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side 純情獣人 アリーシャ

私はアリーシャ。


実はずっと悩んでいるの。


それはウィネットちゃんに言われた一言だった。


「ねぇ、アリーシャちゃんはライルさんをどう思っているの?」


別に他愛もない話からだったと思う。


だから、何気なく答えたの。


「とっても感謝している人、かな?」

「ふぅーん。やっぱりさ、フェリシラさんとライルさんって付き合っているのかな?」


付き合う? 


それってなんだろう?


ウィネットちゃんは私と年齢が変わらないのに、随分と難しい話を言う。


「なに、それ? 美味しいの?」

「違うよぉ。付き合うっていうのは、お互いに仲良くするってこと!」


仲良く……。


だったら、お姉ちゃんとお兄ちゃんは……


「付き合っていると思うよ。一緒に手を繋いだりしているし」

「きゃーっ!! とっても面白そう。ねぇ、他には?」


私は二人の事をウィネットちゃんに話した。


「凄いわね。やっぱり大人よね」


大人?


どこでそう思うんだろう?


だって……。


「お兄ちゃんは私にもしてくれるよ?」


お兄ちゃんはとっても優しい。


どんな時でも私をかばってくれるし……時々、怒られることもあるけど。


大抵は許してくれる。


それに頭も撫でてくれるんだよ。


「ウィネットちゃん?」

「そ、そ、それって……・アリーシャちゃん、ライルさんと付き合っているってこと?」


どうなのかな?


私とお姉ちゃんとは違う気がする。


お兄ちゃんはお姉ちゃんといる時はいつも緊張した顔をしている。


でも、私にはずっと笑顔で……。


「どうかな?」

「どうかなって……うそ!! 分からないの?」


付き合っているっていうのが、仲良くなら……


「付き合っている……のかな?」

「へ、へぇ……アリーシャちゃん、随分と大人なんだね」


どうして、そうなるのかな?


私から見れば、ウィネットちゃんの方が大人に見えるよ。


私の知らないことを一杯知っているし。


……。


ウィネットちゃんは付き合う話がとても好きみたい。


「いいなぁ。私も付き合いたいよ」

「お母さんとは付き合えないの? とっても仲良さそうだったし」


パーティーの日、ウィネットちゃんがベローネさんと話している姿を見て、胸が痛かった。


私にもお母さんがいた。


優しかったお母さんが。


私を追い出した時は、全く別の人だったけど……私の心の中にいるお母さんはとっても優しい人。


そんなお母さんの姿がベローネさんと重なった。


「やだなぁ。お母様とは付き合えないわよ」


そうなんだ……。


付き合えたら、どんなにいい事か……。


「でも、ライルさんにはとっても感謝しているの。お母様と話したのも、ああやって食事をしたのも久しぶりだったの」


ウィネットちゃんはずっと一人だって、聞いていた。


いつもイディアさんが相手をしてくれているみたいだから、寂しくはないって……


だけど、どうなのかな?


やっぱり、お母さんとは違うよね。


「ライルさんがいなくなったら、また一人になるのかな?」


ウィネットちゃんの悩みはよく分かる。


私も一人はイヤ。


私にはお兄ちゃんがいる。


だけど、きっとウィネットちゃんにとってお兄ちゃんはいないんだと思う。


どうにかして、ウィネットちゃんが一人にならない方法はないかな?


「ねぇ、アリーシャちゃん」

「ん?」


「ここで一緒に暮らさない? 私達、いい友達になれると思うの」


……友達。


心が暖かくなる言葉だった。


でも……。


「ごめんね」

「そう、よね。私の方こそ、ごめんなさい。ライルさんがいるんだもんね」


お兄ちゃんがいるから?


ううん。


多分、違うと思う。


「私ね、孤児院に行っているんだよ」

「孤児院? 親がいないって言う?」


ここにはないのかな?


「うん。公爵様にお願いしたら、作ってくれたの」

「凄いわね。お母様が大嫌いって言ってたけど、会ってみたいわね」


どうして、嫌いなんだろう?


お兄ちゃんに似て、とっても優しい目をしているのに……。


「獣人の子がね、一杯いるの。私、その子たちの面倒を見ているんだよ」

「へぇ、アリーシャちゃん、すごいね」


そうかな?


私は出来ることしかやってあげていない。


食べ物だって、公爵様が用意してくれるものを運んでいるだけ。


私は何もしていないの。


「私ね、私しか出来ないことを見つけたいの。だから……」

「分かったわ。私も邪魔はするつもりはないの。むしろ、応援するわ!!」


「ほんと!?」

「うん。だって、私達、友達でしょ?」


エルフの少女は笑っていた。


きっと、彼女となら一緒に何でも出来る気がする。


ついに、グレンゴットを離れる日がやってきた。


「アリーシャ。ちゃんとお別れを言ってくるんだよ」

「うん」


私はウィネットちゃんの部屋に行った。


ずっと姿を見せなかったから。


「ぐすん。ごめんね。泣くつもりはなかったの」


ウィネットちゃんは泣いていたみたい。


「ううん。お別れは寂しいよね。でも、すぐに会えるよ」

「そう、かな?」


私はウィネっとちゃんとぎゅっと抱きしめた。


お兄ちゃんが時々やってくれるみたいに……。


「これで私達も付き合えたかな?」

「えっ? えええええええっ!! アリーシャちゃんと私、付き合うの?」


だって、仲良いいから。


お兄ちゃんとお姉ちゃんのように……。


「分かったわ。付き合いましょう!!」

「うん!!」


私とウィネットちゃんとの友情は今、始まったんだ。


ベローネ様?


「ベローネ様。お世話になりました」

「ふむ。お前さえ、良ければ、ずっとこの屋敷に住まぬか? ウィネットも喜ぶんだが」


……。


「お母様!! アリーシャちゃんに余計なことは言わないで下さい!!」

「ウィネット!! そうか……済まなかったな。アリーシャ、息災でな」


私は別れを告げた。


次に会う日まで、私はもっと大人になるんだ!


そして、ウィネットちゃんとこれからも付き合っていくんだぁ!

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