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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-678 斜路を押えて地下指揮所に向かう


 トンネル内の様子をうかがっていたデュラハンを戻して、大きなトンネルへと続く斜路にテーブルやベンチを積み上げる。

 更にガラクタを積み上げたいところではあるんだが、地下指揮所までゾンビ掃討を終えれば直ぐに撤去だからなぁ。

 とりあえずゾンビの足止めが出来るだけに留めておけば十分だろう。

 キャンピングカートを利用してポリカーボネイトの盾を並べ、その後ろに兵士達が銃を構える。あまり緊張しないで斜路の先を見ていてくれれば十分だ。

 指揮を執る軍曹に一服しながら待機すれば良いと伝えたところで、俺達は地下指揮所へと足を運ぶ。

 バーネスト准尉には、ここで待機して貰い通信の中継をして貰うことにした。デュラハンの小型ドローンによる偵察画像も、バーネストが背負ったフレームパックのモニターで確認できる。

 30分毎に斜路の先のトンネルを確認するとのことだから、ゾンビが近づけばすぐに分かるだろう。


 地下指揮所へ続く通路はまっすぐな通路ではなく、途中で1度右に曲がっている。侵入者対策という事になるんだろうが、俺達にとっては迷惑な造りだ。

 集音装置から聞こえてくるゾンビの声を聞きながら、先ずは最初の兵員室の扉近くまで進む。

 シバタさんが扉の前に膝をつき集音装置を使って部屋の中のゾンビの状況を確認してメッセージボードに記載すると俺に手渡してくれた。

 今度は俺の番だな……。同じように扉の前で中の様子を探ると、メッセージボードの記載と比べてみる。


「俺も同じだ。軍曹!」


 軍曹が手渡されたメッセージボードを確認しながら、部下に短く指示を出す。

 部屋の中のゾンビは10体未満。2つのグループを作って、どちらも部屋の奥にいる。ゾンビは全て通常型だからスタングレネードを使わずに対処するようだ。


「カウントを始めるぞ! 3……2……1……ゴー!!」


 扉を蹴り開けると5人の兵士が中に飛び込んでいく。短く銃声が聞こえると直ぐに軍曹が部屋から出てきた。


「7体でした。通常型との事でしたが、頭部破壊が確実であることを確かめています」


「ご苦労さん。先に次の部屋を確認するよ。ブラボーチームが周辺を確認してくれるから心配はなさそうだ」


「そうですね。ではお願いします」


 シバタさん達を連れて次の部屋へと向かう。今度も兵員室だったな。


 昼近くになると、最後に地下指揮所が残っただけになる。

 ここまでに倒したゾンビの数は累計で40体程だが、統率型が1体混じっていた。部屋の中の統率型の位置まで分かるんだからシバタさんの技量は十分だ。

 次の地下施設は今までよりも部屋が大きいのだろう。ゾンビの数はシバタさんのメッセージボードには10体以上の集団が3か所も描かれていた。その内の一番奥の集団には統率型が2体と記載されている。


「たぶんこの奥の集団は指揮所内にあるもう1つの部屋だろうな。声の大きさがかなり小さい。部屋が広いという事も考えられるけど、地下だからねぇ、そんなに大きく作ることは無いだろうな」


「幹部の部屋もしくは通信室という事でしょうか?」


「そんな感じに思えるよ。奥にいるのが戦士型であればかなり面倒だけど、これなら先ずは手前の2つの集団、次に奥の集団と倒していけば良いんじゃないかな」


 軍曹が俺の言葉にうんうんと頷いている時だった。

 いきなり片耳だけ付けていたヘッドホンから、バーネストからの通信が入って来た。

 大声で「ゾンビの集団です!」と言うんだからなぁ。思わずヘッドホンを外してしまった。


「もう少し落ち着いて話して欲しい。先ずは深呼吸……。それで?」


『小型ドローンの偵察でトンネルの南から移動してくるゾンビの集団を確認しました。マスケット少尉が先ほどリトルジャックの作動を指示したところです。数は数十を超えています。種類はたぶん通常型だと推測します』


「了解! リトルジャックの作動後に小型ドローンを飛ばすはずだ。その時の集音装置の声を俺に送って欲しい。俺達の作戦中止の指示は出ていないようだから、引き続きゾンビの掃討を継続する。マスケットさんに無理は禁物とだけ伝えてくれないか?」


「了解しました。場合によっては救援要請の指示が出るかもしれません」


「その前にエメルダさんが救援部隊を送ってくれるだろうな。でも、その時は直ぐにそっちに向かうよ」


 通信を終えたところで軍曹に顔を向けると、かなり深刻そうな表情で俺を見てるんだよなぁ。

 地下通路だから逃走経路が限られているとはいっても、ゾンビの数が100体にも満たないなら十分にあの斜路で食い止められるはずだ。

 

「ラッシュが始まったわけではなさそうだから、このまま任務を継続しよう。それにこの部屋が最後だからね」


「そうですね。それでは始めますか。今度はアルファとブラボーを使います。こちらをアルファが対処して、こっちがブラボー……、アルファに奥のゾンビを任せます」


「奥には統率型が2体いる。奥のゾンビには両胸にも1発ずつ撃ちこんで欲しい」


「了解です!」


 敵の位置がある程度明確なら、余分な指示を出さずに軍曹に任せる方が確実だ。

 歴戦で鍛え上げられた戦闘勘なら古参軍曹が一番に違いない。

 部屋に飛び込んで行った兵士達の銃声が途絶えたところで指揮所に入って状況を見る。

 やはりもう1つ部屋があったようだな。バン! と音が聞こえると兵士が部屋に飛び込み再び銃声が聞こえて来た。

 直ぐに終わったけど、俺達が一緒ならスタングレネードを使わずに済んだんだろうな。

 その辺りの判断は軍曹に任せよう。常に俺達がいるとは限らないからね。


「頭部破壊を確認しました。あの奥の部屋の中にいたゾンビ5体については全て両胸にも1発ずつ撃ちこんであります」


「了解! ……これで指揮所まで終わったから、ここで休憩したいところだね。とは言えあの通信もあったことだし、俺だけ先に斜路に向かうよ。軍曹達は小休止を取ってくれ。状況的に不味いと思ったらすぐに伝えるよ」


「了解です。今回は温い狩りでしたが、緊張感がありましたからね。少し兵の緊張を解いてあげましょう」


 軍曹の言葉に頷くと、足早に斜路に向かう。

 まだブザーが鳴っているだろうから集音装置の声を中継するという通信も来ないんだが、あんな通信を送ったなら定期的に状況報告をして欲しいところではあるんだよね。


「状況は?」


 テーブルに身を潜めて、斜路の奥をジッと眺めていたマスケットさんに問いかけた。

 隣の床に座り込んだ俺に顔を向けると、斜路の奥に腕を伸ばす。


「たまに姿を現します。リトルジャックはまだ作動中です……」


 今は見えないみたいだな。近くでモニターを見ていたバーネストを手招きして近々のドローンが撮影した画像を見せて貰う。

 トンネルの南北共にゾンビがいるのだが、確かに南の方が数が多い。100体を越えているようにも見えるな。それに比べて北方向は、数体のゾンビが遠くに見えるだけだ。


「地下指揮所までのゾンビの掃討を終えましたから、今度は斜路の先にあるトンネルの掃討です。少なくとも南側については確実に出入り口を見つけないといけません。デュラハンを使うにしても、ゾンビが多いと面倒ですからね」


 ここまでブザーの音が良く聞こえてくる。

 マスケットさんの話では、後5分程度吹鳴するとのことだ。

 今の所、慌てる状況ではない。

 マスケットさんと相談して、コーヒーを沸してカロリーバーの昼食を取ることにした。

 腹が減っては……、なんて言葉もあるぐらいだ。

 大きなトンネルだからなぁ。先ずは腹ごしらえをして準備を整えよう。


 ブザーが停止すると小型ドローンを用いて、リトルジャックに集まって来たゾンビの状況を確認する。

 フレームパックの背に取り付けたモニターを眺めていると、斜路を左に曲った途端にゾンビの姿が映し出される。


「100体を越えているように見えるんですが……」


「かなりのゾンビがトンネルの南にいたという事なんだろうね。それに比べて北のゾンビはあまり動いていないようだ。前の画像の位置からそれほど近づいていないように見える……」


 ゾンビのテリトリーという事になるんだろうか?

 そう考えると、基地周辺の出入り口を縄張りにしているゾンビ、トンネルの中心部を縄張りにしているゾンビ、北に存在する地下施設を縄張りにしているゾンビの3つの群れがいるという事になりそうだ。

 決め付けは良くないけど、そう考えて対処するべきだろうな。

 トンネルの南の出入り口に潜むゾンビを掃討する時でもトンネル中央部のゾンビの群れは案外俺達の行動を無視してくれる可能性がありそうだ。

 とは言っても、北側からやってくるゾンビの群れを一時的に足止めする措置は必要になるだろう。


 さて、集まったゾンビは通常型だけかな? 確認にためにデュラハンが搭載している小型ドローンを飛ばして貰う。

 やはり統率型はいないな。相変わらず遠くから聞こえてくるだけだ。戦士型の姿は見えないけど、統率型と同じようにトンネルの南方から声が聞こえてくる。

 ドローンを戻してもらい、リトルジャックの炸裂を待つ。

 炸裂後に投入するドローンはデュラハンのドローンではなく別に持参した映像のみのドローンだ。


「ドローンで状況を確認次第、リトルジャック周辺のゾンビを片付けましょう。とはいえ、まだ数が多いですよ」


「そのためのグレネードランチャー、それに手榴弾です。距離を取って数を減らしましょう」


 マスケットさんの言葉に小さく頷いた。

 ゾンビとの交戦は距離を取るのが一番だからね。もっとも確実に頭部破壊を行うわけではないから、ある程度対処出来たところで頭部に銃弾を撃ち込む必要はあるだろう。


「炸裂10秒前!」


 バーネストの鋭い声に、耳を塞ぐ。

 ドォン! というよりバァン! だな。

 直ぐにドローンが飛び立ったのを見て、モニターに皆の視線が集まる。

 やはり炸薬量に問題があるのかもしれない。それでもクレイモアの威力はかなり高いようだ。かなりの数のゾンビが倒れているんだが、それに群がり共食いするゾンビでどれぐらい倒したのか良く分からないんだよねぇ……。北のゾンビは、ゆっくりとこちらに3体歩いてくるのが見える。


「斜路の出口付近にゾンビはいませんね。これならグレネード弾で追い打ちすることが出来ます」


「北の3体は?」


「距離が離れていますが、あれぐらいなら狙撃が可能です。北に3人、南に5人向かわせます!」


 グレネード弾を連射出来ないのが残念なところだ。それでも5人が2発は発射できるとのことだから、モニターで状況を見守ろう。


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