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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 野球と海と『革命家』  作者: 橋本 直
第四十五章 午後の引っ越し作業の続き

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第190話 好みの飲み物について

「誠さん。みんなで一緒に暮らせるなんていいですね。にぎやかなのは私は好きです」 


 ひよこの言葉に顔を見合わせるサラとパーラには言うべき言葉が見つからなかった。西はひよこから質問されて下手な答えをしないために急いで敬礼してそのまま近くのコンビニへと走る。入れ替わりにタバコを一服したかなめが帰ってきた。


「うちは団地なんで狭くて……弟も自分の部屋が欲しいなんて言うんですけど……西園寺さんもうれしいでしょ?」


 ひよこはそう言うと恥ずかしそうに視線を落とした。


「そいつはどうかねえ」


 タバコを一服して戻ってきたかなめはそんな彼女を見て笑顔を浮かべながら意味ありげに笑う。


「違うんですか?」


 ひよこがアメリアのコレクションの運搬の仕事を始めてから初めてに無邪気な笑みを浮かべた。


「叔父貴に聞いてみな?アタシが人と仲良くやれる奴かどうか」


 かなめの言葉にアンが彼女を見守っていたアメリアに目を向けた。


「……まあいいや。ここにいても仕方ねえや。食堂で話そうや」


 かなめはそう言って部屋の扉を開ける。誠達も彼女に続いて廊下から階段、そして食堂へとたどり着いた。


 食堂に入ると薄ら笑いを浮かべながらかなめがどっかりと中央のテーブルの真ん中の椅子に座る。誠もいつも通り意識せずにその隣の席を取る。反対側に座ったカウラがいつものように冷たい視線を送るが、まるで気にする様子は無い。


「まあ西の野郎を待ちながらまったりしようや」 


 その場にいる全員が珍しくかなめの言うことに同意するように頷いた。


「買ってきましたよ!」 


 勢い良くコンビニ袋を抱えた西が駆け込んできた。両手のコンビニ袋の中には缶入りの飲み物がぎっしりと詰め込まれていた。 


「カウラはメロンソーダだろ?」 


 そう言うとかなめはすばやく西から袋を奪って、その中の緑の缶を手にするとカウラに手渡した。


「なんかイメージ通りですね」 


 ひよこが苦笑いを浮かべながらカウラを見つめている。


「ああ、コイツの髪の色はメロンソーダの合成色素から来ているからな」 


「西園寺、あからさまな嘘はつくな」 


 プルタブを開けながらカウラは緑のポニーテールの毛先を自分で手に取り何か納得したような顔をして缶に口をつけた。


「神前さんはコーラで良いですか?」 


 西は手にしたコーラを誠に押し付けた。思いを見透かされた誠は苦笑いを浮かべた。


 そこにトイレから帰ってきたアメリアがやってきた。


「ああ、飲み物買ってきたの?言ってくれれば私が出したのに」


 アメリアの白々しい言葉にサラとパーラが顔を見合わせる。


「なんなら今から出しても良いんだぞ」


 メロンソーダを飲みながら釣りを西から受け取っていたカウラの言葉を聞くとアメリアはそのまま背を向けた。


「どこ行くんだ?」


 カウラが不審そうにアメリアに尋ねる。


「さっきの続きを読むの」


 アメリアが出ていくがあまりにも彼女らしい言葉に誰も呼び止めることはしなかった。


「それじゃあ私はココアで」


 全員がアメリアの方を見ていた間も飲むものに迷っていたひよこはそう言って袋からココアを取り出した。


「ああ、ごめんね。ひよこちゃん。アメリアはこういう時はココアなのよ」 


 パーラはそう言うとアンの手からココアを取り上げた。


「パーラさん、アメリアさんに届けてあげるんですね。それなら私が持っていきましょうか?」 


 そう言ったのは代わりにジンジャエールを手にしたひよこだった。


「え?お願いできるの」 


 サラのの言葉にひよこは嬉しそうに頷いた。


「じゃあ僕も行きます」 


 釣銭を数えていた西がそう言った。立ち上がった二人は昨日と同じく楽しげな笑みを浮かべながら食堂を出て行く。


「気が合うのかな?連中」 


 かなめはそう言うと緑茶缶を袋から取り出して飲みだす。


「まあ、まあひとこちゃんが20歳で西君が18歳……年が近いから話題も合うのよ」 


「そうなのか」


 パーラの言葉にカウラは関心なさそうにつぶやいた。


「アレだな……天然同志気が合うんだろ」


 そう言いながらかなめは缶の緑茶を飲み干した。



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