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ロレンスは結婚してからも二人の時間をしっかり確保する。
釣った魚に餌をやらない人もいるようだが、彼は今の所そんな素振りはない。
お互い忙しいが、ナディアの体調が悪かったり、酷く疲れていたりする時以外は夜に必ず話す時間を設けてくれるのだ。大抵ソファに並んでお酒を飲みながら。
楽しく語らった後は夜のアレの時間にはなるのだが……夜のアレをちょっと思い出しかけてナディアは赤くなりかけた顔を根性でどうにかする。
「ナディアと結婚できた自分は世界一の幸せ者だ」
ロレンスはことあるごとにこう言って憚らない。
この前のお茶会でもナディアが隣国の公爵令嬢であることや、スチュアートに婚約破棄されかけたことなどを揶揄する令嬢達を前にしても同じことを言っていた。
最初は、ナディアのこの国での立場を盤石にするためなのかと思っていた。
「いやぁ~。あれはあの方の本心ですよ~。だってぇ、あの方は嘘をつく時はっおっとぉ!これは言ってはいけませんねぇ~」
なんてニヤニヤ顔のダラスに言われるまでは。
ロレンスの癖をダラスが知っているのは不思議ではないが、イメージとしては元婚約者に「あなたより私の方が彼のことを知っているのよ!」とマウントを取られている気分になる。だから、ダラスのことは苦手なのかもしれない。
「明後日はライサチェク公爵家に行くのか」
「えぇ、事業について公爵と話をするわ」
ちょうどロレンスが元婚約者の家の話をする。
流行病で亡くなってしまったロレンスの最初の婚約者・エリーゼ・ライサチェク公爵令嬢。
奇しくもエリーと同じ名前だった。
彼女の名前を聞いてからすぐに会いに行かねばいけない気がして、この国に来てからあまり間を置かず、ライサチェク公爵家に挨拶に行き、彼女の墓に花を手向けた。
彼女には妹がいたが、婿を取ってライサチェク公爵家を継ぐのでロレンスの婚約者に、とはならなかったのだ。
ライサチェク公爵は流行病で娘を亡くしたため、医療に特に力を入れている。ナディアもバイロン公爵家の領地では医療に力を入れていたので話が合った。現在はナディアの案で新しい事業も起こそうとしている。
ライサチェク公爵がナディアを支持してくれているので、他の貴族達から表立って何かを言われたり、舐められたりすることはほぼないのだ。
「ナディアがライサチェク公爵家に行きたいと最初に言い出した時はどうなるかと思ったけど、結果としては良かったよ」
元婚約者の家族と現婚約者。確かに、どんな反応を起こすか分からない。
でも、怖くはなかった。
「あなたの婚約者だった方だもの。肖像画でもご家族でも会いたいわ」
ロレンスの婚約者だった人。ロレンスの思い出の中にいる人。私だって大切にしたい。
ロレンスは酒を置いてふっと笑う。最近分かったことだが、彼は強めの酒を好んでいる。
「数日前まで普通に会っていた人に突然一生会えなくなるなんて。もうそんな思いは……ごめんだ」
ロレンスはナディアの体を引き寄せた。酒のせいか、それとも風呂上りだからかロレンスの体は熱い。すぐ近くでロレンスの息遣いと鼓動が聞こえる。
「ナディア。一緒に長生きしよう」
酒のせいだろうか、それとも―
ロレンスの声は珍しく掠れている。
「はい」
「できれば、俺を看取って」
「ふふっ、努力するわ。そのためにライサチェク公爵と頑張らないと。それには医療分野の研究費を上げないといけないわ。そうしたら今度の国の予算もっ」
「予算も上げないといけないかも」と続けようとしたが、ロレンスがナディアの唇に指を当ててそれを遮る。
「ナディアは俺がこんなに近くにいるのに、すぐ熱心に仕事の話をする。緊張してるのは俺だけ?」
ロレンスの手がそっとナディアの頬を包んだ。
大体いつもここからキスが始まって、ソファの上でしばらく……それから抱き上げられて寝台に移動して。夜のアレの時間だ。
ドキドキしていないわけがない。好きになった人だから。
ナディアはロレンスの温かさを感じながら、応えるようにロレンスの指に自分の指を絡ませ、そっと目を瞑った。
……主役二人のイチャラブより書きやすい……。今度こそ主役二人のイチャラブを!
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