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公募の原稿など書いておりますので、来週から更新遅れるかもしれません!
「そういえば、キャンベル侯爵家のアレについてはちゃんと情報を得ているの?」
「え? アレって元婚約者のこと?」
「そうよ。お金持ちの男爵家の出戻り娘と婚約間近なのは知っているの?」
「ええっと、そうなの? 知らなかった……というか忙しなくて忘れてて……」
元婚約者ザカリー・キャンベルのことを私は本当に久しぶりに思い出した。
男爵家の方と婚約は分かるけど、出戻りの方? 子爵家の令嬢に逃げられてから婚約したとは聞いていなかったけど……。夜会でも以前のように目立たないし、私も一人でいることがほぼないので見かけてもいなかった。
「でしょうね。クリストファーにも注意しておくよう言ってあるんだけど、あの子も仕事が忙しいのと婚約者のゴタゴタで忘れてるんだろうし。旦那様も仕事ばっかりで当てにならないし」
「まったくうちの男どもは一つのことしかできないんだから……」とブツブツ言いながら、母は整頓された物の中から手紙を何通か取り出す。
「フライア嬢のところの元婚約者は文官登用試験にギリギリで合格したわね。ストーン侯爵家の令息とは城で会う可能性があるわ。下っ端でしょうから大丈夫だとは思うけどね。クロエ嬢のところの元婚約者は国外に留学したそうだから、今の所会うことはないでしょう。ブルックリン嬢は結婚してるし。スチュアート殿下とはもう会ったのよね、彼もどうせ国外に出るものね」
母はさらさらと元婚約者たちの動向を話す。
「すっかり頭から消えてた……スチュアート殿下やトーマス様は何度か会っているけど」
「そうね。情報を持っておけば対策がとれるでしょ。資金繰りに困ってたらなりふり構わず借金の申込してくるかもしれないもの。キャンベル侯爵家は婚約者に今度こそ逃げられなかったら、相手はお金持ちだから大丈夫でしょうけどねぇ。男爵家の中で探すまでお相手が見つからなかったのね。そのへん拗らせてなきゃいいけど」
確かに、侯爵家と男爵家の縁組はあるにはあるとはいえ中々ない。
「うん、そうだね。それにしてもフライアやクロエの元婚約者のこととか詳しいね?」
「フライア嬢のところは執事の方と手紙でやりとりしてていろいろ教えてくださるのよ。アシェル殿下もたまに手紙くれるわよ、ニンジンとかカエルやヘビの話題がメインだけど。うちのニンジン送って欲しいみたいよ。あとはカエルの絵が毎回書いてあるわ」
フライアはここに避難してきたことがあるから分かるけど、まさか執事の方と情報のやり取りをしていたとは……。
母が見せてくれたアシェルの手紙には、カエルのスケッチが確かに描かれていた。手紙の内容は短いのに、カエルのスケッチだけ異様に緻密で目立つ。
「本人が手紙書いたって分かりやすくっていいわよ~」
婚約者の親に送る手紙にカエルを描くのもどうかと思うが、母にはサインレベルのようだ。
そんな話をしていると使用人がノックとともに入ってくる。
アシェルがすでに領地に到着して、以前もお邪魔したおばさんのところでニンジン収穫しているらしい。
「アシェル殿下って見た目と違ってどこでも生きていけそうよね。むしろ緑豊かな領地の方が似合うわね」




