表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
614/688

H-614 やはり進化種が残っている


 日中にジャックを作動させると、集まってくるゾンビは全て通常型だった。

 ジャックが炸裂した後、10分間の静穏時間にドローンの集音装置から聞こえる音には、小さく統率型が混じるんだけどなぁ。やはり上の連中ともなると人間と同じで現場には出なくなるんだろうか?

 ジュリーさんが指導しながら行っている統率狩りの成果は、夕食前で一段落したんだが倒した数は2体だけだった。統率型を間引いて置けば、大規模なラッシュには繋がらない。倒せるものは倒しておこう。


「2200時に、159号線とクラーク・ロードのジャンクションまで移動して、595号線と159号線のジャンクション付近にジャックを仕掛けます。595号線に沿って1kmほど距離を取って2個仕掛けて、集まるゾンビと周辺のゾンビの声を確認しますよ」


「全員で出掛けることもなさそうだな。我等の2台とブラッド中尉の乗るLAVで十分だろう。この場で待機する部隊はヴァイス軍曹に任せるぞ。周辺のゾンビの声に注意して欲しい。それと危険であるなら159を西に向かってくれ」


「了解です。全員がスターライトスコープを装備していますから、夜間の戦闘も可能ですが、ゾンビの数が多いようなら、直ぐに西に向かいます」


「可能性としては低いけど、ゾンビの数が100体を超えるようであれば統率型の指揮も考えられる。どこまでも追って来るぞ。ゾンビの声には十分に注意して欲しい」


 俺の忠告に、軍曹が大きく頷いてくれた。

 日本人がいるからね。俺達が帰るまでは頑張って貰おう。


 予定時刻になったところで、ブラッドさん達の乗るLAV-25を先頭に3両でジャンクションに向かう。

 15分も経たずにジャンクションの真ん中で車を停めると、直ぐにジャックを抱えたドローンが飛立って行く。


 時間を掛けずにジャックを作動させることにしたから、2230時にはブザーが鳴り始めるだろう。

 現金輸送車から外に出て、咥えタバコで集音装置の感度を上げてゾンビの声を聴く。

 やはり夜になると通常型以外のゾンビが動き始めるようだ。

 コオロギの声の後ろにかなりの数のセミの声がするし、士官型の特徴的なキツツキの音まで聞こえてくる。

 となると……。可聴領域を重低音領域に変えると、牛の鳴き声のような音が小さく聞こえてきた。

 伝令型がまだいるみたいだ。そうなると、10万体のゾンビの一斉行動もあり得るということになる。

 最終日の釣り出しには都合が良いことは確かだけど、危険性はかなりありそうだな。


 一服を終えて、キャビンに戻ると直ぐにシグさんが蓋の付いたコーヒーカップを渡してくれた。

 一口飲んでみると、それほど苦くは無いし、少し甘味もあるんだよね。

 笑みを浮かべてシグさんに礼を言うと、どうやらレディさんから俺の好みをしっかりと教えられたらしい。


「私でもそんなコーヒーは飲まないが、人それぞれに好みがあることは理解しているつもりだ。それで、どうだった?」


「昼とは全く異なりますね。進化種の声がかなり聞こえてきましたよ。昨年出会った種類が殆どいる感じですね。そうなると、ステルス型が俺達を窺っている可能性も出てきます。軍曹に連絡して、ステルスゾンビが近付く可能性があることを伝えてください。集音装置の周波数帯域を設定して、音声映像装置を用いればステルスゾンビの位置が分かります。200m以内ならグレネード弾で倒せるでしょう」


「了解だ。直ぐに伝えるぞ!」


 ここは俺がたまに外に出て確認すれば十分だろう。陸上艦隊の専用車両があればキャビン内でも確認できるんだけどなぁ……。


 ジャックが炸裂する直前までに集まって来たゾンビは、昼間の5割増しぐらいだな。2倍までには膨らんでいないし、昨年仕掛けた時には100体を超えていたからねぇ。

 やはり半数以下にゾンビの数が減っていることは間違いなさそうだ。

 スターライトスコープで炸裂前後の画像を撮影し、炸裂後には残ったゾンビの声を確認する。

 統率型の声がするけど、特徴的なラッシュ前の短い断続するような声ではない。

 やはりこれぐらいではラッシュは起こらないようだ。

 炸裂後に現場に集まってくるゾンビもいないようだから、早々に立ち去ることにしよう。


 24時前にヴァイスさん達が待機する場所に戻ると、直ぐに士官達を集めて情報共有を行う。

 昼と違って、夜は結構冷えるんだよなぁ。

 どこからか見付けてきた枯木で焚火を作っていたから、その周りにベンチを運んで腰を下ろす。

 確認できた状況と明日の予定を簡単に説明すると、後はコーヒーを飲みながらの雑談だ。


「あれだけ去年叩いたんですけどねぇ……」


「まぁ、それだけゾンビの数が多かったということなんだろうなぁ。だが最終日に上手く釣りだせたなら、ラスベガスのゾンビがかなり減ることは間違いなさそうだ。もう1度今回と似たような作戦を行えば2線の兵士でもラスベガスを掃討出来そうに思えるぞ」


「実行する前には、戦略爆撃をしたいところですね。建物に潜むゾンビの掃討は結構危険ですよ」


「あれからケイジも使えるようになってきたぞ。今では突入班に何時も同行している。最初はケイジに2人護衛を付けていたんだが、この頃はそれも必要ないぐらいだ。だが何時も古参を1人付けている」


 それだけ重要視しているということなんだろう。

 そんな待遇に驕るような人物では困るけど、ケイジさんは何時も仲間達との協調性を重視しているようだ。案外俺よりも軍隊に適性があるんじゃないかな。


「そこまで鍛えることが出来れば良いのですが、私の所の女性兵士はまだその域には達していませんからな。とはいえ接近を事前に知らせて貰えるだけでも助かります」


「あのノイズを長く聞いていられるんだからなぁ。最初それを知った時には、サミーが宇宙人に思えたよ。それにあの動きだからなぁ……。さすがにケイジに真似をするようには言えないな」


「グリズリーをナイフで倒したという逸話は、ペンデルトンで評判でした。やはり海兵隊たるもの、それぐらいの心意気が欲しいということで訓練が少しきつくなりましたからね」


 ヴァイスさんの言葉に、焚火を囲んだ連中が笑い声を上げる。

 まったく困った話だな。早く忘れて欲しいところなんだけどなぁ。


「さて最後に明日の予定だが、場合によっては野営地を11号線ではなく15号線を北東に進んだ場所に変えるかもしれん。ドローンの操縦にだいぶ慣れたようだから、設置数を増やすことも可能だろう」


「今夜のように夜も仕掛けるのだろう? まったく町をこれほど大きく作らずとも良かったのではと考えてしまうなぁ」


「俺達の家では狭すぎると思いますよ。国土が大きいんですから、家の敷地や間取りも広いですからね。日本人が都市計画をしたなら、半分ぐらいになってしまうでしょうね」


 インフラ整備を考えると、コンパクトに作りたいところではあるんだけどねぇ。

 その辺りは案外おおらかなんだよなぁ。


 明日の作戦開始時刻を確認したところで、御開きにする。

 寝る前に輪になった車列の外を歩いて、ゾンビが近くにいないことを確認しておこう。

 咥えタバコで外を歩いていると、周囲の見張りをしている兵士達が声を掛けてくれる。

 その度に近くにゾンビの気配が無いことを告げると、笑みを浮かべて頷いてくれるんだよね。


 車列を一蹴したところで現金輸送車に戻り、バンの側面についていたフックを利用してハンモックを吊る。キャビン内は女性達だからなぁ。さすがに中で眠るのはねぇ……。

 エディ達はピックアップトラックの荷台で寝ているようだ。

 皆寝る場所を見付けるのが上手いんだよなぁ。トラックのキャビンの横にもう1枚板を取り付ければ、横に広げて天幕を張れそうな気がするなぁ。

 後でオルバンさんに相談してみよう。此処では無理だけど、俺達の乗るフクスなら案外出来そうに思えるんだよね。


 ラスベガスに下りて3日目の朝食はレーションで簡単に済ませる。

 9時前に野営地を出発して、最初の3個のジャックを仕掛け終えたのは10時すこし前だった。最初のジャックを作動させた後は1時間毎に3つずつ作動させていく。

 今日だけで20個近いジャックになるんだが、今朝の7時前にチヌーク1機が補給してくれたからなぁ。

 だけど、ジャックよりも水の補給を皆がありがたがっているんだよねぇ。確かに暑いことは間違いないんだけど……。


「サミー‼ ちょっと確認してくれない? ここにステルスゾンビの反応があるんだけど……」


 ジュリーさんの声に驚いて、20インチのモニターにドローンからの映像を映して貰った。

 確かに赤い輝点が、何もないところに4つあるんだよなぁ。

 住宅の中では無いし、周囲に隠れるような場所は何処にも見当たらない。


「これがステルスゾンビという事か! まったくカメラには映らないんだな」


「上手く周囲の色に溶け込むように体色を変えるんです。カメレオンよりも高度な偽装ですよねぇ。位置は飛行場近くですね。ジャックは仕掛けてはない筈ですから、爆殺しましょう」


「了解! 彼女達もだいぶうまくなってきたわ。さすがに急降下爆撃はしないけどね」


 それは個人の趣味もあるんじゃないかな。

 ジュリーさん達は得意だからなぁ。


 彼女達の実戦を見守っていると、81mm迫撃砲弾2発で4体を上手く倒してくれた。

 爆撃後の音声映像装置の画面には輝点がなくなったからね。

 これで面倒なゾンビが4体確実に減った事になる。

 

 夕暮れまでに6回ジャックを仕掛けたところで、俺達は15号線を北東に向って野営地を探す。

 サーキットを右手に見て、数km進んだところで、車を止め野営の準備に入る。

 それにしても、ラスベガスを少し離れると周囲は光量とした荒地なんだよなぁ。荒地というより砂礫砂漠というのが正しいんだろうけどね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ