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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-648 マリアンさんお手製のドーナツを頂きながら


「ご苦労様としか言えないわね。さすがにサミー君でもこの状況は予想できなかったようだけど、原因を考察してくれただけでもありがたいわ。それでニコルからあの問い合わせが来たという事になるんでしょうけど、まだ本部から回答が来ないんだから困ったものね」


 マリアンさんとしては、次の行動をすでに決めたという事なのかな?

 さすがにこのまま放置するとは思えないから、やはり地下に潜むゾンビを根絶やしにするという事になるんだろうな。


「現在分かっているのは、地下に設けた軍用発電所の配置図と大陸間弾道弾の迎撃ミサイル基地の配置図だけなの。宗教団体のコロニーについては衛星画像から確認できる建物の使用目的が分かるだけだったわ。ドローンの画像から見る限り地下施設があることは間違いなさそうだけど、宗教団体の施設についての立ち入り調査は案外難しいから、州の方でも確認が出来なかったんでしょうね」


「サミー大尉はかなり大規模な施設だと推測しているようです。迎撃ミサイル基地の地下施設と繋がっている可能性を指摘しています」


「コロニーとミサイル基地、それに地下発電所。この3つの施設だけでもかなりの大きさになるでしょうね。更に送電用の大型トレンチも厄介な存在だわ。ニューヨークやラスベガスの例もあるから、ここでも新たなゾンビが作られている可能性もありそうね」


「地下の調査となれば、使えるドローンは限られています。早めに移動して調査を開始しては?」


「あまり時間を掛けたないのよねぇ。そこで相談という事になるんだけど……」


 宗教団体の地上施設を全て破壊するのは納得できるんだけど、その後で地下発電所に迎撃ミサイル基地を爆破するのは簡単ではなさそうだな。


「バンカーバスターを使用したいところだけど、施設が地下で大きく広がっているのよねぇ。数十発も打ち込めばそれなりに効果があるんでしょうけど、ここは地下に爆薬を仕掛けて破壊したいわ。その過程でゾンビの状況が見えてくると思うんだけど……」


「ニューヨークではまさにそうなるんでしょうが、その為の事前テストとするなら危険性があり過ぎます。爆薬を仕掛ける兵士達の生還が見込めないようでは作戦とはいえませんぞ!」


 かなりキツイ口調でマリアンさんに具申しているけど、当人はどこ吹く風なんだよなぁ。

 

「さすがに私だって、明日出掛けて爆薬を仕掛けるような命令は出さないわよ。その為に貴方達を呼んだんだから……」


 どうやって人的被害を出さずに任務を遂行するかを考えろという事なんだろう。

 目的は明確だ。問題はその手順という事になるんだろう。

 さて、俺ならどうする……。

 さすがに最初から部隊を送るのは無理だろう。地下に潜むゾンビを地上に誘い出して邪魔にならない場所まで移動させるのが第一段階という事になるのかな。

 次に、どれほど地下に残っているかを確認したいところだ。

 これも兵士を送ることが出来ないから、ドローンという事になるんだろう。

 その状況を見て、再度誘い出すかそれとも兵士を突入させるかを判断すれば良い。

 ところで、爆破に必要な爆薬の運搬手段も考えないといけないだろうな。更に爆破のタイミングをどう設定するかも問題だ。


「サミーの事だから、先ずは誘い出すんでしょう? 誘い出したならこれだけの戦力があるんだから殲滅も出来そうね」


 オリーさんがもう1つのモニターに衛星画像を映し出してどこに誘うか考えているようだ。

 ここまでは、多分全員同じ考えなんだろうな。マリアンさんがレーザーポインターを使って、ニコルさんと話をしているのは、航空支援を受けて一気に殲滅しようなんて考えているに違いない。


「軍の2つの施設の兵面積は野球場よりもありそうですね。ミサイルトレーラーが数台だけなら、これほどの広さは必要なかったでしょうに」


「たぶん、完成時には今の倍は車両があったんじゃないかしら。社労のメンテナンススペースもいるでしょうし、保守を含めた駐屯兵の数はかなり多かったはずよ。地下発電所だって、それが必要になった時に安定運転を行うための消耗品等の保管スペースもあったと思うわ。さすがに発電用水力タービンまでは予備は無かったんでしょうけどね。もう1つ気になるのはそれらの送電用トレンチなんだけど、多目的トレンチかもしれないわね」


「米国内の軍用インフラ用ではあるのでしょうが……。至急、タイプを調べます」


 何のタイプだと首を傾げている俺に、リッツさんがトレンチ断面の大きさで3種類あると教えてくれた。


「一番大きな代物は直径4mもあるんだ。さすがにそれは使っていないだろうが、タイプⅡ型でも直径3mはあるんだよ。断面は円形なんだが左右に棚が作られている。その棚に電力ケーブルや信号ケーブルを敷設してあるんだ。中央は通路空間として歩けるようになっているよ」


 トレンチというより地下道と言うべきなんじゃないかな。

 俺が想像していた代物とはかなり違っていた。


「一定距離毎に保守用の建物が作られているんだが、隠匿性を高めたいということで、大学の研究施設に偽装してあると聞いたことがある。確か、どこかの大学が行っていた大平原計画の看板を出していたはずだ」


 大平原計画を調べて見たら、アメリカ中央部に流星観測用のカメラを多数設置して落ちてくる隕石を回収するという大掛かりな計画だったらしい。

 定期的にカメラのフィルムを交換することになるから、少し大きなトラックが施設に出入りしていても誰も不思議に思わないだろう。

 大学の先生たちは変わった連中が多いというのが、アメリカ人の一般的な認識みたいだからなぁ。


「それで、トレンチは何処を走っているのかしら?」


「国道81号線沿いに北上し、州道44号線沿いに西に向かって、ラピッドシティのエルスワース空軍基地まで伸びています」


「空軍基地からここまで地下都連を使って移動できるってこと?」


「セキュリティ対策はトレンチに入る前で行われていますから、トレンチ内の移動に制限がありません」


 リッツさんの言葉に、珍しくマリアンさんが溜息を吐いた。

 地下を通って移動するような事態は、俺達なら行わないだろうけどねぇ。ゾンビはどうなんだろう? マリアンさんは可能性があるなら起こりえると考える人だからなぁ。


「ゾンビを駆逐する過程で、インフラをどこまで破壊するかについては別途検討が必要ね。私は全て破壊しても良いと思うんだけど……」


 マリアンさんの呟きに、2人の幕僚が溜息を吐いている。

 せっかく作ったんだから利用できるものは利用したいということなんだろうけど、ゾンビがそれらの維持管理システム施設に住み着いているとなるとなぁ……。


「やはり本部長と大統領の判断ということになるんでしょうか?」


「そうねぇ……。本部長では荷が重いかもしれないわ。大統領の判断を本部長から仰ぐことになるのかしら」


 そうなると、直ぐに結論が出るとも思えないんだよなぁ。

 明日からの作戦に影響するんだから、先ずはここをどうするかについて考えて貰わないといけないだろう。


「本部には私の方から連絡するわ。そうなると、直ぐに攻撃に移れないのが残念ね。ダム湖の南岸にある発電所を奪回しながら返事を待つことにしましょう」


「それなら……」


 リッツさんが直ぐに作戦計画をモニターに漆出して説明してくれた。

 指揮官はレーヴァさんのようだな。ファウンドドッグとデストロイ部隊合わせて1個小隊で攻略する計画だ。


「それほど大きな建物ではありません。ダムの堰堤を超えるゾンビにはデストロイ部隊の2個分隊を派遣することで十分に思えます」

「追加することはないかしら?」


「何時でも出動可能な体制で待機します」


 俺の言葉にリッツさんが頷いてくれた。リッツさんの計画で十分に思えるけど、控えは必要だろう。

 俺達はドローンを多用するけど、建屋内での戦闘実績は沢山持っている。


「結構! それで行きましょう。リッツ、後はよろしくね。……作戦開始は明日で良いでしょう。砲撃は一応終えているようだけど、本部にヤンクトン市とダム湖北岸の宗教団体のコロニーへの爆撃を依頼して頂戴」


「宗教団体の施設にもですか?」


「住んでいるのはゾンビでしょう。かつての宗教遺物だから問題はないと思うけど」


 宗教遺物と言うと、世界遺産に思えるんだけどなぁ。

 でも施設を利用する信者はいないだろうから、破壊しても問題は無さそうだな。

 だけど、案外マリアンさんは策士なんだよなぁ。本部に依頼するとなれば、爆撃の最終判断は本部長だからね。宗教団体から批難されるとしたら本部長になりそうだな。


「さて、今後の話はここで終わり。リッツ、上手く作戦に纏めて頂戴。それで、オリー博士とサミー君にはちょっと残って欲しいのよねぇ」


 思わずオリーさんと顔を見合わせてしまった。

 きっと厄介な話なんだろうな。


 場所を移して指揮所の窓際にあるソファーセットでの懇談ということだ。

 文字通りの懇談なら良いんだけどなぁ。

 従兵見習いのナタリーが改めてコーヒーを運んでくれた。最後にテーブルの真ん中にドーナツが山になった皿を置いてくれたから、笑みが浮かぶんだよねぇ。


「サミー君に作ってあげたの。私に家では作っても誰も食べないのよねぇ。せっかくお祖母様から教えて貰ったんだけど……」


「遠慮なく頂きます!」


 1つ手に取って、一口パクリ……。甘さ控えめだけど、結構濃厚だ。上手くバターが手に入ったんだろうか? 周りの粉砂糖にシナモンが入っているのかな? 屋台で売り出したなら結構儲かりそうだ。


 俺を実地見ていたマリアンさんに段々と笑みが広がるのは俺の笑みが映ったに違いない。俺が美味しく頂いているのを見て、オリーさんが手を伸ばしているけど、さてオリーさんにはどうかな?


「出来ればレディさんに教えて欲しいところです。作戦遂行中でもこれは食べたいですね」


「ありがとう。そうね。再度教えようかしら。学生時代に何度も教えたんだけど……。どうも不器用なのよねぇ」


 レシピ通りに作れば良いと思うんだけどなぁ。

 銃の分解清掃ができるんだから、レシピ通りに調理するのは容易に思えるんだけどなぁ。


「さて、食べながら考えてくれない。さすがにインフラを破壊するのは最後の選択にしたいわ。それに破壊するだけでも資材が大量に必要よねぇ。上手い手はないかしら? 人海戦術という手もありそうだけど、かなりの犠牲を覚悟することになるでしょうね」


 この場で出来る簡易な対処方法ということなんだろうな。

 宗教団体の施設と地下の発電所はさすがに無理だが、地下のトレンチ網なら何とかなるんじゃないかな。


「マリアンさんが簡易な対処法を使いたいのは、地下トレンチのほうですよね? さすがに宗教団体と発電所の地下は兵士を送っての掃討が一番容易に思えます」


「それで良いわ。トレンチの距離が長いのが問題ね。途中に保守用の開口部はあるんでしょうけど、全て建物内ということだから、延々と地下を進みながらゾンビを掃討するのは兵士の神経を著しく擦り減らしかねない。それは士気の低下にも繋がるし、場合によっては全滅してしまうでしょうね」


 だろうなぁ。直径3m程のトンネルを延々と進んでの掃討だからねぇ。

 途中で睡眠もとらないといけないだろうし、食事だって必要だ。

 口で言うことは簡単だけど、実際に人が入っての掃討は不可能に思えてきた。


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