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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-613 ジャックに集まるのは通常型ばかり


 昼食のサンドイッチを食べながらモニターに映る光景を眺める。

 少ないとは思うんだが、それでもあちこちからゾンビがジャックに近付いている。

 ブザーが作動してから、まだ15分も過ぎていないのだがこの集まりだと数十体にはなりそうだな。


「変わったゾンビはいないように見えるのだが?」


「全て通常型ですね。とはいえ油断は禁物です。次のジャックの設置は進んでいるんですか?」


「先ほど3番目のジャックを運んで行ったぞ。次は1300時で3番目が1400時だ。ブラッド中尉、ヴァイス軍曹共にゾンビに対してまだ発砲はしていないようだ」


「屋外ですから、近づいてくるゾンビが数体ならばサプレッサーを付けたライフルで射撃する分には問題はありません。とはいえ、発砲前には数を確認してくださいと念を押してくれませんか」


 老婆心だけど、今ラッシュが起きるようでは計画がとん挫してしまいそうだ。ラッシュは最後で十分だ。


 ドローンが高度を上げ始めた。

 時計を見ると1225時だから、ジャックの炸裂に巻き込まれないよう上空で待機という事だろう。

 シグさんがモニターをジッと見つめている。

 俺は窓を開けて、タバコに火を点けることにした。


 モニターが突然真っ白になった。

 炸裂したみたいだな。


「ドローンの高度を100mまで下げてくれ。それと聴音装置を作動させてほしい。ヘッドホンのジャックは……、ここだね」

 

 ヘッドホンを取り出して、ドローン操縦装置に組み込まれた聴音装置のジャックにプラグを差し込む。

 両耳に当てて、画像を眺めながらゾンビの声を聞き始めた。


「やはり通常型ばかりですね。統率型が1体ぐらいはいると思っていたんですが……」


「面倒な相手はいない方が良い。次の炸裂地点に移動してくれ!」


 次のジャックの炸裂場所も通常型ばかりだった。

 面倒な進化種は昨年の移動時に同行してくれたのかな?

 かなりの数が同行したとしても、全くいないという事にはならないだろう。

 ジャックをたくさん用意したからなぁ。あちこちに仕掛けて探るしかなさそうだ。


 14時半を過ぎたころ、ブラックホークが自律型ドローンの回収にやって来た。

 お土産は10台のジャックだけど、ついでに10ℓの水の容器を5つ運んできてくれた。

 これで夕食後にはシャワーを浴びれるだろう。ペットボトル2本分ほどの水量になるだろうけど、それでも浴びれば少しは涼しくなるはずだ。


「あの変わったドローンは修理してまた使うのだろうか?」


「結構使えますよ。勝手に動いて1年以上ゾンビを調査してくれますからね」


「それなら、なおのこと例の傷が気になるところだな」


「戦士型に遭遇したんだろうと推測してますが、ドローンに対してゾンビは積極的な攻撃をしないんですよねぇ。どちらかと言えば無関心。そうなるとあの傷の原因は俺も気になるところです」


 ニュートークの地下鉄構内と同じで、自分達以外の存在に知られたくない物を見たという事が一番考えあれる。だが電力確保の関係上、自律型ドローンは建屋内に入ることはしないはずだ。となるといつものように道端で通りに視線を向けていた時に、知られたくない存在がたまたまそばを通ったという事になるんだろう。

 だけどあの傷跡、それに故障原因についての調査は、オットーさんや生物学研究所の知見が欲しいところだな。此処に搭載してあるトランシーバーは衛星回線を使えるとのことだから、メールで伝えておこう。

 2回目のジャックが作動する前にメールを2人に送ったところで、上空から捉えた住宅街の映像を眺める。

 何度か爆撃しているからだろう、焼夷弾で焼けた住宅を見ることが出来るんだけど、全て焼き払うとなればどれだけ焼夷弾が必要なのか見当もつかないな。


「コイン機から落とすなら爆弾よりも焼夷弾が良いんでしょうけど、数が必要ですね」


「気象条件や都市の構造でのさもあるだろうが、住宅のほとんどは木造建築だ。焼夷弾は効果的ではあるんだが、白リン系の焼夷弾よりナパーム弾の砲が効果的だろう。急造のナパーム弾でさえ十数軒を火事に出来るんだからな」


 たまに纏まって焼失した住宅が、ナパーム弾の成果という事かな? 

 それならもっとたくさん作るべきだろう。作戦に合った銃砲弾作りを考えるべきかもしれないな。現状では既存兵器に合った銃砲弾という事だからね。


 3度目のジャックが炸裂したところで、ジャックを仕掛ける位置をジャンクションの西側の住宅地に変更する。

 15時と16時に2つずつジャックを作動させることにして、準備が出来たところで1台のドローンを東の住宅地に送り込む。

 

「統率狩りという事だな?」


「統率狩りをしながら、他のゾンビを探します。統率型の声は操縦者に確認して貰って、俺が他のゾンビを探しますよ」


 ノートパソコンにドローンの集音装置が拾った音声信号を取り込む。

 ヘッドホンで声を確認しながら、音声の周波数スペクトルを睨む。ドローンの高度を50mほどにして周囲100mほどに潜んでいるゾンビを探していく。

 音声スペクトルを見る限り、近くにいるのは通常型だけのようだ。

 とはいえ統率型も少し離れた場所に存在しているのが分かる。戦士型や士官型、伝令型については確認できない。住宅街ではなく都市中心部に潜んでいるのかな……。


 西に設置した2つ目のジャックが炸裂した後、西の住宅地についてもドローンでゾンビの声を確認する。

 やはり東と同じだな。少なくとも今日調査した範囲にいるゾンビは通常型だけのようだ。


 日が沈む前に16号線を10kmほど南下して、野営の準備を始める。

 道路の真ん中に車両で輪を作れば、その中はとりあえずは安心だ。

 北と南に位置した車両に1班ずつの見張りを置いて、焚火を作りレーションを温める。

 テント型のシャワー室を作ったから、少しは汗も流せるだろう。

 組み立て式のテーブルに地図を広げて、コーヒーを飲みながら士官達と状況の共有を行い、明日の作業について確認する。

 明日はジャンクションを西に向かうことになる。

 道路の西にも住宅地はあるんだが、それよりは数km先の都市部に重点を置くことになるだろう。


「状況次第だが、西にジャックを仕掛けずに東を重視するという事だな? 道路から東に3kmと5kmにジャックを仕掛けるという事だが、手前から行くのか?」


「ジャックを3個1km程離して設置します。最初は3km、続いて5kmで行きましょう。今日は通常型ばかりでしたが、明日は出てくると思いますよ。それと周辺の監視も重要です。集音装置を使ってゾンビの接近に注意してください」


「今日倒したゾンビは数体ほどだったが、明日も接近するゾンビは倒しても良いんだな?」


「200mで情報共有、100mで発砲で構いません。でもサプレッサーは必ず付けてくださいね。場合によっては急いで南下することもありえます。ゾンビが10体以上で200mに迫ったなら、車両のアイドリングをお願いします」


 本来なら常時エンジンを掛けておきたいところだけどなぁ。

 予備の燃料缶を2つ持ってきているし、各車両とも燃料タンクは大きいようだ。

 だけど無限にあるわけではないからね。節約できるところは節約しておかないと……。


 シャワーを浴びたのは22時過ぎだった。

 1人バケツ半分ほどの水量だから、さすがに石鹸で洗うことは出来ない。そんなシャワーでも頭から浴びれば少しは汗も流せるし、体を冷やすことも出来る。

 砂漠の夜は冷えるんだが、さすがに道路の上だからなぁ。熱せられたコンクリートのおかげで、それほど気温が下がったようにも思えない。

 衣服を整えたところで、焚火の1つに向かう。

 焚火を囲んでいる兵士達の間に入り、ワインを1杯。

 あまり飲まれても困るけど、寝る前の1杯ぐらいは許されるだろう。


 翌日は、15号線と215号線のジャンクションから西に向かって車列を進ませる。クラーク・ロード215という名が通りに付いている道路はラスbsガスの西を回り込んできたに抜ける11号線と合流する。

 今日は西に向かう159号線の合流地点まで向かうことになる。

 住宅地の中を通るから、先ずはジャックを仕掛けて慎重にクラーク・ロードを進むことになる。


「クラーク・ロードに沿って1km間隔でジャックを仕掛けたぞ。1時間毎に作動するから、その状況を見ながら進むことになる」


「結構乗り捨ててある車がありますね。邪魔なものは排除するしかないんですが……」


「ゾンビが集まって来るようなら、攻撃しながら後退すればいい。それより、早速見付けたそうだ。ドローンの予備機を使って統率狩りを始めたいが……」


 道路近くでは俺達の所に集まって来ないとも限らないからなぁ。1km以上離れていることを条件に、統率狩りを始めて貰うことにした。

 新たにやって来た2人は、統率狩りはしたことが無いらしいから、ジュリーさんに指導して貰おう。


「大丈夫。直ぐに覚えると思うわよ。戦士型や士官型を見付けたら、それも叩くからね」


 士官型もいたんだよなぁ。それも叩いて置いた方が、後が楽になりそうだ。

 ドローンの方は女性3人に任せて、先を進んでいるブラッドさんに状況を聞いてみた。


『こちらLAVだ。……サミーか? ああ、順調だよ。後続の通行に邪魔になるような位置で乗り捨ててある車は排除するぞ。今のところは問題なさそうだな。それとゾンビをこれまでに10体以上倒している。ジャックの作動が始まったから、家から出てきたのかもしれんな。数が多いようならこっちから連絡する。その時は爆弾をばら撒きながら後退するからな。以上だ!』


 ドローンの画像を見ると、ジャックの周囲にゾンビが集まり始めている。

 東の住宅地よりも数が多そうだけど、50体を超えるかは微妙なところだ。


「昨日の状況と今日の状況を見ると、やはりゾンビの数が少ないのが分かりますね。少なくとも半減していることは間違いありません」


「半減したとしたなら10万体以上15万体未満というところだろう。あの大移動があった昨年から、1年近くコイン機で爆撃をしているのだ。さすがに15万体はいないだろうな」


 数は10万体と見ておくべきかな? それと気になるのが進化種の数なんだが、今のところジャックに集まるゾンビは通常型ばかりなんだよなぁ。

 やはり夜間に集まるゾンビに付いても確認しておいた方が良いのかもしれない。


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