ベネディクト10
今日で約束の3日だ。
そして、今、目の前には可愛らしい封筒を見せつけるように掲げているレイチェルがいる。
「・・・・早く渡せ」
思わず低く唸るような声が出てしまったが、レイは全く意に介した様子もなくにやにやと笑っている。
「では、さっさとその仕事を終わらせろ」
目の前に積まれていた仕事の山は今日一日で終わるとは思えない量だ。
「ふざけるな!!これを終わらせるとなると最低でも3日はかかる!!」
レイがもつその手紙を奪い取ろうと手を振るが、あえなく空振り。
「では、3日後ということでいいな?ベネディクト。約束したはずだろう?手紙を預かって帰るから仕事をしろと。約束通り預かって帰ったのだから、仕事をしてもらえるかな?それが終われば渡すといっているだろう?」
にやにやと笑う我が弟に殺意を覚えたのは許してほしい。
どちらにしても、この仕事を済ませればリルからの手紙が読めるのだ。
だったら、やってやろうではないか。
今日中に終わらせてやる!
そう思うと、すぐさま机に向かい仕事を始めた。
それはもう、周りの騒ぎが聞こえないくらいの勢いで。
「失礼しまーす」
リルの為リルの為・・・・・。
「ご主人様ぁ。お部屋の掃除させてもらいますね~」
ん?なに?ダメだ!ダメだ!こんな政策じゃ認められない!やり直しだ!!
「ん?」
はい、OK。これもOK。
「やぁ、君は新人さんかな?」
「え!?あ、え・・・と」
「あぁ、私はレイチェルだ」
「レイチェル様!?し、失礼しました。私、先日より新しくベネディクト様専属メイドとなりましたマーサと申します」
これは新しく・・・いやいや、新しくなんてないだろう。
「へぇ・・・。マーサね。宜しく。とりあえず今は、見ての通り集中してるから掃除はいいよ。他の所へ行ってくれる?」
ん・・・なに!?例の集団が我が領域に掃除を・・・ん?
「え・・・。ですが・・・・」
「気にしないで。ベネディクトには私から言っておくから」
って・・・・・
「うるさい!!お前ら、集中できないだろう!!どちらも目障りだ!今すぐ部屋から出て行け!!」
そういうと、2人を追い出し、再び書類に向かう。
まったく・・・。仕事をしろというくせに傍でごちゃごちゃいわれたらたまったもんじゃない!!
早くこの仕事を片付けてリルからの手紙を読まなければ。
きっと、寂しいと書かれてあるのだろう。
あぁ!!リル。すぐにでもお前に返事を書こう。
2人を追い出すと、静かになった部屋で私は再び目の前の仕事に取り掛かった。
「・・・・・これは・・・・」
ある一つの書類に目が止まった。
「・・・とうとうこの領地にまで人買いの手が伸びてきたか・・・・」
深いため息を着くとその書類を引き出しにいれ、残りの書類に目を通した。




