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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 野球と海と『革命家』  作者: 橋本 直
第十五章 『女大公殿下』の食事会

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第66話 明日の野球練習に関して

「もう西園寺さんの国の話は僕には理解できそうにありません。そう言えば……野球の練習っていつやるんですか?」


 誠の問いは自分ではもっともな話と思っていたが三人の女性上司にとってはあまりに間抜けな話のようだった。


「そんなもん午前中の涼しいうちだけに決まってんだろ。あのなあ……アタシ等は楽しみで野球をやってるの。この夏の暑い中練習してどうすんだ?熱中症になるぞ」


 相変わらずの見事なフォークさばきを見せながらかなめはそう言って誠をにらみつけた。


「まあここは海に近いから午前中は気温があんまり上がらないから野球の練習にはぴったりの場所なのよ。まあ午後になると熱中症で倒れる人が出そうだから午後は海で海水浴……いいアイデアでしょ」


 この合宿を企画したアメリアは得意げにそう言って笑った。


「なんでもピッチングマシンまで借りたらしい。グラウンドもこの辺りはこの前の市町村合併で良いグラウンドがあちこちで余っているからな。使う球場は照明付きだから今日も本当は夜間練習がしたかったんだが……」


 真面目なカウラは相当野球の練習がしたいらしい。


「そんなこと車酔いでヘロヘロの神前にやらせるのか?ベルガーはこいつを殺す気か?しかし、残念なお知らせがある」


 誠をかばってくれていたかなめの表情が曇った。


「残念なお知らせ?なんですそれ」


 口ごもるかなめに誠は尋ねた。


「そのピッチングマシンなんだがな。この時期この付近で夏合宿をしようなんて連中は山ほどいるんだ。だから旧式のマシンしか借りられなかった」


 かなめは残念そうにそう言った。


「えー!最新式の三軸式とかじゃないの!菱川重工豊川のフォークピッチャー対策が必要だっていつも言ってるのはかなめちゃんじゃないの!」


 アメリアは心底がっかりしたようにそう言ってかなめの不手際を責めた。


「そんな、マシンが借りられただけでも良いじゃないですか。まさかアーム式って訳でもあるまいし」


 冗談半分に誠がそう言った瞬間、かなめの口元が引きつった。その表情を見て誠もマシンの古さの見当がついた。


「もしかして図星ですか?どこかの古いバッティングセンターから運んで来たんですか?東都に行けばそんなの貸し出してる業者はごまんとあるでしょうに」


 誠は自分が冗談で言ったスプリングの力で腕のような部品を使ってボールを投げてくるピッチングマシンをかなめが抑えたと聞いて半分あきれ果てた。


「呆れた。それじゃあカーブとシュートを打つ練習くらいしかできないじゃないの。それに旧式のアーム式のマシンはコントロールが悪いから下手するとけが人がでるわよ」


 こちらもあきれ果てたようにアメリアはそう言って嘆いてみせる。


「いいじゃねえか!カーブとシュートだけであのリーグじゃ十分通用する。フォークやスライダーやナックルを投げてくるのは菱川重工豊川の投手陣位だ。うちのリーグじゃ十分通用する!」


 かなめは苦し紛れにそう言ってごまかしにかかった。


「それにしてもうちのリーグっていつ始まるんですか?僕が入ってから試合があるなんて話聞いたことが無いんですけど」


 誠は野球部の存在を聞かされた時からの疑問を口にした。


「あれよ、九月になったら後期リーグが始まるから。菱川重工豊川の野球部OBなんてみんなおじさんなんだから。夏に試合なんかしたら死人が出るわよ」


 アメリアの言う通りリーグで常勝を誇る菱川重工豊川チームはかつて菱川重工豊川の野球部が都市対抗野球の常連だった事態のOBで構成されたチームだった。当然、平均年齢は『特殊な部隊』のそれとは比較にならないほど高くなる。


「なるほど」


 アメリアの説明に誠は納得するように頷くしかなかった。しかし、誠としてもこんな暑い中に先発完投させられると考えるとリーグに夏休みが有るのはありがたかった。



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