな・・・」
まったく、これ以上の対策が見つからない。
せめて、相手の人数が分かれば少しは絞り込めると言うのに・・・・。
お互い、深いため息をつくと、レイは早速警備の手配をすると、部屋を後にした。
「リル・・・・。まさか、お前がいなくなったりなどしないよな?」
別にリルが、対象にあてはまるかと言えば全く当てはまらない。
そのドジの存在感は大きいし、兄弟もいない。
だが、何か嫌な予感がする。
リルが、巻き込まれなければいいが・・・・。
「はぁ・・・。やはり、こんなことなら手放すのではなかったな」
再び深いため息をつくと、勢いよく部屋の扉があいた。
「ご主人様。大事なお仕事の話は終わりましたよね?では、この部屋の掃除の続きをさせて頂きますよ」
ノックもなしに声をかける事もなく開いた扉から入ってきたのはクソ生意気なメイドだった。
「おい。主人の部屋に入るのにノックも声もかけないとは何事だ!!あまり調子にのるな!!」
先程まで考えていた話を忘れそうになるほど、この礼儀もしらないメイドに腹がたった。
「すみませ~ん。今度から気をつけま~す!ほら、ご主人様、そんなに怖い顔されてましたら、リルさんが怖がりますよ。笑顔笑顔!」
そういうと、メイドは軽々しく私の眉間に指をあてた。
それを、不快に感じると私はその手を振り払った。
「触るな!!」
リルでもあまり触った事がないと言うのに!!
「いったぁ・・・。もう、本当ご主人様って女の扱いが酷いですよね!!女は繊細に出来てるんです!!もっと優しくしてください!」
目の前でぷりぷりと怒るメイドを一睨みすると、これ以上言うのも馬鹿らしくなりメイドに背を向けた。
「あっ!そうやって無視するのもダメですよ~!!ご主人さ・・・・・きゃぁ!」
その声に、振り返ると倒れそうになるメイドが私の胸の中に倒れ込んできた。
しかし、散々鍛え抜いている私は、それをしっかりと受け止め自分の胸の中に倒れてきたメイドを鬱陶しく見やると、ふと、いつかの事を思い出した。
そういえば・・・。リルもこうやって私にぶつかってきたのだったよな・・・・。
リルを想うと思わずギュッと抱きしめてしまいたくなる。
「・・・・ご主人様、いたぁい・・・」
その言葉にこんなメイドを本当に抱きしめていた事にはっとし慌てて腕を放す。
リルを想っていたにせよ、このメイドを抱きしめた自分に思わず舌打ちをしたくなった。
「もうっ、ご主人様たら、抱きしめるときももっと優しくして下さい・・・」
そう言って、自分にいつまでもくっついているメイドをはがすとあまりの不快さに自分の部屋を後にした。




