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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 野球と海と『革命家』  作者: 橋本 直
第二十章 誠のピッチング

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85/201

第85話 誠の可能性とニヤつくかなめ

 そのまましばらくはウォーミングアップのキャッチボールが続いていた。その間に、使えないことが証明されたピッチングマシンはマウンドから撤去されていた。


「じゃあこんくらいで良いだろ。早く見てえんだ、神前のピッチングが……アメリア!」


 タイミングを見計らってキャッチボールを切り上げる宣言をすると、かなめは再びアメリアを呼んだ。


「また私?まあ良いわよ。誠ちゃんのピッチングが見たいのはかなめちゃんだけじゃないもの。ちょっと待っててね」


 アメリアはそう言うと脱いでいたレガースを取りにダグアウトへと姿を消した。


「私も見てみたいものだな。プロのスカウトが目をつけるようなピッチャーの球は菱川重工豊川のOBの球しか見たことが無い」


 パーラを相手にキャッチボールをしていたカウラがそう言って誠に笑いかけた。


「そんな。都市対抗野球の選手と一緒にしないでくださいよ……高校生と社会人じゃ基礎体力も技術もレベルが違いますから。あっちの方は即戦力でレギュラーを期待されるくらいですから。普通は高校生はドラフト一位で入っても数年は二軍で体力作りですよ」


 誠は野球経験者らしくそう言って謙遜した。


「そんなことは無いぞ。所詮はOBはOBだ。現役時代の勢いはない。その点貴様は若い。可能性なら貴様の方が上だ」


 カウラに買いかぶられて照れ笑いを浮かべながら島田から受け取ったボールを手に誠はマウンドに登った。


「はい、こちらも準備OK。最初はストレートから……手加減してね」


 レガースを付けなおしたアメリアがホームベースの後ろからそう言うとマスクをかぶった。


「じゃあ行きます!」


 誠は高校時代を思い出すように大きなモーションで利き手の左腕を振り上げてストレートを投げ込んだ。


 誠の投げた球は誰もが予想する速度を超えるスピードでアメリアの構えたキャッチャーミットの真ん中に吸い込まれた。


「早え……本当に手加減してるのか?」


 球速だけは自慢だといっていた島田が誠の球に唸り声をあげた。


「手加減してますよ。あんまり手首を使うと軟球は硬球と違って浮いちゃってコントロールが付かなくなるんで。じゃあ次は本気で投げます」


 誠は意外と早く勘が戻りそうな予感を感じながら再び振りかぶった。


「今のが本気じゃなかったの?球速でも島田君を超えてくるかも」


 ミットを持った左手に痛みを感じながらアメリアが再びど真ん中にミットを構えた。


 誠は今度はクイックモーションでコンパクトに左腕を振り切って球を投げ込んだ。放たれた球は確かに先ほどより早くアメリアのミットに大きな音を立てて吸い込まれた。


「クイックモーションも出来るのか?どこかの誰かさんみたいにファーボール連発でそのランナーに走られてばかりってことは無い訳だ。島田よいくらセットポジションにしても投げるのが遅かったらランナーは走るんだぞ。分かったか?」


 かなめは監督らしく島田の投球の欠点を指摘して見せた。


「その言い方は無いですよ!西園寺さん。俺は隊に入って初めて野球のルールを覚えたんですよ。その割にはよくやってると褒めてくださいよ」


「負け投手を褒める趣味はねえ」


 誠の器用さに島田の不器用な投球を重ねてこき下ろしてくるかなめに島田はそう泣き言を言った。その泣き言をかなめは一言で切り捨てる。


「元々、僕は腕の振りが大きすぎるんです。それで練習試合とかではよく走られたんでクイックも覚えました。牽制球の練習もします?」


 調子に乗って誠は満足げな表情を浮かべるかなめに尋ねる。受けるアメリアを始め、部員達はこれまでチームにいなかった才能に度肝を抜かれながらその投球に見入っていた。



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