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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 野球と海と『革命家』  作者: 橋本 直
第四十六章 新しい日々

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第194話 新しい朝が来た

 翌朝、誠は焼けるような腹痛で飛び起きた。そのままトイレに駆け込み用を済ませて部屋に帰ろうとした彼の前にいつの間かかなめが立っていた。


「おい、顔色悪りいぜ。何かあったのか?」 


 昨日、ラムの箱を開けるやいなや、かなめはすぐさま誠の口にアルコール度40の液体を流し込んだ。それが原因だとは思っていないようなかなめに呆れながら、誠はそのまま自分の部屋に向かう。


「挨拶ぐらいしていけよな。アタシは一応オメエの上司だぞ。上司には気を遣え」 


 小さな声でつぶやくと、かなめはそのまま喫煙所に向かった。誠は部屋に戻り、Tシャツとジーパンに着替えて部屋を出る。今度はカウラが立っている。


「おはよう」 


 誠の部屋の前でカウラはそれだけ言うと階段を下りていく。誠も食堂に行こうと歩き始めた。腹の違和感と頭痛は続いている。


「昨日は災難だったわねえ。しかし、かなめちゃんの無茶に付き合う誠ちゃんも誠ちゃんよ。ちゃんと嫌なら断らないと」 


 階段の途中で待っていたのはアメリアだった。さすがに彼女はかなめにやたらと酒を飲まされた誠に同情しているように見えた。


「西園寺さんがこの寮にいる間に酒が嫌いになれそうですね。このままだと」 


 誠は話題を振られた方向が予想と違っていたことに照れながら頭を掻く。


「それはまあ、かなめちゃんのことは隊長に言ってもらうわよ。それにしてもシャワー室、汚すぎない?」 


 意外とアメリアは奇麗好きだった。確かに男所帯の男子寮のシャワー室はお世辞にもきれいと言える代物ではないこと位誠にも分かる。


「これまでは男所帯だったわけですからね。文句を言うのは菰田先輩位で他の人はあんまり気にしていないみたいでしたから。それにそういうことは寮長の島田先輩に言ってくださいよ。僕にそんな権限有りません」


 そんな誠の言葉にアメリアは大きくため息をついた。 


「その島田君がしばらく本部に泊り込みになりそうだって話よ……なんでもランちゃんの機体の『法術増幅装置』の取り付けの準備だとかで」


 誠のシュツルム・パンツァーは専用機『05式特戦ダグフェロン乙型』と正式には故障されていた。ただ、誰もがそんな長い名前は言いたくないのでただ『乙型』と呼ばれることが多かった。


「予算がよく付きましたね。クバルカ中佐の『紅兎弱(こうとじゃく)×54』に『法術増幅装置』が搭載されるのはだいぶ先になるって聞いてましたけど」


 いつも予算不足を嘆いているランや島田を見てきただけにアメリアの言葉は誠には意外だった。


「あくまで『準備』って話よ。装置の方を買うにはさらに一悶着ありそうな感じ」


 『近藤事件』のインパクトが後押ししたに違いない。いくら世間に疎い誠にもそれだけは分かった。


「そうですか……まあそんなもんでしょうね」 


 そんな世知辛い話をしているうちに誠とアメリアは食堂の前にたどり着く。そこにはいつものだらけた雰囲気の隊員達が雑談をしていたが、カウラとアメリアの姿を見ると急に背筋を伸ばして直立不動の体勢を取った。


「ああ、気にしなくて良いわよ」 


 アメリアは軽く敬礼をするとそのまま食堂に入った。厨房で忙しく隊員に指示を出している菰田が見える。とりあえず誠は空いているテーブルに腰を下ろす。当然と言った風にカウラが正面に、そしてアメリアは誠の右隣に座った。


「とりあえず麦茶でも飲みなさいよ」 


 アメリアはやかんに入った麦茶を注いで誠に渡す。誠は受け取ったコップをすぐさま空にした。ともかく喉が渇いた。誠は空のコップをアメリアの前に置いた。



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