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「あの王女、嫌な女だわ。見ただけで分かる」
「名前も似てるもんね。嫌なこと思い出しちゃうね」
「名前が似てると仕草まで似て見えてほんと嫌だわ。エリーはあんなの相手しなきゃいけないなんて」
「まだ婚約者だからそこまで相手する必要はないけど、嫌だよね。苦手っていうか生理的にもうダメっていうか」
フライアとクロエは遠巻きにルルティナを見ながら喋っていた。そのルルティナはエリアスと踊っている最中である。池には落ちたが運動神経はそこまで悪くないようで、ダンスは足を踏まずに踊っている。
「何しにわざわざくっついて来たのかしら。嫌がらせ? この国で結婚相手でも見つけるつもり?」
「ワイマーク王国は王女が多いけど、同じ国に二人も嫁がせても旨味ないよ~」
「そうよね。だってメイファアウラ殿下は王太子の婚約者なんだし。ルルなんとか王女はあの年齢で婚約者がいない時点でお察しだけど」
「えり好みしすぎちゃったか、婚約者が亡くなったとか?」
「婚約者がいたって情報は聞いてないわね」
「ああいう人種ってどこの国にもいるんだね~。エリアス殿下にあんなに愛想振りまいても意味ないのに」
「それが分からない時点でダメよね。ああいうタイプは息を吸うように媚びて、何が起きても絶対に被害者面するのよ。腹立つ。同じ女でくくられたくないわ」
クロエはお皿の料理を食べながら、フライアは扇を口元に当てて喋っている。
「フライア、言うわね。クロエは相変わらずよく食べるわね」
「私にはよく食べるって誉め言葉だから」
「ブルックリン。内心では同じこと思ってるでしょ」
二人に近付いてきたのはブルックリンだ。
「私のダーリンはあっちで話してて、フライアのダーリンは忙しくしてるけどトーマス様は?」
「クロエ、まだダーリンじゃないわよ」
「トーマスは話が長い人に捕まってるから置いてきたわ」
「生贄みたい」
「そんなとこ。それよりエリーはどこ?」
ブルックリンは会場を見渡す。
「さっきメイファアウラ殿下と一緒に出て行くのが見えたわよ。殿下の気分が悪くなったんじゃない? お世話してる感じだった」
「私も見たわ」
「残念。まだ聞きたいことあったのに」
会場の一角がにわかに騒がしくなる。三人はそちらに目を向けた。
「まさか、婚約破棄騒動じゃないでしょうね」
「こんな場所でそんなことする人、スチュアート殿下以外にいるのぉ?」
「うわぁ、普通に名前言っちゃってる。殿下は一応学園の庭だったわよ。フォローするわけじゃないけど」
「ちょっと見てくる」
「え、クロエ。お皿は置いていきなさい!」
クロエが騒がしい一角に近付いていき、周囲の貴族に話しかけながら集団に溶け込んでいった。しばらくして戻ってくる。
「ご令嬢が倒れたみたい。体調不良かもしれないけど、何か盛られたとか……とにかくあそこは情報が錯綜して混乱してる」
「え、何か盛られたってマズイじゃないの」
「もう少し様子を見ましょうよ」
三人で固まって喋りながらしばらく見ていると、会場に出入りする騎士の数が増えている。そちらに気を取られていると、王妃が退場するのを目の端に捉えた。
「これは何かあったわね」
「見て、スチュアート殿下も何やら動いてるわ」
「珍しい」
「いやいや、王宮のパーティーなんだから」
「アシェル殿下は?」
「ゼイン様を探した方が早いんじゃない? あ、あそこ。会場の外に出て行くわ」
「やっぱり何かあったのよね?」
「そうね。大事件じゃなきゃいいけど……」
「あのルルなんとか王女殿下は変わらず楽しんでいるみたいよ?」
「大物なのか、何なのか……」
三人でルルティナやスチュアートを観察しながら喋っていると、背後に人が立った。
「三人ともご一緒でしたか。良かった。一緒に来ていただけますか?」
振り返ると普段よりもさらに無表情になったゼインが立っていた。
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★私の婚約者様の毒舌が過ぎる




