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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 野球と海と『革命家』  作者: 橋本 直
第三十九章 女大公殿下の住まいへの道

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第162話 かなめからの誘い

 濃い目のつゆを飲みながらかなめが言ったその言葉に、思わずアメリアが向き直った。


「あなたの部屋なんて、どうせ銃とか手榴弾が転がってるんでしょ?そっちの方がよっぽど問題なんじゃない?」 


 かなめへの攻撃を続けるアメリアの言葉にかなめはまったく反応しない。そのまま口直しの番茶の入った湯のみを口元に運ぶ。


「それは無い。ただ灰皿が無数に転がっていただけだ。前に送っていった時に西園寺の部屋に入った事が有る。それは殺風景な部屋だった」 


 同じように番茶をすすっていたカウラの言葉に驚いたようにかなめはお茶を噴出す。


「らしいわね。まるで女の子の部屋じゃ無いみたい」 


 アメリアの言う通り『殺風景』と言う言葉はあまり女性の部屋を表現するには使う言葉ではないと誠は思った。


「そう言うアメリアの部屋の漫画もほとんど誠ちゃんの部屋のとかわらない……」 


 サラが言葉を呑んだのはアメリアの頬が口を出すなと言っているように震えているのを見つけたからだ。


「はい、皆さん食べ終わったみたいだから、片付け手伝って頂戴」 


 春子が気を利かせて立ち上がる。黙って聞き耳を立てていた菰田達もその言葉に素直に従って空いた鍋につゆを入れていたコップを放り込む。


「島田。何もしなかったんだからテーブルくらい拭けよ」 


 そう言うと菰田は鍋を持って厨房に消えた。


「どうせあいつも何もしてねえんじゃないのか?まあいいや、サラ。そこにある布巾とってくれるか?」


 サラから布巾を受け取った島田はサラと一緒にテーブルを拭き始める。


「おい、神前」


 かなめの言葉に誠は振り向いた。そこには珍しくまじめな顔をしたかなめがいた。


「ちょっと荷物まとめるの手伝ってくれよ」 


 そう言うとそのまま頬を染めてうつむくかなめの姿に、誠は違和感を感じていた。


「そう言うことなのね」 


 黙って様子を見ていた茜が口にした言葉に、かなめは顔を上げてみるものの、何も言わずにまたうつむいた。そしてすぐに思い出したようにテーブルを拭いている島田に声をかけた。


「なにが?」 


「ごまかそうっていうの?まあ、ここでかなめちゃんと遊んでいる暇はないわ。私のコレクションを収納するのにふさわしいところを探さなくっちゃ」


 アメリアはそう言って胸を張る。ただ一同はその言葉に苦笑いを浮かべるだけだった。 


「アメリアの荷物って……どんだけあんだよ……深夜ラジオの記念品のステッカーとかそんなに場所取るのか?」 


 そう言うとかなめは立ち上がった。


「茜。車で来てるだろ?ちょっと乗せてくれよ、こいつと一緒に」 


 そう言ってかなめは親指で誠を指差した。当惑したように留袖に汚れがついていないか確認した後、茜が顔を上げた。


「いいですけど、午後からお父様に呼び出されているので帰りは送っていけませんけど」 


 茜はかなめの頼みに戸惑いながらそう言った。


「良いって。神前、餓鬼じゃねえんだから一人で帰れるよな?」 


 特に深い意味の無いその言葉を口にするかなめ。テーブルを拭いている島田とサラから哀れむような視線が誠に注がれた。


「まあ良いですよ。女将さん!手伝わなくて大丈夫ですか?」 


「ありがとう、神前君。こっちはどうにかなりそうだから、……引越し組みは出かけていいわよ」 


 鍋を洗う春子の後ろで小夏がアカンベーをしているのが見える。


「じゃあ先に行くぜ、茜。車をまわしといてくれ」 


 そう言うとかなめは食堂を出る。茜と誠はその後に続いた。


「でもまあ、狭い部屋だねえ。まあ仕方ないか、なんたって八千円だもんな、月の家賃が」 


 そう言いながら歩いていると菓子パンを抱えた西高志伍長が歩いてきた。


「お前いたのか?」 


「ちょっと島田准尉に頼まれてエアコンのガス買いに行ってたんで」 


 かなめと茜に見つめられて西は頬を染める。


「ああ、食堂に近づかねえ方がいいぞ。アメリア達が待ち構えているからな。何頼まれるかわかんねえぞ」 


 西は顔色を変えるとそのまま階段を駆け上がっていく。


「元気があるねえ美しい十代って奴か?」 


 上機嫌に歩き出すかなめ。そのままスリッパを脱ぐと下駄箱を漁り始める。



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