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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-643 ゾンビの隠れる場所は何処だ


 20時に再度ジャックを仕掛ける。場所は昼間に仕掛けた位置よりも北に500m程離れた十字路だ。

 作動したジャックに集まるゾンビは、昼間よりも多くなっている。

 とはいえ戦士型を見付けることが出来ないから、戦士型はジッと建物の中に潜んでいるに違いない。やはり明日以降の砲撃は是非とも必要になりそうだな。


「2万体を予想していたんだが……、これを見るともっと多そうに思えてくる」


「今までの例では、昼と夜ではそれほど差が無かったんですけどねぇ……。夜に仕掛けるのは昼とは異なるゾンビの存在を確認する為だったんですが」


 モニターに映し出されるゾンビの群れを見ていると、何度も溜息が出る。

 これは想定外も良いところだ。

 ここに来る途中の町の状況から従来の推測よりもゾンビの数が多いとは予想していたけど、その推測を遥かに上回っている。


「橋には2重の柵を設けてはいるが、一度に移動してきたなら容易に突破されるだろう」


「時間が掛かりますよ。市街からの移動距離と柵による停滞を考慮すれば、ラッシュが起こっても30分以上の余裕時間があります。ラッシュを確認してからの移動でも安全を担保できるでしょう」


「レーヴァ大尉達が何もしないで後退することは無さそうだな」


 笑みを浮かべて頷いてくれたんだが、視線はモニターに向かったままだ。


「ブザー停止まで、あと1分!」


 ジュリーさんの言葉に小さく頷く。

 ドローンから送られてくる音声をヘッドホンとスペクトラムアナライザーの準備が終わっていることを確認していると、シグさんがゾンビの動きが変化したと教えてくれた。

 ブザーが停まったということなんだろう。直ぐにヘッドホンでゾンビの声を聞き取り始めると同時に、テーブルに乗せたノートパソコンの音声スペクトルの画像に視線を向ける。


「統率型がいるようです。ハンタードローンなら爆殺は容易でしょうが、直ぐにジャックが炸裂するでしょうからそれで十分でしょう。戦士型は……、声は小さく聞こえるんですが、今までとはちょっと違っているようです」


「戦士型と言っても、攻撃ではなく防衛に主眼を置いているという事かもしれんな。サミーの出会った戦士型が全て攻撃的であったことを考えると、やはり進化の方向が変わっているということになるのかもしれん」


 防衛特化の戦士という事か……。向こうから出てこないとなれば倒すのが面倒にならないか? 建物のゾンビを掃討する際に出会ってしまったなら、無事では済まされない気がするなぁ。


 4つ目のジャックが炸裂したところで、テキサスのマリアンさんに状況報告をする。

 シグさんが機会的に報告しているんだけど、相手は通信兵なのかな? たまに相手から確認が入っているようだ。


『状況報告終了を了解。1時間後にこちらから再度連絡を入れます!』


『作戦の修正の有無を知らせてくれるのだろう。了解だ!』


 通信が終わると地図を広げてジッと眺めている。ジャックの位置とそこで確認したゾンビの概数が記載されているんだけど、今までの例なら数万体のゾンビがいるようにも思えるんだよなぁ。

 地図で見る限りそんな数がいるとは思えないんだが……。


「どこかに隠れていると考えるのが常識ではあるのだが」


「少なくとも建物では無さそうですね。ゾンビの動きを考えると隠れている場所はそれほど離れてはいないと思いますよ。とはいっても夜間ですからねぇ。市街地の北まではどうにかドローンでの偵察は可能でしょうが、その先となると行動半径を超えそうです」


 とは言ってみたものの、そんな場所があるんだろうか?

「トンネルにシェルター、大規模下水道施設辺りになるんだろうが、ここはサウスダコダとネブラスカの州境。大平原の田舎も良いところだ」


「軍の地下ミサイル基地辺りはどうなんでしょう?」


「かつては地下発射基地が大平原に沢山あったが、今では潜水艦発射ミサイルに変わってしまったからなぁ。だが、数個のミサイルサイロとコントロール室ではゾンビの収容はそれほど出来んだろう」


「最後の可能性は、民間防衛組織が作ったシェルターでしょうね。俺達が暮らしていた山小屋にはトンネルが作られていました。車両数台と資材をかなり備蓄出来ました」


「山小屋で一度見学させて貰った。ウイル殿の話では十数家族程度の小規模な組織だったらしいが、よくもあのようなトンネルを作ったものだ。だが、ウイル殿でさえあのような施設を持っていたという事であるなら、民間防衛組織もバカにはできんな。それにそのような組織が不足の事態に備えるとなれば、都会ではなく田舎ということになるだろうし、地図に示されることもないだろう」


 それなら、ウイル小父さんに一度確認した方が良いのかもしれない。

 ジュリーさんに頼んで、デンバー空港のウイル小父さんにこの近くにシェルターを持っていそうな民間防衛組織の情報を教えて貰うことにした。

 さすがにウイル小父さんにも分からない組織があるみたいで、山小屋のライルお爺さんにも確認して貰うとの返事が直ぐに返ってきた。


「ウイル小父さんの話では、少なくとも各州に2つはあったということです。ウイル小父さん達は元海兵隊の連中で組織を作り連携を図っていたということですが、活動場所がロッキー山脈ですからねぇ……」


「州を跨いでそのような組織が沢山あったということだな。当然、資材を備蓄していただろうし、避難した隊員家族を収容するシェルターが作られていた筈だ。手持ちのドローンでは偵察範囲が狭いからなぁ。広域偵察ドローンを運んで貰った方が良いのかもしれない」


「少なくとも10km圏内にある可能性が高いですね。マリアンさん経由で運んで貰いましょう」


 1時間程経過して、テキサスから返信が届く。

 第2陣の出発は予定通りという事らしい。シグさんが広域偵察ドローンを運んで貰えるよう依頼をすると、ラングレーに搭載している広域偵察ドローンと操縦者を2陣のトラックで運んで来るとのことだった。


「オリー博士が、だいぶサミーの推測を評価しているようだぞ。メールを送っているとのことだからよく読んでおくことだな」


 シグさんの言葉に、メールを開くと……。届いているな。

 文面は、体に気を付ける様にとのことだけど、添付してある書類の方が問題だ。

 早速開いてみると、いくつかの疑問点に対する生物学研究所の博士達の見解も入っていた。これはゆっくりと読む必要がありそうだ。


「やはり都市規模に見合ったゾンビの数ではないことに、皆が注目しているようですね。俺は最初にゾンビが東に進んだ時の名残だと思っているんですが、必ずしもそうでは無さそうです」


 現状に見合う推論がいくつか書かれているんだが、さすがにゾンビが子孫を増やしたという推測は無いんじゃないかな。

 もしそうだとするなら、精々3割増し程度だろう。数倍以上に膨れ上がっている状況の推測は案外難しいんだろうな。


「サミーの推測は広域偵察ドローンである程度分かるのだろうか?」

「必ずしもですよ。でも、そんなシェルターが実在したならゾンビの出入りはあるでしょうから、丹念に探れば結論が出ると思っています」


「なるほどな……。だが、可能性があるなら、1つずつ潰せばやがて真相に辿り付けるだろう」


 長い目で見るということかな?

 出来れば数日で原因を掴みたいところではあるんだけどねぇ。


 寝る前のコーヒーを楽しみながら、シグさんがレーヴァさんに明日の予定に変更が無いことを告げてくれた。

 女性達がキャンピングカーゴに移動するのを眺めながらキャビンにハンモックを吊るす。

 急に連絡が来ても、俺がいるから大丈夫だろう。

 ハンモックに入る前に、周囲のゾンビの声を確認したけど、やはり静かなものだ。

 

 翌朝は少し早めの朝食を取る。

 エディ達は眠そうだけど、無理やり起こしたからなぁ。苦いコーヒーを飲みながら朝食のレーションを食べているんだけど、朝からこってりした食事は俺には合わないんだよね。トーストにコーヒーでも良いぐらいだ。


「既にデストロイ部隊は出発したはずだから、遅くとも0930時前には到着するだろう」


「まだ燻ってはいるが、だいぶ見通しは良くなったぞ。橋の手前に展開するんだったな。弾着観測も自前で行うとのことだから、私の部隊は橋の柵で状況を見守るよ。ラッシュが起きたならグレネード弾を乱射して戻るつもりだ」


「デストロイからの1個分隊には周辺偵察を指示してある。こちらでもドローンに寄る偵察は常時行っているから必要はそれほどでもないのだが」


 シグさんの言葉の最後は尻つぼみになっている。

 確かに老婆心とも思える監視だからなぁ。だが、ゾンビが橋向こうにたんまりと集まっている状況を考えると誰もが納得できるんだよなぁ。


「私達は、ドローンで全体の状況を把握するということですね。統率狩りは行わないのでしょうか?」


 かなりいるのが分っているからなぁ。だけど、砲撃で倒せるかもしれないから準備だけで十分だろうと伝えておく。

 時計を見ると、まだ8時を少し過ぎたところだ。

 デストロイ部隊が到着するまでにはもう少し間がありそうだな。テントを出て端に向って歩き出す。

 橋の中ほどに作った柵の手前に2両のストライカーが停まっていた。

 数人が外に出て北を眺めているようだ。

 砲弾を沢山撃ち込むからなぁ。砲撃の音に気付いて橋を渡って来るゾンビが出てくるかもしれないな。


「ヨォ! まだ変化はないようだ」


 俺の姿を見たレーヴァさんが部下との話を止めて声を掛けてきた。


「お早うございます。砲撃は10時以降になるでしょう。まだ橋向こうにグレネードランチャーを構えるのは早くないですか」


「そうなんだが、部下達が待ち望んでいることは確かだな」


 俺達の話に、柵に取り付いていた兵士がこちらに顔を向けて笑みを浮かべている。

 楽しみに待っているという感じに見えるんだけど、できれば来て欲しくはないんだよなぁ。


「場合によってはラッシュが起こるかもしれません」


「その覚悟は出来ているし、死ぬつもりはないぞ。その時にはクレイモアを炸裂させて、この柵代わりの車に火を点けての撤退だ。撤退の時間稼ぎはしっかりと出来ているよ」


 それなら安心だな。集音装置から聞こえるゾンビの声小さい物ばかりだ。少なくとも橋向こうに見える林にはいないみたいだな。


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