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【コミカライズ】たとえこの愛が偽りだとしても  作者: 頼爾@11/29「軍人王女の武器商人」発売


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いつもお読みいただきありがとうございます!

「なんで、あんなことしたんだよ。ザカリー」


スチュアートはまだザカリーを信じているのか震える声で問うので、ゼインはさらに呆れた。本当になぜスチュアートが被害者のような顔をしているのだろうか。ザカリーのことなどあの騒動以降、罰の清掃が終わって以降気にもしていなかったのに。


この件で被害者面をしていいのはメイファアウラ殿下とエリーゼ嬢だろう。


ザカリーはのろのろと柵を掴んで立ち上がる。


「殿下だって不公平だと思っているでしょう」

「は?」

「あの女たちのことですよ。こっちは騙されただけなのに罰を与えられて、あの女たちはのうのうと生きてるじゃないですか。殿下の元婚約者様なんて隣国の次期王妃ですよ?」

「ナディア妃は……それはそうだが」

「しかもエリーゼはあの変人第二王子と婚約。あの無能で何もできない女が将来は公爵夫人? 俺より上なんてあり得ない、あの無能が」


ゼインは手を出さずに黙って様子を見守る。ザカリー・キャンベルは喚こうが暴れようがもう檻の中なのだ。

ザカリーの手が隙間から伸びてスチュアートの服を掴む。


「あいつが俺より上にいるなんてあり得ないんですよ。あんな無能な女は俺より絶対に不幸じゃなきゃいけない。下にいて暗い顔して不幸にしてなきゃいけないんですよ!」


気持ち悪い。ザカリーの完全におかしい目を見てゼインは吐き気がこみ上げてきた。


「でも、ザカリー。お前はエリアス兄上の婚約者を狙っただろ?」


あぁ確かに。エリーゼ嬢が刺されたのは偶然が重なった結果だ。


「ははっ。何でもいいんですよ。あの女が少しでも傷つけば。何でも! 王女のついでに王太子にも少しやり返せればいいと思った。でも、今回あの王女と呼ぶにもおぞましい女ではなくエリーゼが刺されたと聞いて笑えましたよ。やっぱりあの女はあの地位にはふさわしくない。神はいるんだ! これは天の配剤ですよ!」


スチュアートは信じられないという表情でザカリーの手を振り払う。

ゼインはこみ上げる吐き気に耐えながらなぜか姉の言葉を思い出した。「男なんてプライドだけのつまんない生き物よ」と姉は言った。夫婦喧嘩でもして虫の居所が悪いのだろう、主語が大きすぎる、アシェルは少なくともそんなことはないとその時は思ったが、目の前のザカリーには大いにあてはまるだろう。


「たった、そんなことで、か?」

「たった? そんなこと? 殿下がそれを言うんですか? いや、殿下は王妃殿下が庇ってくれますからねぇ。王族だから表立って悪く言われない。俺がどれだけ屈辱を受けたと思ってるんですか。エリーゼのせいで。生意気な子爵令嬢に駆け落ちされて、やっと見つかった次の婚約者は出戻りの男爵令嬢ですよ。社交界でうちがなんて言われてるか知ってますか? あいつが、あいつらが騒ぎ立てたりしなければ!」


完全なる責任転嫁。ルルを恨むのではなく、全部エリーゼ嬢に恨みがいっているのか。


「俺は、ナディアを恨んでない。俺が弱かったのが、無能なのが原因だ」


ナディア妃殿下だろう。ゼインはいつもの癖で秒でツッコミを入れたくなったがやめた。


「殿下も殿下ですよ! 殿下があの時上手く立ち回っていればこんなことにはならなかった! キャンベル侯爵家がこうなったのは殿下にも責任がありますよね? 殿下、助けてくれるんですよね!?」


ザカリーは再度スチュアートを掴もうとして、スチュアートは二歩下がる。


「無理だ。俺はもうこの国を出される」


その言葉にザカリーは手を下ろして柵を掴んだ。しかし、目はまだギラギラしている。


「上二人と比べて無能な第三王子。ははっ。あなたも無能でしたねぇ。そんな第三王子に侍っていたからこんなことに……王妃殿下からも見放されたんですか? あなたは王妃殿下のお気に入りでそのおかげでバイロン嬢との婚約も調ったのに」

「そうだな」

「そもそも、あんたみたいなのに付き従ったのが間違いだったな! 無能で威張るだけの第三王子に! 分かっていたさ! 最初っからあんたが無能なのは! だが王子で王妃殿下のお気に入りだからな、第二王子よりも明らかに優遇されてたはずなのに!」


もう十分だろう。

今度はスチュアートに責任転嫁を始めたザカリーの前に突っ立っているだけのスチュアートの服を引っ張る。何の抵抗もなくゼインの向かいたい方向に動いた。


「行きますよ」


まだ喚いて叫んでいるザカリーを無視して、スチュアートを引っ張ったまま来た道を帰る。


「あぁ、ヘビでも用意しておけば良かったですね。あんなにお元気なら」


ゼインなりのジョークだったのだが、ショックを受けた様子のスチュアートには届いていなかった。


「渾身のジョークだったんですけど」

「俺は、ザカリーの何を見ていたんだろうか」

「私の渾身のジョークは無視ですか」


スチュアートから返事はないのでゼインは口をそれきり噤んだ。胸糞悪いものを見たが、それでも今日はやっとゆっくり眠れそうだ。被害者面した加害者のザカリーなど理解する方が難しい。

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