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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 野球と海と『革命家』  作者: 橋本 直
第四十五章 午後の引っ越し作業の続き

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第191話 食事当番の誠とそのアシスタント

「ああ、疲れたねえ。でも飯まで時間が有るよな」 


 かなめは仕事らしい仕事はしていないのに、この場にいる誰よりも疲れた表情でそう言った。確かにあれだけ自分の性的趣向をアメリアに暴露されれば疲れるものだと誠は同情した。


「あのー今日は僕が食事当番なんですけど」 


 誠はかなめに向けてそう言った。


「それがどうした?まったりしようや」 


 かなめが誠の顔をまじまじと見つめる。


「それなんですけど、島田先輩から西園寺さん達に手伝ってもらえって言われたんですけど……手伝ってくれます」 


 かなめが露骨に嫌そうな顔を向けてくる。家事をしないことは分かり切っているかなめが手伝うとは思えない。誠は良い返事は期待していなかった。


「なら仕方ないな。西園寺、アメリアを連れて来い」 


 カウラはすぐに立ち上がるとそう言って『図書館』で成人向け同人誌を読んでいるであろうアメリアに声をかけるように疲れた表情のかなめに言った。


「食事当番ねえ。全員外食で済ますって線ではいけねえのか?」 


 カウラに言われるとかなめが食堂を出て行った。


「私達も手伝おうか?どうせ西園寺さんは役に立たないだろうし」 


 パーラの申し出にカウラは即座に首を横に振る。


「ここに世話になる人間だけでいい。手出しされると要領がつかめなくなる」


 真面目なカウラはパーラの申し出を丁重に断った。


「とりあえず夜はカレーだそうです。それに整備班は今日は徹夜だそうですから、人数は20人前くらいで良いらしいですよ」 


 誠の言葉にカウラは少しばかり驚いた表情を浮かべた。


「20人前か。大丈夫なのか?」 


 カウラは不安そうに誠の顔を覗き込む。誠に言わせれば50人を超える住人のいるこの寮で20人前と言うのは少ない部類に入る。


「やっぱり私達手伝うわね。誠君、材料は買ってあるの?」 


 パーラはそう言って腕まくりをする。サラも覚悟を決めたように立ち上がった。かなめとカウラ。どちらも家事とは無縁でその手伝いを戦力に数えるには無理があった。そしてアメリアの驚異的な創意と工夫で人知を超えた食品を作り上げる才能についてはパーラ自身がよく知っている。


「一番奥の冷蔵庫にそろっているはずですよ。三人が絶対家事なんかしたことが無いだろうってみんな思ってますから」 


 誠はそう言うとそのままカウラとパーラ、それにサラをつれて厨房に入った。誠が食堂の方を振り返るとあからさまに嫌な顔をしているアメリアがいた。


「なんで私達が……私外食派だから」 


 アメリアはめんどくさそうにそう言った。


「アメリア、郷に入れば郷に従えだ……ジャガイモの皮むきを頼む」 


 カウラの言葉にアメリアはあきらめた調子でそのまま厨房に入ってくる。


「西園寺、鍋をかき混ぜるぐらいならできるだろ?」


 仕切り始めるカウラに明らかに不機嫌になるかなめに向けてカウラはそう言った。 


「わかったよ、その段取りになったら呼んでくれ」 


 かなめはそのままタバコを取り出し喫煙所に向かった。パーラが取り出した食材をカウラは立ったまままな板の横で眺めていた。


「ジャガイモ、牛肉、にんじん、たまねぎ」 


「ちゃんと揃えてあるのね」


 感心したようにパーラは誠を見た。 


「本来は買出しなんかも担当するんですが、今日は島田先輩が用意してくれましたから」 


 そう言うと誠はにんじんに手を伸ばした。



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