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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 野球と海と『革命家』  作者: 橋本 直
第三十六章 『護衛達』の新居

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第147話 ゴミ箱扱いされていた部屋の秘密

 意外にもカビの臭気は漏れてこなかった。島田を先頭に菰田、カウラ、かなめ、アメリア、誠が部屋に入っていく。部屋には奇妙な冷気以外は特に問題はなさそうに見えた。部屋の中央にはゴミの山がうず高く積まれているものの、予想したほどの臭気は感じられなかった。


「意外と良い部屋じゃねえか。ゴミをどかせばなんとか暮らせそうだな。西日が当たるのかね、畳が焼けてるみたいだけど……」 


 かなめは意外にもこのかび臭い部屋が気に入っているようだった。


「ゴミはすぐにどかします!畳は近日中に入れ替えます!ですから何とか……」 


 かなめの投げた視線に、悲鳴にも近い調子の島田の声が響いた。


「でも何でここじゃ駄目だったんだ?あんな女性を案内するには最悪の部屋を用意するくらいならこちらの部屋の方がはるかにマシだったのに」 


 カウラは特に痛みもない壁を見回している。


「そうよねえ。あそこの匂いがそう簡単に取れるとは思ってなかったでしょうに。ああ、かなめちゃんはタバコを吸うから関係ないか」


 『図書館』の所蔵物にまだ未練のあるアメリアがそう言ってかなめに目をやった。 


「一言多いんだよ!馬鹿が。アタシもあんな部屋嫌だね」 


 かなめはそう言うといつものようにアメリアの腿を蹴り上げる。


「蹴ることないでしょ!冗談だって!冗談!」 


 太ももを押さえながらアメリアがかなめをにらみつける。


「島田先輩。もしかして……」 


 誠は島田の様子がいつもの自信満々のヤンキーのそれとは違って何かにおびえているような表情であることに気づいてそう言った。


「幽霊が出るって言う落ちはつまらねえから止めとけよ」 


 かなめは天井からぶら下がる蛍光灯に手を伸ばしながらつぶやく。


「え!なんで分かったんです?」 


 意外にも島田は心霊現象に弱かった。明らかにおびえた調子で島田は引きつった笑顔を浮かべて誠達の表情をうかがう。 


「やっぱりそうなのね」 


「もう少し面白いネタ用意してくれよ。つり天井になっているとか」 


「それのどこが面白いんだ?」 


 三人に日常生活を破壊されている誠から見れば、アメリア、かなめ、カウラの発言は予想通りのものだった。この三人が幽霊程度で驚くようなキャラじゃ無いことは誠でも十分予想がついた。


「島田先輩。この三人がそんなこと気にするわけないじゃないですか。かなめさんはともかくアメリアさんもカウラさんも科学が生み出した人造人間ラスト・バタリオンですよ。そんな非科学的な話を信じると思う方がどうかしてる」


 誠は最初から予想がついていたかのように島田にそう言った。


「すいません!消臭スプレー買ってきました!それにしてもこっちの部屋にしたんですね。呪われても知りませんよ」 


 そう言いながら西は買ってきた消臭スプレーを撒いて回る。 


「そうだよね……」


 女子は幽霊を怖がるものと言う自分の彼女のラスト・バタリオンの割に普通の女性の定義に当てはまる行動様式をとるサラを基準とした考え方を改めざるを得ない島田だった。


「幽霊……もし出るんなら見てみたいわね。写真撮ったら一気にネットで人気者になれるわよ!」


「アメリア、幽霊なんていないぞ。そんなものは精神的な疲れが見せる幻覚か写真等を加工して作った作為的なもののどちらかだ。私は幽霊などと言う非科学的なものは一切信じない」


 いかにも嬉しそうなアメリアをカウラが科学的根拠に基づいて完全否定して見せた。かなめはと言えば日に焼けた畳が気になるようで、中腰になった畳を右手でなでていた。


「たしかに西園寺さん達なら平気ですよね、幽霊くらい」


 誠の一言にかなめが怒りの目でにらみ付けてくる。


「なんでそこでアタシなんだ?幽霊は怖くねえが、アタシにも怖いものくらいあるぞ。アタシは生きてる人間が怖い。生きてる人間は何をするか分からねえ」


 自分が無神経から怖いものが無いと言われた様に聞こえたのか、かなめはそう言うと誠の腿を蹴り上げた。


「いや……その……あの……痛いんですけど……」


 口ごもる誠をしり目に安心したように菰田が部屋をのぞき込む隊員達に目配せした。


 それまでこの部屋に伝わる因縁話を気にして部屋に入るのを躊躇していた男子隊員達は、かなめ達の落ち着きに励まされるようにして部屋に駆け込んだ。


 マスクをした寮生の一人がカビに覆われた段ボールを運び出すのを見ると、次々と集まったギャラリーが手際よくうず高く積まれたごみの入った段ボールを運び出す。


 ゴミの運び出しが終わると手にしたはたきやほうきで真面目に掃除を始めた。


「ったく下らねえことばかりやってないでオメエ等も働け」


 そう言ってかなめは思い切り島田の尻を蹴り上げた。


「ハイ!分かりました!」


 島田はまだこの部屋に出ると言う幽霊が怖いのか、青い顔をしながら太った整備班員から雑巾を奪うと一生懸命窓のサッシをぬぐい始めた。



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