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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 野球と海と『革命家』  作者: 橋本 直
第二十六章 二人だけの時間

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第108話 かなめの語る『甲武国』

「海か……甲武にも海はあるが水の海じゃねえ。とても泳げる代物じゃねえんだ」


 水平線を見ながらかなめは誠にそう言った。


「知ってますよ。甲武は地球で言う『金星』に似た環境ですから。硫酸の海が広がっていて、毎日のように硫酸の雨が降り注ぐ。その硫酸を防ぐ特殊コーティングに覆われたコロニーに人が暮らしてる……僕にだってそのくらいの社会知識はあります!」


 誠は馬鹿にされたように感じてそう言い返した。


「そうだ。普通に生活できる環境じゃねえんだ。ここと比べれば人が暮らすこと自体が無茶な環境。それが甲武だ。そんな甲武には地表と軌道上に作られた宇宙コロニーに三億人の人間が暮らしている」


 かなめはサングラスを額に乗せたまま自分の生まれた国、甲武について語りだした。


「三億人ですか?東和の三倍じゃないですか……その大半が平民なんですか?」


 貴族の生まれでありながら庶民派のかなめに向けて誠はそう言った。


「そうだな。その人口の99%以上が平民だ。そのほとんどが生きるか死ぬかのぎりぎりの生活をしている。しかも、甲武の国是の『復古主義』のおかげで空気や水は供給されるが東和のような便利な機械は貴族が独占している」


 かなめの語る甲武の国情に誠は興味を引かれた。


「まさか、電気もガスも無いんですか?」


 貴族に技術を独占された世界。誠にはその不便さを想像することができなかった。


「そんな文明の利器の恩恵にあずかれるのは平民でも一握りの金持ちだけだ。当然、テレビもラジオもネットもねえ」


 今時そんな遅れた環境で三億人の人間が生活している事実を知って誠は驚いた。


「それはやりすぎですよ!復古主義って言ったって便利なものは便利なんですから。電気の無い生活なんて僕には想像もつきませんよ」


 便利な東和共和国に生まれ育った誠にはその『復古主義』が甲武の平民の貧しさのすべての元凶のように思えた。


「昔の人がそう決めたからそうなってんの。だから前から言ってんだろ。あそこのほとんどの平民は生きるか死ぬかのぎりぎりの環境で暮らしてるんだって。電気料金やガス料金を払うより先に空気と飯と水を確保するだけで精いっぱい。それが甲武の現状だ」


 宇宙空間で営まれている過酷な生活を想像して誠は自分がここ東和に生まれて良かったと改めて思った。




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