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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
679/688

H-679 あの支線の先にあるのが資材の搬出口に違いない


 トンネルの南にある広場に仕掛けた、2度目のリトルジャックが炸裂した。

 小形ドローンでの状況確認では、炸裂場所の周囲に10体程のゾンビが蠢いている。

 斜路に転がしたテーブルを乗り越えてアルファチームがトンネルに向いゾンビにグレネード弾を発射する。

 発射音は頼り無いんだけど、さすがにトンネル内だから炸裂音はかなり大きく聞こえてくる。

 軍曹から、『頭部確認に移る!』との連絡を受けたマスケット中尉がブラボーチームをトンネル北のゾンビを狙撃するために向かわせた。続いて斜路の警戒を行っていた分隊に、テーブルをトンネル内に移動するよう指示を出す。

 邪魔にならないように少し後ろに下がってドローンから送られてくる映像を眺めていたんだが、軍曹達の確認作業が終わったとの連絡を受けて俺達も斜路を降りてトンネルに向かう。


「なるほど大きなトンネルですね」


「北から来るゾンビがいないとも限りません。1個分隊を置いて、俺達は南の出入り口を探しましょう」


 エメルダさんを介して、強襲揚陸艦にデュラハンをトンネル南に向わせて貰う。

 遠くからゾンビの声が聞こえるからなぁ。このまま向かう前に状況を確認しておかないと……。


 軍曹達が広場の先にテーブルを転がして簡単な柵を作る。

それ程高くないから、デュラハンが柵を跨いで南へと向かった。

 ここまでは順調だな。この先はずっとトンネルなんだろうけど、場合によっては部屋があるのかもしれない。まだゾンビの声が聞こえるぐらいだからね。トンネル内ならリトルジャックのブザー音で、ここまでやって来たに違いない。


 今度は小型ドローンの操縦者である工兵も一緒だ。俺達の後方でバーネスト准尉と一緒なら、危険もそれほど無いだろう。


 小型ドローンによる先方の状況をバーネストが伝えてくれる。モニターを見ているという事は、フレームパックをキャンピングカートの上に乗せて常に監視しているようだ。


『この先200mほどに4体おります。トンネルの左手です!』


「了解! ……軍曹!!」


「アルファで十分ですね。ゾンビの種別は?」


「全て通常型だ。サプレッサー付きの拳銃で始末出来るかな?」


「ライアン! 大丈夫だろうな?」


 ライアンと呼ばれた兵士が、構えていたM14を肩に担いで、ホルスターからベレッタを取り出した。直ぐにサプレッサーを取り着けて、仲間の準備を確認している。

 ライアンが軍曹に片手を上げたのは準備完了という事だろう。

 ブラボーチームの方はバックアップを行うために俺達の前に出て、横一列に並んでいる。


「いましたね……。まだこちらに気付いていないようです。……ライアン上手くやれよ!」


 5人の兵士が身を屈めてゾンビに迫っていく。

 あまり足音を立てないように進んでいるんだが、さすがにトンネル内だからなぁ。ヒタヒタと足音が小さく聞こえてくる。

 その足音に気付いたのだろう。4体のゾンビが一斉に兵士達に体を向けた。

 それを待っていたかのように、バシュ! と銃声がここまで聞こえてくる。

 全く音を立てないような銃もあるようだけど、威力が今一だとライルお爺さんが教えてくれたんだよなぁ。

 だけどサプレッサーを付けても、トンネル内では案外銃声が大きく聞こえるんだよねぇ……。


 確実に倒したかを確認して、悩むようならもう1発頭部に撃ち込めと教えてある。確認時の銃声は1発だけだったから、兵士達の腕はかなり良さそうだ。


「終わりましたね……。進みましょうか」


 軍曹の言葉に、俺達は更にトンネルを進んで行った。

 かなり進んだようだ。バーネストがレーザー距離計を使ってマッピングをしている。

彼によると、まだ500ⅿほど進んだだけらしい。前方にまた1つ広場が見えてきた。

ドローンによる先行偵察ではゾンビはいないようだし、集音装置から聞こえるゾンビの声も遠くからだ。


「この広場は電動カートの方向転換用なんでしょうね。今度は西に向かってトンネルが伸びています」


「そうなんだろうね。となると、この上は滑走路と格納庫の中間辺りかな。そんな場所なら爆弾も落とさないだろうからね」


 地下8ⅿほどのトンネルだからなぁ。

 250Kgクラスの爆弾の直撃なら耐えられるだろう。さすがに500Kgクラスになると数ⅿのクレーターが出来るらしいからねぇ。トンネルにも少しは影響が出そうだ。


「横に延びるトンネルがあります!」


 広場で一休みしていた俺達に、バーネストがドローンが送って来た画像を見て声を上げた。

 直ぐに彼の元に向い軍曹とモニターを眺めると、俺達が休んでいる広場と同じような広場の左手にトンネルが伸びている。


「まだ先にもトンネルは続いているんですが、このトンネルは支線という事なんでしょうか?」


「たぶんそうじゃないかな。だいぶゾンビの声も大きくなっているんだよなぁ。小型ドローンを左手のトンネルに向かって進ませて貰ってくれ」


 直ぐにドローンが広場から左手に延びるトンネルを進んでいく。

 その先には……。いたいた! かなりいるぞ。


 基地の航空写真を床に広げて、トンネルの位置関係を確認する。

 なるほどね……。予備の駐機場という事か。

 100m程の距離を置いて5か所作られている。

 その内の3か所には洗うための設備もあるようだ。相手を欺瞞するためには使えそうだな。近くに金属製の蓋まであるから、ここに間違いはないだろう。


「軍曹。見つけたよ! これが地下トンネルからの資材の搬入用設備だ」


「駐機場じゃないですか! 滑走路から結構離れているという事は、整備の順番待ちでしょうか」


 整備もしくは装備用なんだろうな。正規に使うのではなく、本来使用する場所が使えなくなった時の予備の予備という事なんだろう。

 駐機している戦闘機が置いて無ければ、爆撃されるとは思えないような場所だ。


「この支線の奥に資材の昇降台があるんだろうね。ひょっとしたら、この駐機場所自体が上下するかもしれないな」


 大掛かりな地下施設を作るぐらいだから、それぐらいはやりそうだ。

 

「先ずは、このゾンビを倒さないといけませんが……」


「数は数十はいるんじゃないか? それに統率型が1体いるんだよなぁ。出来れば静かに倒したいところだ。だけどこの状態ならスタングレネードを何本か使うことになりそうだから、西に向かうトンネルからゾンビの増援が来るだろうな」


「西を抑えて南の支線のゾンビを倒すという事ですか……。そうなると、この広場の西に柵を作ることになりますね。ベンチを運んで貰いましょう。それと増援が欲しいですね」


「グレネードランチャーを持った増援が良いね。予備戦力の投入をマスケット少尉に依頼してくれないか」


 軍曹が連絡を取り合っている間に、キャンピングカートに積んであったポットからコーヒーをシェラカップに注いで一休み。

 タバコに火を点け、見逃していることが無いかを再確認する。

 できればリトルジャックを西に延びるトンネルに仕掛けたいところだ。

 連絡が終わって俺に視線を向けた軍曹に、リトルジャックの設置を追加で依頼することにした。


 俺達の横をデュラハンが進んでいく。

 ジャックを仕掛けるだけなら汎用ドローンでも良いのだが、今日は持ってきていないからなぁ。

 明日は用意しておいた方が良さそうだ。移動手段はキャンピングカートがあるから、リトルジャックを3個程用意しておけるだろうし、汎用ドローンなら集音装置も付いている。


 攻撃準備が整うまでは、兵士達を休ませる。

 さすがに食事は出来ないが、コーヒーは飲めるし喫煙も禁止ではない。


 2本目のタバコを終えようとしている時に、デュラハンが戻ってきた。

 リトルジャックは、100m程先にある南に延びる支線のある広場に仕掛けてくれたらしい。

 俺達から離れて行くデュラハンを見ていると、トンネルの奥から増援の兵士達がやって来た。

 1個分隊の兵士の半数がM203 グレネードランチャー付きのM4カービンだ。戦士型がいるけど、まだ装甲を持たないからね。M4カービンで十分に対処できるだろう。


「これも使えるだろうと持参しました」


 分隊を率いる軍曹が2丁のグレネードランチャーを手渡してくれた。M79ではなくHK69だ。これなら邪魔にはならないから、このまま貰っておこう。


 メッセ―ジボードに簡単な図を描いて、兵士の配置を打ち合わせる。

 1個分隊が支線の奥に潜むゾンビを倒し、増援の1個分隊が西に延びるトンネルから向かって来るゾンビを阻止する。


「かなりシバタさんが使えますから、俺は広場で西からのゾンビに備えます。頭部破壊を確実に行ってくださいよ。それとシバタさんが告げるゾンビには両胸に1発ずつです」


「任せてください。場合によっては全てのゾンビの胸に撃ち込みます。先ずはグレネードを打ち込みます」


「こっちもそうなるんだろうな。最初から撃ち込んで良いのか?」


「こっちに向ってくるようなら、先ずはリトルジャックを使いましょう。こちらに来るゾンビを少しは削減できますよ」


 増援部隊の分隊長の確認に、ジャックを優先すると伝える。

 ジャックの周りに集まってくれると良いんだが、此方に気付くだろうなぁ。それは狙撃で倒して貰おう。


「それでは始めましょう! 先ずは西に延びるトンネルに柵を作ります」


「俺達が最初だな。……行くぞ!」


 兵士達が腰を上げる。

 運んできたベンチやテーブルを持って広場に向い西側に向かうトンネルに並べ始めた。ベンチだけでなく、どこからか丸太を運んできているんだよなぁ。丸太をベンチの前に転がしてくれたけど、あれでも十分にゾンビを足止めできるんだからねぇ。ゾンビが階段を苦手とする理由が今でも不思議に思える時がある。

 生物学研究所で、そんなゾンビの性質も調べているんだろうか?

 まだまだ分からいところが沢山あるのが、ゾンビと言うことになるんだろうな。


「柵の設置を終えたぞ!」


 既に兵士達までは一を終えているようだ。

 その言葉に、アルファ部隊を率いた軍曹が「出発!」と声をあげる。

 彼らの後方からブラボーチームが続いて行くんだが、全員がM203装備だ。部隊間で銃を交換したのだろう。後方からのグレネード弾の支援は問題なさそうだな。


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