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いつもお読みいただきありがとうございます!
相変わらずガールズトークです。
「婚約祝いでお父様からもらったワインよ! あけましょう」
「さぁさぁ、乾杯しましょ」
クロエの家でのお茶会からほんの数日。
私達四人で今度はフライアの家に集まっていた。いつもと何が違うかと言えば時間帯である。
「結婚したらなかなかできないことを今のうちにしておきましょ。みんなでお酒飲むとかね!」
というクロエの一声によって実現した夜からスタートの泊りがけの飲み会である。開催がすぐだったのはブルックリンが次の週から忙しくなってしまうからだ。
「はぁー、ナディアともこんなことしたかったわね」
「んー、でも学生のうちは飲酒できないもの。難しいわね。ナディア、どうしてるかしら」
クロエは早くもグラスを空けてお替りしている。
「これってブルックリンの所のグラスじゃない?」
「あ、ほんとだわ。お買い上げありがと~」
「ブルックリンの結婚式の時にお土産で買ったのよ」
「あ、そうだ。エリーがレモンパイ焼いてきてくれたの~。食べましょ!」
「2ホールあるからね」
ワインと合うのかは疑問だったが、1ホールでは絶対足りないだろうと2ホールにしたのだ。
昼間のお茶会とは雰囲気が違うせいか、皆ややテンションが高い。そんな中で一番早く酔いが回ったのはフライアだった。
「はぁ~、最近アートとぜんぜん会えてにゃくって」
グラスの中身がまだ半分残っているのにフライアの顔が赤いなと思っていたら、喋ると噛んでいる。
「兄が抜けているから忙しいよね……」
「でも王太子殿下の側近達のオーバーワークはさすがにまずいレベルよ」
「なになに~。フライア、寂しいの~?」
私とブルックリンがオーバーワークを心配する横で、クロエはニヨニヨしながらクッションを手渡す。
「ふにゃ~、そりゃあ寂しいわよぉ」
フライアはクッションを抱きしめ、若干ネコ化しながらイスでウトウトし始めた。
「まさか、一番お酒に強そうなフライアがこんなに弱いなんて……」
「睡眠不足かしら?」
「むふふ。こんな姿なかなか見れないわよ~」
「あら、レモンパイ。サクサクで美味しいわね!」
「甘さ控えめにしてみたの」
「じゃあフライアは食べないだろうからこの1ホールは私の物ね!」
レモンパイを三人で食べている間にフライアは寝てしまった。侍女にも協力してもらってフライアをベッドに運ぶ。スゥスゥと規則正しい寝息が聞こえる。
「フライア、お疲れ気味なのかしら?」
「侯爵家の女当主となるとうちみたいな伯爵家とは当主教育の内容が違うだろうしね」
「じゃあ、フライアは寝ちゃったし。三人で恋バナしましょ!」
「恋バナって私、結婚してるわよ」
「いやーね。デート事情とかよぉ。それにブルックリンはもう初夜も済ませてるんだし」
んぐっと音がしてブルックリンはレモンパイを喉に詰まらせた。慌ててワインで流し込んでいる。そんなに一気に飲んで大丈夫かしら。
「私聞いてみたかったのよ~。エリーはアシェル殿下とどうなの? 手は繋いだ? キスは? いつもどんなデートしてるの?」
クロエの好奇心はこちらに向かってきた。自分の分と私の分のワインを注いでからこちらに身を乗り出してくる。すでに彼女のワインは三杯目だ。
「えっと……デートは散歩が多いわ。王妃様との勉強の後に庭を散歩するとか」
「殿下も忙しいからデートはそんな感じなのねぇ。まぁお付きの人もいっぱいいるものね。で、キスは? した? うまいの?」
「げほっ。クロエ、ちょっとグイグイ聞きすぎでしょ」
なんとか復活したブルックリンだが、まだ涙目だ。
「だってぇ、気になるんだもの。トーマス様は上手なの?」
「っ黙秘するわ!」
「んー、そっかぁー。結婚するからその辺り気になるわぁ。まぁ私達、比べる相手いないものね。うちのダーリンは年上だしリードしてくれるかなぁって思ってるんだけど、私からもちょっとはグイグイいった方がいいのかしら?」
「すでにクロエは十分グイグイいってるでしょ」
「えー、そんなことないよ~。エリーはどう思う?」
「私はグイグイいったことないから……」
そう言いながらふと気づく。グイグイいかないから、メリーに呆れられるようなデート内容なのかしら。キスもしたことがないけど、婚約中にするのが普通なのかしら?
「皆はどんなデートをしてるの?」
私の口からはそんな疑問が出ていた。




