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不穏からのちょっとほのぼの。久しぶりにメイメイ登場。
「ふむ。動きづらいのぅ」
「ドレスはどれもこんな感じですよ」
「試着の時にもうちょっと動いておけばよかった。これではずり落ちんのか? ワシは胸がないからポロリとはいかんぞ」
お披露目パーティーの準備が終わり、時間になるのを待ちながらメイメイは疲れた様子でブツブツ言っている。
「あんなに早くから準備せんでもいいと思わんか?」
「あれでも遅い方なんですよ」
「なんじゃと! 風呂に入れられていろんなところをマッサージされて肌にいろいろ塗られて、あんなのがもっと早い時間から始まるのか!」
「えぇ、今日はマシな方です。メイメイ、ドレスとてもよくお似合いです」
「む、そうか。エリーちゃんがそう言うなら良かった。ワシはこんな格好なんぞほとんどしたことがないからの。鏡を見たら自分ではない気がして変な感じなのじゃ」
ロイヤルブルーのドレスをまとったメイメイはわざわざ立ち上がってくるりと回転する。大部分は結い上げられ、計算されてほんの少し垂らしてある銀髪もいっしょに回る。
そういえば、彼女のおかしな喋り方が少しは改善したように思う。エリーゼの中では、だが。
「それにしてもエリーちゃんはとても大人っぽいのお」
「あ、ありがとうございます」
「ワシももうちょっとスタイルが良かったらそのドレスも着こなせるじゃろうのぅ。なんでこんなヒランピランしたドレスなんじゃろうか」
「それはまだ落ち着いている方です」
「誠か。じゃなかった。本当でデスノ? 困りましたワァ~」
なぜだろう、普通の令嬢のように喋るメイメイは非常に違和感がある。
「はぁ、やれやれ。頑張るかの」
メイメイが着ているのは、胸元に大きくギャザーが寄った袖のないロイヤルブルーのドレス。肩から腕のラインがすっきりしてとても美しく見える。だが、当の本人は腰から裾がふんわりしたドレスが落ち着かないようだ。
エリーゼは本日の主役ではないので、落ち着いた藍色のスレンダーラインのドレスだ。オフショルダーなので肩がスースーするのが気になるが、メイメイのドレスとそこは同じなので泣き言は言えない。
胸元にはアシェルが用意したサファイアのネックレスが肌への冷たさとともに存在感を放つ。
「緊張しますね」
「エリアスの足を何度踏むか賭けとるが、エリーちゃんも賭けるか?」
「メイメイは運動神経がいいではないですか」
「リズム感がのぅ。それにエリアスとの相性もあるのデスワ~」
「大丈夫ですよ。エリアス殿下が頑張ってくれます」
「そうじゃの。エリアスに依存する気持ちでいくのじゃ。あ、ちなみにエリーちゃんの兄は一曲あたり三回踏むに賭けておるぞ」
「お兄様……一体何を」
「お高いワインを賭けておる」
「いえ、そうじゃなくて……賭けなんて……すみません」
「楽しければ良いのじゃ。ワシも緊張しておるからの、少しでも楽しめる要素は増やしておかんとな」
長く会話するとだんだん元の口調に戻ってきている。
心配そうな目で見てしまっていたのだろう、メイメイはニヤッと笑った。
「大丈夫じゃ。エリアスと打ち合わせしてあってパーティーでは極力喋らんようにするからな」
「でも令嬢言葉のメイメイは変な感じがします」
「じゃろう? もうこのままでいこうかのぅ。王妃様には絶対イヤな顔をされるじゃろうて」
メイメイはイタズラを企む子供のような顔をしている。
「ま、これまでのお勉強の発表会といくかの。これが終わったらあの異母姉は帰国させられるし。くふふ。一区切りじゃな」
エリーゼは自分のお披露目パーティーの時は緊張して吐きそうだった。あのアシェルでさえいつもより緊張していた。いや、あの時は主役で池に入ることができないからあれだったのかもしれないが。
しかしメイメイは自分のお披露目パーティーだというのに堂々としたものだ。肝の据わり方が違う。




