リル10
な、なぜ私がご主人・・・いや、ベネディクト様に手紙を書かなければいけないのでしょう?
「いいか?『ベネディクト様がお仕事をされている姿を思い浮かべ私も頑張っております』」
いいんですか!?そんな嘘かいても・・・。
・・・・えっと、ベネディクト様がお仕事をされている姿を・・・・・お、おそろしい・・・。
あぁ・・・。や、やめて下さい。そんなに書類を積み上げないでください。
お、重い・・・・・。
「どうした。ペンが止まっているぞ?」
はっ!!いけない。つい、仕事をしていた時の事をおもいだして・・・。
くっ・・・・。よくも、あの山の様な書類を持たせたあげく、さらに積み重ねてくれましたね!!
前が見えないだけじゃなくて、紙その物も積み重ねればかなりの重さになるんですよ!!
「・・・・おい、どうして『思い』が『重い』になるんだ」
あぁ!!また、やってしまいました。
もうっ!もう、やってられません!!
そんなに大事なお手紙ならご自分で書かれればいいじゃないですか!!なぜ、私がベネディクト様に手紙なんぞ書かなければならないのですか!!
・・・・と、言えたらどんなにいい事か。
「す、すみません・・・・」
いそいそと新しい紙を取り出し再び書きなおす。
これで一体何枚目なのだろう。
そんな事を、何度も何度も何度も何度も(しつこいようですが、かなり大事なんです!!そう!何度も!!!ですよ!!)書きなおし、ようやくOKをもらえた時には日はすっかり落ちていました。
「・・・・まったく、手紙ひとつ書くのにまさか、ここまで時間がかかるとは思いもよらなかったよ」
にっこりと笑うレイチェル様の笑顔・・・・いえ、もうすでに笑顔と言ってもいい代物ではなくなってきていますね。
悪魔の笑み・・・いや、魔王様の怒りの笑みが私を見下ろしていました。
「・・・・大変、申し訳ありませんでしたぁ・・・・・」
ちっともそんな事思ってませんけどぉ・・・。
私の言葉に、レイチェル様は近くにあった机を蹴飛ばしました!
ひぃぃ!!
「大変申し訳ありませんでしたぁ!!!!」
頭が膝につくくらいのお辞儀をしてなんとか無言で・・・(視線で人が殺せると思うくらいの殺気をこめてましたが)部屋を出て行かれました。
「・・・・っはぁぁぁぁ。つ、つかれたぁ・・・・」
与えられている部屋で思い切り息をつくと、あまりの緊張状態に私はそのまま眠りこんでしまいました。
えぇ・・・。翌日から男爵家で仕事が始まると言うのに、なんの準備もしないまま・・・・。
え?それで、仕事には間に合ったのかって?
はい、意地で間に合わせましたよ。
男爵家に着いた時には髪は振り乱し、寝間着のままでしたが・・・。
あ、ありえない?
そ、そんな事わかってますとも!!し、しかし、幸いに制服はまだ頂いてませんでしたし、早速クレアさんいお小言をもらいながら制服を着替える時にちゃんと身だしなみを整えましたとも!!
え?荷物?
・・・・後日、お休みの時にでもお店にとりに行く予定です・・・・・・。




