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【コミカライズ】たとえこの愛が偽りだとしても  作者: 頼爾@11/29「軍人王女の武器商人」発売


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いつもお読みいただきありがとうございます!

評価やブクマ、いいね嬉しいです。

「スチュアート殿下と急に会ったからまだ混乱してるのかも」


「あぁ、確かにね~。急に引き合わされたら困るよねぇ。でもそれとキスしてないのは別よぉ~」


レモンパイをパクパク食べながら、クロエは「逃がさない」とばかりに目を輝かせる。


「そんなに食べて大丈夫?」


「だってエリーが私達のために作ってくれたレモンパイでしょ? このパイはね、エリーの愛なのよ。糖分じゃなくて愛なの。だから太らないわ」


それはちょっと無理があるのでは……。

どう見ても夜に食べる分量にしては過ぎているが、クロエの率直な発言に照れてエリーゼは目をそっと伏せた。


「第二王子の婚約者としていろいろ言われて、最近また自信がなくなってきたかも。王妃殿下にはあまり好かれていないみたいだし……それでもやっぱり認めてもらいたいって思ってしまうし……」


クロエはうんうんと相槌を打ちながらレモンパイを食べ、さぁ飲んでと言わんばかりにワインを注いでくれる。器用な人である。お返しに私もワインを注ぐ。


「さすがにアシェルのことを男色だとは考えていないんだけど……自信がなくなってきたら好きなのかどうかも分からくなって、悶々と考えるようになってきちゃって……」


ワインを飲むと頭がふわっとした。これが酔うという感覚なんだろう。


「それでスチュアート殿下に会ったら、なんだか私と似てるなって。殿下は無能で苦しんでいたけれど、私も誇れるほどできることはないし……平凡以下だし……」


話がきちんとまとまらない。頭がフワフワするせいもあるが、自分の中に迷いがあってコレと言えないからだろう。


「他人と比べちゃうと自信なくなるよ。私もダーリンの亡くなった婚約者の話聞くと自信なくなるもん」


クロエもワインを飲みながらトロンとした目をしている。


「そうなの? でも伯爵様は亡くなった婚約者の話をする人には見えなかったけど……」


年上だからその辺りはしっかりしているんじゃないのかしら。


「領地に行くとその話する人がいるのよ~。『前の婚約者さんとは全然違うね』って。でもね、他人と比べたってどうしようもないもん。ナディアと比べたら私、全然ダメだし」


「そんなことない。クロエは伯爵様と婚約して幸せそうだし、領地を芸術の街にするっていろいろ動いて楽しそうだよ」


「ふふっ。ありがとう。あのね、他人と比べると自分の想いなんてすぐブレちゃうの。でもね、やっぱり一番大切なのは自分の想いなんだよ。それをちゃんと持っていさえすれば、誰に何を言われても怖くないよ」


クロエの前のレモンパイはいつの間にかなくなっていた。


「好きかどうかとか愛だとか恋だとかって難しいよ。こうって言えないし。燃え上がるものもあればゆっくり育むものもあるし。でもね、偽りだろうがお飾りと陰口言われようが、自分の想いを貫けば……それは本物の愛になるの」


そこまで言うとクロエはグラスに残ったワインを飲んだ。

クロエの言葉を噛み締めていると、クロエが席を立つ気配がした。お手洗いだろうか?



「え……と……?」


クロエが私の目の前まで来て顔を覗き込んでくる。

友達でもここまで近づいたことはない。クロエの指が私の唇に触れてぎょっとした。


「クロエ……酔ってる?」


掠れた声しか出ない。


「キスしたら好きか分かるって言う人もいるのよ」


私の問いには答えてくれないクロエの目はトロンとしていて、ほのかにレモンパイの香りがする。

困ったことに、クロエがこちらを覗き込んでいるせいで、服の隙間から彼女の豊かな胸部がチラチラ見えるのだ。目のやり場に困る。


すーっとクロエの指が私の唇を撫でる。急に酔いが回ったのか、自分の体が熱い。顔も赤くなっている気がする。

クロエのトロンとした目と泣きぼくろのせいで、非常に色っぽく見える。同性から見ても、である。


「えっと……」


「しー」


クロエと離れるために「酔っちゃったみたいだしそろそろ眠る?」と聞きたいのだが、喋らせないとでも言うように唇にまた指を当てられた。クロエの指から熱が伝わる。いや、私の熱かもしれない。


さらにクロエの顔が近づいてきて―

え、キスされる!? 思わず、両目をぎゅっと瞑った。



「う~ん、目が回る~」


特に変わった感触はない。恐る恐る目を開けると、クロエが座り込んでいた。


「く、クロエ?」


「あはは、エリーも回ってる~。くるくる~」


クロエは私を見てへらりと笑い、そのままパタリと床に伏してしまった。


眠っているクロエを侍女達とまたベッドに運ぶ。なぜか侍女達の顔が赤く、チラチラ私を見てくるのはなぜだろうか……。「ボーイズラブも尊いけど、ガールズラブもいいわぁ」なんて部屋の隅にいる侍女が言っている意味がよく分からなかった。


結局私は眠くならなかったので、残りのワインを飲んで片付けてベッドに入った。クロエの言葉を反芻しているうちにウトウトと眠ってしまったようだ。



「まさかエリーが一番お酒に強いなんて。うっ、頭痛い」


「意外よね。というか飲み過ぎた……」


「楽しかったね~。またみんなで飲みたいね!」


翌朝、頭痛に耐えながら水を飲むフライアとブルックリン。

クロエは頭痛はないものの、ブルックリンが寝た後のことはほぼ覚えていなかった。キス未遂?のことも覚えていないようだったので黙っておく。



かなり後から聞いた話ではあるが、クロエは酔うとキス魔になるそうだ。伯爵様は大変である。

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