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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 野球と海と『革命家』  作者: 橋本 直
第四十三章 男子寮最後の日

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第185話 招かれざる『客』

「そう言えば……ひよこ。はす向かいの駐車場に停まってる外ナンバー……あれはなんだ?ついてきてのか」 


 かなめがつぶやいた言葉に一気に場の雰囲気が緊張感のあるものに変容する。かなめは荒事に関わる時に見せる鉛色の濁った眼付きでひよこを見据える。


「知りませんよ……でも私が来た時から停まってましたから……でも地球圏の駐在事務所の人が何の用なんでしょうね……」 


 それだけ言うとひよこは器用に少ない量のそばを取るとひたひたとつゆにくぐらせる。


「あのナンバーは『米帝』だな。また面倒なのが見張りについてるわけだ。初の法術発動者神前誠曹長の観察記録でも取ろうってのか?迷惑な話だな」


 かなめはそう言うとわさびで染まった麺つゆを薄めもせずに飲み干した。隣でサラがそのわさびの味を想像したのか顔をしかめて目を伏せる。 


「まあ、観察日記をつけるかどうかは別としてだ。西園寺が『米帝』と決めつけるが、ナンバーだけでは国籍までは分からないはずだ。ただ、外ナンバーの車ってことは地球の連中ってことだ。連中は嵯峨隊長には深い遺恨があるからな」 


 カウラがそう言うとつゆのしみこんだそばを口に放り込んだ。


 先日の『近藤事件』で誠が示したその力に関するニュースが全銀河を駆け抜けた翌日には、アメリカ陸軍のスポークスマンが法術研究においてアメリカ陸軍が他国を引き離す情報を握っていることを公表した。


 存在を否定し、情報を操作してまで隠し続けていた法術師研究は、法術師としての適正者のある者の数で地球諸国を圧倒している遼州星系各国のそれと比べてはるかに進んでいた。そして明言こそしなかったものの、アメリカ陸軍はその種の戦争状況に対応するマニュアルを持ち、そのマニュアルの元に行動する特殊部隊を保持していることが他国の軍関係者の間で囁かれていた。


「嵯峨隊長の次は神前曹長か。つくづく司法局は地球圏とは因縁があるらしいわね」


 そう言ってアメリアはそばをすすった。同じざるからそばを取っている島田が、一度に大量のそばを持っていく。アメリアは思わずそれを見て眼を飛ばしてけん制しながら箸を進める。


「どうも今日はそれだけではないらしいがな」 


 そうつぶやきながらかなめはそばをすすった。


「と言うと?」


 誠の問いにかなめは額を指さした。


「勘だ……」


「女の勘?かなめちゃんのがアテになるの?」


「うるせえ!アメリア!黙って食ってろ!」


 アメリアのツッコミにかなめは立ち上がると叫びつつ汁の入った小鉢をテーブルに叩きつける。


「割れたらどうするのよ本当に」


 パーラが困った顔でかなめ達を見つめる。


「そんときはお前が片付けろ」


 相変わらずかなめの言うことは勝手だった。


「いつもそうなんだから……島田君もなんか言ってよ」


 サラに脇をつつかれてそばを吹き出しかけた島田が照れながら立ち上がる。島田もヤンキーの勘がかなめに逆らえば無事では済まないことは教えてくれるらしく立ち上がるとそのまま食堂を出て行こうとした。


「じゃあ俺が確認してきます。この前の道は細いんで、駐車されると迷惑だって因縁付ければ向こう行くでしょ」


 全員が白け切った顔を向けたあとそれぞれにそばに集中する。


「やめとけ……うちの仕事じゃない。それに外交官特権を持ち出されたら県警は何も言えないはずだ」


「外交官特権ねえ……面倒になるだけ。関わらない方が良いわよ」


「『米帝』とはあんま不用意に関わるな」


 かなめ、アメリア、カウラの一言に島田はよたよたと座り込んだ。


「監視か……」


 誠はただ不安を感じながらそばの味に浸ることにした。


 彼等のいる食堂にはただ夏のセミの音が響き渡るだけだった。




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