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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 野球と海と『革命家』  作者: 橋本 直
第四十三章 男子寮最後の日

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第184話 ひよこの語る自分と大騒ぎの連中

「夏ですね……」


 ひよこは手持無沙汰でただ立ち尽くしている。誠も年下の先輩にどう接したらいいのか分かりかねて黙り込んでいた。


「誠さん……」


 話しかけてくるひよこに誠は目を向けた。


「な……なにかな?」


 ひよこは少し照れたような笑みを浮かべながら誠を見つめていた。


「誠さんは……出身はどこですか?」


「東都……母さんも父さんも東都の出身だから……」


「そうなんですか……私は県内なんです。隣の市の公営団地で育ちました」


 ひよこはそう言って笑顔を浮かべる。誠もかなめ達とは違う女性らしいひよこの笑顔に引き込まれた。


「うちは母さんが剣道場をやってるんだ。だからいつも子供が一杯……父さんは全寮制の高校の先生だからあまり家には居ないんだ。だから半分母子家庭みたいな育ちかな」


 正直に話すひよこには誠も自分の過去を素直に話してしまう。


「そうですか……私は父が私が小学校の時に亡くなって……母も体が弱いので……ああ、それと弟が居ます」


 ひよこはそう言って照れたような笑みを浮かべた。


「僕は一人っ子……弟か……」


 誠は家族のことを話すとき少しひよこが悲しげな顔をするのが気になって黙り込んだ。


「はい!茹で上がりましたよ!」 


 パーラの一声でとりあえず悶着は起きずに済んで誠は胸をなでおろした。一同は食堂に向かった。島田が手にそばの入った金属製のざるにそばを入れたものを運んできた。


「はい!麺つゆですよ!ねぎはたくさんありますから、好きなだけ入れてくださいね!」 


 サラはそう言いながらつゆを配っていく。


「サラ!アタシは濃いのにしてくれよ」 


「そんなことばかり言ってるから気が短いんじゃないのか?」 


 いつものように再びかなめとカウラがにらみ合う。誠は呆れながら渡された箸を配って回った。


「じゃあ食うぞ!」 


 そう叫んだかなめは大量のチューブ入りのわさびをつゆに落とす。明らかに勢いの良すぎるその様子に誠は眉を顰める。


「大丈夫なんですか?そんなに入れて」 


「なんだよ、絡むじゃねえか。このくらいわさびを入れて、ねぎは当然多め。それをゆっくりとかき混ぜて……」 


蘊蓄(うんちく)はいい。それにそんなに薬味を入れたらそばの香が消える」 


 そう言うとカウラは静かに一掴みのそばを取った。そのまま軽く薬味を入れていないつゆにつけてすすりこむ。


「そう言えばカウラはそば通だもんね。休みの日はほとんど手打ちそばめぐりとパチンコに使ってるって話だけど」 


 アメリアも遅れまいとばかりざるの中のそばに手を伸ばす。その言葉に誠はカウラの顔に視線を移した。


「ええと、ベルガー大尉。そば好きだったんですか?」


「まあ隊長みたいに自分で打つほどではないがな。それに娯楽としては非常に効率が良い。値段も安いしそれなりに暇もつぶれる」 


 カウラは再びそばに手を伸ばす。そして今度も少しつゆをつけただけですばやく飲み込む。


「なるほど、良い食べっぷりですねえ」 


 ひよこはカウラの食べっぷりに感心したようにそうつぶやいた。



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