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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 野球と海と『革命家』  作者: 橋本 直
第四十一章 『特殊な部隊』の強引な人達

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173/201

第173話 月島屋への道

 誠はカウラの指示に従うしかない自分を呪いながら彼女について『スカイラインGTR』の停めてある駐車場にたどり着いた。


「そう言えばバスでは吐くが乗用車では吐かないんだな、神前は」


 車に乗り込んだカウラは助手席でシートベルトを締める誠にそう言った。


「最近、車に強くなってきたんですよ……いつもシミュレータでシュツルム・パンツァーの操縦の訓練をしているせいですかね。今回の旅行も前までだったら到着した時は瀕死の状態になると思ったんですけど意外と平気でした」


 今回もパーキングエリアでは何回か吐いたが、車内で吐くと言ういつもの誠の『もんじゃ焼き製造マシン』としての性能は確実に落ちていた。


「そうか、それはよかった。このまま慣れれば貴様の最大の欠点である乗り物酔いを克服できる」


 励ますようにカウラは笑顔を浮かべてそう言った。


「そうなれば良いんですけど」


 確かに誠の乗り物酔いは以前よりだいぶ良くなっていた。この前もアニメ声優のサイン会に電車で出かけたときに、それまでなら何回か電車を降りて体調を整えないととてもたどり着けない誠だったが、その時は一度も電車を降りずに目的の駅までたどり着くことができた。


「何にでも慣れるものだ。ただ、慣れてはいけないものもある」


 寮からの細い小道を車を勧めて国道に入る交差点で車を停めたカウラはそう言って助手席の誠を見つめた。


「なんですか?それは」


「人を殺すことには慣れるな。これはクバルカ中佐の意志でもある。まあ西園寺はこの部隊に来る前に人を殺すことに慣れてしまっていたからアレは参考にするな。私も貴様には人を殺すことに慣れてほしくない」


 真剣な表情でカウラはそう言った。


「僕も嫌ですよ、そんなことに慣れるのは……確かにクバルカ中佐や西園寺さんはこれまでの戦いでたくさんの人を殺して慣れてしまっているみたいですけど……これからも続くんですよね、僕達の戦いは」


 昨日出会った『革命家』を名乗る男との対決を思い出し、誠はこれからも戦いが続くことを理解した。


「そうだ、出動はこれからもある。『ビックブラザーの加護』が無くなった今、敵は容赦なく攻撃を仕掛けてくる。当然こちらも反撃して敵を倒すことになるだろう。その時に相手の死を悲しむ心を忘れないでほしい。ああ、これは私の言葉ではない。クバルカ中佐の言葉だ。だが私もそれは正しいと思う」


 駅に向かう国道に車を走らせながらカウラは初めて笑顔を浮かべた。


「そうですね……人が死ぬんですから。忘れません」


 誠は自分自身に言い聞かせるようにそう言った。



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