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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 野球と海と『革命家』  作者: 橋本 直
第四十三章 男子寮最後の日

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第180話 引っ越し作業

 誠は脳みそがゆすられるような振動を感じた。それが誰かに両手で頭をつかまれて振り回されていることに気づくと誠は目を覚ました。


「ようやく起きやがった。この馬鹿。どこまで眠りが深いんだよ、オメエは」 


 目の前にはかなめの顔がある。誠は飛び上がって周りを見回した。プラモと漫画、それにアニメのポスター。


 そこは確かに自分の部屋だった。昨日のかなめ達の引っ越し前祝の飲み会の酔いのせいで頭は割れるように痛い。そこで自分の部屋にかなめがいるという事実を再確認して誠は飛び上がるようにしてはね起きた。


「西園寺さん!なんで僕の部屋に!」


 突然の誠の反応にかなめは得意げににやりと笑った。 


「もう十時過ぎだぞ。休みの日だからって寝すぎだろ?アタシ達の荷物着いたから早く着替えろ」 


 そう言うとかなめは出て行った。確かに時計を見れば十時を過ぎていた。のろのろと誠は起き上がる。


 かなめ、アメリア、カウラの引越し。かなめの荷物が寝具ぐらいで少ないのは良いとして、アメリアの荷物は想像するに相当なモノだろう。


 誠は昨日は飲みすぎて意識を飛ばしてから、どうやって自分の部屋でジャージに着替えて眠ったのかまったく覚えていなかったが、良くあることなのですぐ考えるのをやめた。


 B級特撮映画の仮面戦士のロゴがプリントされたTシャツを着て、ジーパンに足を通す。二日酔いの頭が未だに完全に動いてくれてはいないようで、片足を上げたまま転がる。


「おい!」 


 今度入ってきたのは島田だった。


「オメエは何時まで寝れば気が済むんだ?顔洗って気合い入れてから早く手伝え!」 


 それだけ言うとまた部屋の扉を閉める。とりあえず誠はベルトを締めて、そのまま部屋を出た。ムッとする熱気が誠を襲う。昨日よりも明らかに暑い。誠はそのまま廊下から玄関に向かって歩く。


「西!とりあえず下持て!」 


「島田班長、無茶ですよ……って神前曹長!手伝ってください!」 


 アメリアの漫画を収める大きな本棚をもてあましている西が声をかけてくる。誠は仕方なくそちらの方に手を貸した。


「西、もう少し端を持て。島田先輩、大丈夫ですか?」 


「無駄に重いなあ。誰かこっちも一人くらい……」 


 表からやってきたサラが力を貸す。だがラスト・バタリオンの割に普通の女性程度の力しかない彼女が力を貸した程度で状況が変わるわけがなかった。仕方なく、誠は渾身の力を込めてやけに立派な木製の本棚を持ち上げた。


「じゃあ行きますよ!」 


 そう言うと島田の誘導で本棚は廊下の角に沿って曲がりながら進む。


「とりあえずここで」


 アメリアの部屋の前でとりあえず四人は一休みした。真夏の引っ越し作業。滝のような汗が額を流れるのを持ってきたタオルで四人は拭った。


「はいはい!ありがとうね。それじゃあ本棚は私達がやるから中身の方お願いね」 


 部屋から現れたアメリアとパーラが横に置かれた本棚に手をやる。


「じゃあ行くぞ」 


 島田の一声で誠と西はその後に続いた。サラはパーラに引っ張られてアメリアの部屋に消えた。玄関まで下りた彼等の前にカウラが大きなダンボールを抱えている姿が目に入る。


「カウラさん持ちますよ」 


 そう言って誠はカウラに走り寄る。


「良いのか?任せて」 


「大丈夫です!これくらい、良いトレーニングですよ」 


 そう言って誠は笑う。実際こういう場面の力仕事においては誠は通常の二倍のマンパワーを発揮する頼りになる男だった。



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