リル12
「シュリさん!!終わりました!!どうですか!?」
男爵家に来て早1週間。やっと私は仕事を覚えてきました。
「・・・角にホコリが・・・」
・・・どこの姑ですか!!そ、そんな指でつつっ!と誇りをチェックするなんて!!
「言っておくけれどこれが仕事なの。角だろうが床だろうが、ホコリが落ちているのはメイドの仕事として失格よ」
冷静にそう言われました。あぁ・・・クールビューティーの怒りは怖いです。
「・・・でも、最初に比べたらだいぶマシね。やっと一人で仕事が任せられるかしら?」
そう言うとシュリさんがにっこりと笑いました!!
は、初めて見ましたよ!彼女の笑顔!!あぁ!!眩しいです!!
なんて素敵な笑顔なんでしょう!
え?今まで見れなかったのは私のドジでノロマなせい?
・・そうですね。で、でも、そのおかげで彼女のこの笑顔を見れるのですから私悔いはありません!!
は?悔い改めろ・・・ですか?
・・・む、昔の事は振り返らないんですよ!!
「リールさん?何を百面相しているの?次に行くわよ!!」
あ、うっかり一人の世界に入ってました。
それにしても、私、この1週間とても気になったことがあったのです。
「はい。・・・ところでシュリさん。どうして、リルって呼んでくれないんですか?」
前を歩いていたシュリさんがちらりと私を見るとため息をつきました。
はて?私は何かおかしいことを言ったでしょうか?
「・・・・あなたここに何しに来てるの?」
何って・・・・。もちろん、お仕事です!えっへん!
「あなたのその口に出さなくても表情で語れるってすごいと思うけど・・・・。ちゃんと言葉にしなさい」
あれ?声に出てませんでしたか。おかしいですね・・・。
「で、仕事に来ているのよね?ならば、愛称で呼ぶなんて間違っていると私は思うわ。他の人がどうかは知らないけれど、仕事は仕事。仕事で馴れ馴れしくなるつもりはないの」
・・・うーん・・・。以前から思ってましたけど、シュリさんって真面目ですよね。
愛称で読んだところで仕事がおろそかになるような人には見えませんが・・・・。
「気持ちの問題よ。気を引き締めているところに愛称で呼び合うなんて気が抜けてしょうがないわ」
そ、そういうものなんでしょうか?
「大体・・・私は、親しくもない人を愛称でなんて呼べないわ」
ぐさ!!
最後の言葉は声が小さかったけど、しっかり聞こえましたよ!!
ええ、私、耳はいいんです!!
都合のいい事しか聞かない耳なんですけどね!!
「さっ、そんなことよりも次の仕事よ」
そ、そんなことって・・・・くすん。
心が折れて仕事どころじゃありません。
なんて、思っていたら、前から知らないおじさんが歩いてきて、シュリさんが慌てて廊下の端により頭を下げました。
ん?って思ってる隙に、どんどん向こうからおじさんが近づいてきて、私の前で立ち止まりました。
はて、私に何か用でしょうか?
「・・・・新しく入ったメイドか?」
なにやら偉そうにそう問われたことにちょっとむかっときました。
何か言い返してやろうと思うと、口を開きかけたとたん、シュリさんが横から口を出してきました。
「も、申し訳ありません!!先日、入ったばかりの新人でございまして、まだ屋敷の事をわかっておりません!!すぐに下がらせますゆえ、何卒ご容赦くださいませ!!」
ん?必死で誤っているということは・・・・・
「気にするな。そなた、名を申せ」
「・・・・リール・グランダでございます」
「・・・リール・グランダ・・・・・」
ん?なぜ繰り返したのでしょう?
「・・・・後で私の部屋まで来るように」
そう言うと、おじさんは返事も聞かずにつかつかと歩いて行かれました。
・・・・・そういえば、忘れていましたが、私この屋敷のご主人様にまだ、挨拶していませんでした・・・・・。




