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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 野球と海と『革命家』  作者: 橋本 直
第八章 頼りになる『相棒』

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第32話 秘密結社『ヒンヌー教団』

「それに一応、アイツは下士官寮の副寮長だぞ。まあ……シンパを集めて珍妙なことをするばかりであまりリーダーシップとかは無いから島田よりは影が薄いがな。しかし、あそこの金銭管理は菰田が自分でやってる。島田の馬鹿に金を渡すと絶対懐に入れるからな。その点、菰田の野郎は金に関してだけは公私の区別ができる。しかたねえんじゃねえの?」


 かなめはそう言うと葉巻をくゆらせる。


「シンパ?」


 誠はかなめの言葉が理解できずに聞き返した。


「そう。あの馬鹿はカウラちゃんの欠点である『盆地胸』に執着する馬鹿よ!私やかなめちゃんみたいに胸が大きいのは不潔なんですって!馬鹿にして!」


 怒りに任せてアメリアがそう言ってビールのグラスを叩きつける。誠は何とか彼女をなだめようと、空いた彼女のグラスにビールを注いだ。


「まあ、菰田の計算は正確だし、判断も適格だ。私は所詮作られた存在だ。どう思われようが仕方がない」


 カウラはすでに好きでもない菰田達に付きまとわれる運命を受け入れているようだった。


「カウラちゃんがそんなだから連中が増長するのよ!それに、『ラスト・バタリオン』なら運航部の女子全員がそうじゃないの!まあ連中はみんな頭の中がキモいからこっちからお断りだけど」


 落ち着いた様子のカウラと対照的にアメリアはかなりエキサイトしていた。


 二人の人造人間の様子を眺めながら、誠はビールを飲んで酔ってしまおうと考えた。


「でも……確かに菰田さんは僕のこと嫌ってますよね」


 他の隊員に対しては下手に出る菰田も誠に対してだけは高圧的な態度を見せるので誠は菰田が苦手だった。


「いいじゃねえか。神前。アイツに好かれてうれしいか?」


 かなめはニヤニヤ笑いながら小夏が運んで来た焼鳥盛り合わせを受取った。


「まあ誰にでも得意不得意はある。人間関係でもそうだと言うだけだ」


 ネギまを手にそう言ってカウラは苦笑いを浮かべた。


「まあ私は菰田君は嫌い!彼ったら笑いものにされると怒るんだもの」


 アメリアは本心からそう思っている。誠はそう確信することができた。


「それは誰でも怒ると思いますけど」


 さすがに人がここまで嫌われると人の好い誠はかばいたくなってしまう。苦手な人間とは言え他人が笑いものにされているのを気分良く思うほど誠は冷淡ではなかった。


「今回の旅行も当然来るのよアレが……あー気持ち悪い」


 アメリアにとって菰田は生理的に受け付けないタイプらしくそう言ってビールを飲み干した。


「確かに僕を嫌ってるのは間違いなさそうですけど……一応僕は新入りなんで。それにあるじゃないですか、どうしても馬が合わないってこと。たぶんそう言うことですよ」


 誠は控えめにそう言った。かなめはうなづきながら自分の皿のレバーを誠の皿に移した。


「まあいいじゃねえか。アイツも子供じゃねえんだから好き嫌いで残業手当をカットしたりとかしねえだろ?」


「確かにそれをされたら……困りますね」


 かなめの言葉に誠は一抹の不安を覚えた。


「まあ、そんなことしたらパートのおばちゃん達に絞められるからね……菰田君は菰田君でまあ苦労してるんだわ……たまには息抜きさせてあげないと……ねえ、カウラちゃん♪」


 そう言ってアメリアは串から一つ一つ肉を抜く作業に没頭しているカウラに声をかけた。


「私が何をすればいいんだ?」


 カウラにとって菰田の存在はどうでも良いものの様だった。


「甘い言葉の一つもかけてあげなさいよ……これ以上、誠ちゃんが菰田君にいじめられたら困るじゃないの……生中もう一つ!」


 ビールを注文しながらアメリアはカウラに向けてそう言った。


「別に実害は今のところないので……カウラさん、気にしなくてもいいですよ」


 控えめに誠はそう言ってみた。確かに誠は菰田から怖い目で見られる以上の被害は誠はまだ受けてはいなかった。


「なあに、アイツもいい大人だ。手は出さないだろうな……島田とは違う」


 島田は時々、誠に無理難題を吹っかけてくる。そしてそれができないと当然鉄拳制裁が待っている。そのターゲットとされていることは誠も自覚していた。


「島田は瞬間湯沸かし器で熱しやすく冷めやすいからな。奴と違って菰田は陰湿に根に持つタイプだからな。元々何を考えているのか分からねえ所があるし」


 カウラの言葉にかなめはそう添えた。


「陰湿に根に持つタイプ……」


 誠はレバーを口に運びながらねちねちと小言を言ってくる菰田を想像してうなだれた。


 この旅行では何かが起きる。誠にはその確信だけがあった。




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