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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
602/688

H-602 急いで連絡通路を塞ごう


 9時を過ぎた頃、東から爆音が聞こえてきた。

 オスプレイのエンジン音は結構大きいなぁ。外に出てみると、3機が列を作ってこちらに進んで来る。その後ろに小さく見えるのはブラックホークなんだろう。飛行速度がオスプレイよりかなり遅いからなぁ。きっと早く出発したに違いない。


 管制建屋の直ぐ近くに降り立ったオスプレイから増援の兵士が下りてくる。

 離れた場所で様子を見ていた俺達の所に、完全武装姿で現れたスコット中佐と敬礼を交わしたところで管制建屋内の指揮所に案内する。

 先ずは状況の説明だ。これはレイモンド少佐が行ってくれた。


「ご苦労。そこまで分かっているなら、空港の奪回も容易だろう。それにしても連絡通路が対岸の建屋とこちら建屋との間を結んでいたとはなぁ……。計画立案時には誰も気付かなかったぞ」


「それで、航空支援をお願いしたのです」


「座標は指示しているから、1000時に攻撃を行う予定だ。MK.81爆弾が4発。建物は破壊されると思うのだが」


「破壊後に連絡通路内のゾンビの声を確認しましょう。大騒ぎをしているようなら、瓦礫を抜け出して背後を襲われかねません」


 俺の提案に、しっかりと頷いてくれた。

 250ポンド爆弾だから、1発で建物が吹き飛ぶんじゃないかな。


「是非ともお願いしたい。状況次第では瓦礫を撤去して連絡通路を塞ぐ必要もあるだろう。先行偵察とゾンビへの備えはSASとサミー大尉達に任せるぞ。サーデン、2個分隊をエルトン中尉に一時託してくれ」


 1個分隊が監視する中、2個分隊が連絡通路の閉鎖を行うのか。増援の兵士達だって武装はしているはずだ。だが、万が一に備えて作業前に撤退場所と、そこに至る動線への遅延措置をしておこう。


「爆撃後に、ドローンで状況確認。問題が無ければ、連絡通路の確認に向って欲しい」


「了解です。その後空港ビルお飛び周辺建屋のゾンビを掃討していきますが、北200m先はゾンビが数十万体はいるはずです。今までゾンビと戦ってきた経験ではゾンビは泳ぐことはありませんでした。ですが油断は禁物と考えます」


「その為に2機のブラックバードを待機させる。攻撃回数は2回まで行えるよ。それで足りんようなら、トマホークを使うつもりだ」


 しばらくは2機を置いて置くのかな?

 それなら、燃料と追加兵装を運んで欲しいところだ。


 皆でタイフーンの爆撃を待つ。

 爆撃10分前にドローンが飛立ち、空港ビルの陰で待機している。

 誰かのカウントダウンを聞きながらその時を待つ。


 大きな炸裂音にガラス窓が震える。

 直ぐにドローンが状況確認に向い状況を俺達に見せてくれた。

 落とした爆弾は2発らしい。その位置の1発がフェリー乗り場の建物に命中している。フェリー岸壁側は建物の一部が残っているけど、クレーター状に建物を吹き飛ばした北側にしっかりと連絡通路が見えている。


「さすがはロイヤル・エアフォース。1撃出結果を出してくれましたね」


「後2発残っているが、トロントシティの建物を適当に破壊して貰おう。このコンベンションセンターはどうだ?」


 エルトン中佐の問い掛けに、苦笑いを浮かべて頷いた。

 沢山ゾンビがいる気がするなぁ。少しでも減らそうという考えは悪くない。


「ここからは作戦通りで行こう。先ずはブラックホークで連絡通路内にハイドラを撃ち込み、その後でナパーム弾だったな。火勢が衰えたら、急いで連絡通路を塞げば大陸からの動線を遮断できる」


「空港ビルまで接近して、攻撃終了の連絡を待ちます!」


 エルトンさんの言葉に俺達は席を立つ。

 背中にマーリンを担いで外で待機していたフォードのピックアップトラックの荷台に乗り込んだ。

 増援の歩兵達がすでに乗り込んでいるから、目的地を運転席から顔を出した女性兵士に告げると直ぐに車が動き出す。


「大尉殿。まさか、それを使うんですか?」


 荷台に乗っていた兵士が問いかけてきた。周囲の兵士達も興味深そうな表情で俺に視線を向けてくる。


「生憎と射撃が下手なんだ。50mぐらいなら結構当たるんだよなぁ。弾が無駄になるという事でこれを使っているのさ」


「彼の名誉のために一応知らせておく。100m以内なら狙撃兵を越えるぞ。だが、それ以上となると……、新兵以下だ」


 荷台の上の兵士達が、レディさんの最後の言葉に笑い出しているんだよなぁ。助手席に乗った軍曹が何事かと窓から首を出している。


「近接戦闘では役立つだろう。だが銃の選択としては間違いではない。ゾンビを倒すなら頭部破壊が確実だからなぁ。素早く1体ずつ倒せる技量が一番だ。ライフル射撃は面倒でもセミオートを選択しておいてくれ。連射したなら直ぐにマガジンが足りなくなる」


「了解です。それで、レバーアクションですか。とはいえ案外頭部を狙うのは難しいところでもあるんです。射撃訓練は腹を狙いますからねぇ」


「それがあの夏の日の苦い教訓だ。いくら撃ち込んでも襲い掛かってくるんだからなぁ。ブローニングでなぎ倒しても再び起き上がって来たぞ」


 分隊の中の古参兵の言葉に、皆が小さく頷いている。

 あの夏の日にゾンビ相手に戦ったんだろう。運よく生き残って仲間の仇を討とうとしているんだろうな。


「あれから数年ゾンビと戦って、彼らの弱点が色々と分かってきた。まだ我等の出番ではないからいくつか教えておく。ゾンビには幾つもの種類があるが、その中で一番多いのはいわゆる人型のゾンビだ。これを倒すには頭部破壊しかない。それでも動くゾンビがいる。それはゾンビを統率している奴だ。ゾンビラッシュの原因でもある。それを倒すには頭と両胸に弾丸を撃ち込まねばならない。見分けは付かないから、頭を破壊しても動くゾンビは両胸に1発ずつと覚えておけば十分だ。次にゾンビを相手にする時だが……」


 レディさんの話を真剣な表情で兵士達が聞いている。

 すでにトラックは空港ビルの陰に移動して、ブラックバードの攻撃を待つだけの状態だ。

 肩からマーリンを外して初弾を装填し、サーフティを掛けておく。

 隣のグロウラー2両は屋根のアングルにグレネードランチャーを設置しているから、万が一の時には頼りに出来そうだ。

 連絡通路のゾンビはハイドラとナパーム弾を使えばしばらくは出てこないだろうけど、空港ビルにいるゾンビが外に出てこないとも限らない。

 空港ビル内の声を聞いた限りでは戦士型もいるからなぁ。

 まだ投射武器を持つまで進化してはいないだろうけど、形状が分からない内は安心できないんだよね。


「攻撃30秒前!」


 隣に停車したグロウラーの窓から身を乗り出してエルトンさんが俺達に伝えてくれた。

 マーリンを握りしめ、その時を待つ。


 ヘリの轟音が聞こえてきた。

 ハイドラの炸裂音よりヘリの音の方が大きいぐらいだ。

 盛大に広がった火炎が空港ビルにまで迫り、急速に火の手が引いていく。

 ヘリの轟音が遠ざかると、グロウラーから降りたエルトンさんが片手を大きく振りながらごー!ゴー!」と叫んだ。


 荷台から飛び降りて、先ずは聴音装置を作動させる。

 だいぶ煩いのは、ヘリの攻撃がゾンビ達を刺激したためだろう。

 一番煩いのは空港ビルからだな。

 通常型がほとんどだ。統率型の声も聞こえるがラッシュを引き起こすような短い音を発してはいない。戦士型の声は存在がどうにか分かるだけだ。

 空港ビルから出てこない限り問題は無さそうだな。


「空港ビル内のゾンビは先ほどの攻撃で興奮しているようですが、ラッシュを起こすような様子はありません。我々に近付き次第倒していけば十分です」


「了解だ。軍曹! 周辺のゾンビに注意してくれ。近づくようなら銃撃を許可する」


「了解です。周辺の監視を行います」


 数人が後方に下がっていく。

 俺隊はゆっくりと爆撃後に向かって進みながら、瓦礫の中でまだ動いているゾンビを倒していく。


「あれが連絡通路か……。結構大きな通路だな。グロウラーが走れそうだ」


「階段ではなくスロープですね。さてどうやって塞ぎましょう」


「いつでも逃げ出せるように退路を確保したところで、数人にグレネードランチャーを持たせて通路の奥を監視させれば残りの兵士で瓦礫を積み上げていくしかなさそうです。丸太1本を横にしただけでも一時的にゾンビを足止めできますよ」


 それならと、エルトンさんが兵士達に通路の少し奥に小さな柵を作るよう指示を出した。


「10mほど奥に瓦礫を並べます。高さは30cm程度ですが、それで十分という事でししたね?」


「十分だ。乗り越えるのに苦労するだろう。ゾンビが集団を作るから、グレネード弾で一掃できるだろう」


 ラッシュが起これば勢いで乗り越えてくるだろうけどね。

 だが現状ではその気配はまるでない。今の内に出来るだけのことはしておこう。


 火勢が収まったのを確認したところで、作業開始の合図を送る。

 兵士が銃を構えて走り出したから、慌てて後を追う。


 SASの4人が建物を吹き飛ばした跡のクレーターに下りて行く。グレネードランチャーを構えながら連絡通路内を確認していたが、直ぐに俺達に手を振ってくれた。

 それを合図に8人の兵士がクレーターに下りて行くと、ガラクタを持って連絡通路の中に入っていった。

 俺達もクレーターに下りて、状況を見守る。

 連絡通路の奥にゾンビがいるかと思っていたんだが、ナパーム弾の炸裂で吹き飛んでしまったか焼かれてしまったのだろう。

 それなら俺達も手伝うべきだろう。

 連絡要員にレディさんを残して、シグさんと兵士達の手伝いに向かった。

 連絡通路は横幅5m程だが、その通路一杯に高さ30cmほどに瓦礫を積み上げる。コンクリート片や、元はテーブルのような代物だけど、高さが稼げればそれで十分だ。


「これで役立つんでしょうか?」


「案外役立つよ。此処を超えるには足を上げないといけないだろう? ゾンビは段差が苦手なんだ。たぶん密集するに違いないから、そこにグレネード弾を撃つんだよ。1発で10体は確実だよ」


「そういうことですか。あの時はそんなことなど考えませんでしたが、確かに乗り捨ててあった車付近にはゾンビが固まっていましたね」


 昔を思い出すように兵士が呟く。

 さて、次は出入り口の完全閉鎖だな。

 出口に向かうと、ブラックバードが自動車をワイヤーで吊り下げてくるのが見えた。

 その後ろにもう1機が同じように自動車を吊り下げてくる。


「どうだ? 依頼したら、直ぐに運んでくれたぞ」


「助かります。出入り口に重ねれば、後は隙間を塞ぐだけですからね」


 せっかくだから、あの自動車内に爆薬を仕掛けても良さそうだ。爆薬の持ち合わせが無ければクレイモアでも仕掛けておこう。


 ゆっくりと出入り口に降ろし始めた自動車の向きを調整して、なるべく真横に降ろしてくれた。次の自動車を下ろしている間にガラクタを集めておこう。

 案外連絡通路の閉鎖は簡単に終わりそうだ。


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