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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 野球と海と『革命家』  作者: 橋本 直
第十一章 カオスとそれがもたらすもの

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第39話 人呼んで『もんじゃ焼き製造マシン』

「じゃあ、出発ね」


 『特殊な部隊』の野球部をはじめとする今回の合宿旅行の参加者が全員バスに乗ったのを確認すると、この合宿の幹事であるアメリアは陽気にそう言って運転する島田の頭を叩いた。


「はい動きますよー」


 子供扱いされたように頭を叩かれたのが不服なのか。拗ねた口調で島田はバスをバックさせた。


「神前。大丈夫か?」


 心配そうになぜかすでに自分のカバンからエチケット袋を取り出しているカウラが隣の席に座る誠の顔をのぞきこんできた。


「そんなにすぐには吐きませんよ。それにしても僕の分ですか?そのエチケット袋。気を使っていただいて……」


 誠もいつもの事なので自分の分のエチケット袋は用意していたが、代わりに用意してくれていたカウラの気遣いに感謝の意を示した。


「いや、上官として当然のことだ。それに貴様にはこれからも色々頼ることもある。当然のことだ」


 カウラは嬉しそうな表情で自分を見つめてくる誠の視線を感じると顔を赤らめながらそう言った。


「なんだよ、二人で良い雰囲気になりやがって。そんなに神前が吐いたものを片付けるのが好きなのか?変態か?カウラ」


 二人の後ろの席に座っていたかなめが焼餅を妬いているとでもいうようにそう言った。


「あっ!かなめちゃんが妬いてる!」


 二人の姿に怒りを露にするかなめを能天気なサラがそう言って冷やかす。かなめに島田とのラブラブ関係を冷やかされてばかりいるので、サラの口調は少し悪意に満ちていた。


「そんなんじゃねえ!ここは『愛のない国』遼州だ!神前は職場恋愛なんて百年早ええってちっちゃい姉御に釘を刺されたことがねえのか?オメエこそ島田と一向に進展しない恋愛ごっこに夢中になりやがって。中学生かよ」


 車内の騒動を他所にバスはそのまま隊のゲートを抜け、工場の連絡道路を出口へと向かった。


「でも、カウラさん。合宿場までどれくらいかかるんですか?その間、僕は我慢できますかね」


 長時間のバス旅行では必ず吐くことが、前回の『近藤事件』での運用艦『ふさ』までのバス移動で証明されていたので、誠は恐る恐るカウラに尋ねた。


「今日は土曜日でしかも今は海水浴のシーズンだ。高速道路やその先の国道は渋滞する。揺れることはあまりないからお前の体質でも耐えられると思う。それに貴様の体質を配慮したアメリアが全てのパーキングエリアで休憩を取るとか言っていた。だが、この季節の東和の渋滞は年中行事だ。到着までには日中一杯かかるだろうな」


 カウラの言葉は誠にとってはあまりに残酷な事実を示していた。


「日中一杯……死んじゃいますよ僕」


 カウラの言葉に『もんじゃ焼き製造マシン』の異名を持つ誠は冷や汗を流した。


「こんだけの人数なら電車の方が良かったんじゃないの?神前君も電車ならさすがにあんなに吐かないでしょうし」


 サラの隣に座っていた『特殊な部隊』の数少ない常識人であるパーラが気を利かせてそう言った。


「僕、電車でも駄目なんです。あれもバスほどじゃないけど揺れるでしょ?30分も乗ると気持ち悪くなってきて……」


 さすがのパーラも電車に酔う誠の体質までは予想がつかなかった。


「全く気合が足りねえ証拠だな。オメエの車酔いは気合が足りねえからだ。シュツルム・パンツァーのシミュレータの訓練を続けて気合が身に着けば自然に治る」


 弱音を吐く誠に向けてかなめは無茶な注文をつけた。


「そんな……無理ですよ。小さいころは慣れるように母さんがよくバス旅行に連れて行ってくれましたけど、結局この体質は治らなかったですから」


 誠はすでに胃の当たりに違和感を感じながらそう反論した。




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