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老兵は死なずSS~疲労回復のプリン~

※書籍版世界線です


 セシル嬢とともにギルドの片づけをしていた。最近は魔物の数が増えていて、仕事が忙しい。討伐クエストの依頼が多くそれを整理するだけでも時間がかかってしまうのだ。


「さすがに疲れましたね。もうこうなったらジークさんが全部解決してくださいよ」

 こちらは苦笑して答える。


「残念ながら、そううまくはいかないですね。魔物の目撃ポイントが多すぎて、私が向かっても人出がわずかに増えるだけですよ。逆に受付の人が少なくなるので余計に大変になりますぞ」


「ですよねぇ」

 まあ、軽口なのはわかっている。ただ、少し疲れているようだ。

 

 そんな話をした後で、自室でウィスキーを飲んでいるとリアがやってきた。今日はオーガ討伐のクエストを受注していたが成功して帰ってきていた。


「おや、まだ起きていたのか」

 ウィスキーの入ったグラスを置きながらそう笑う。


「はい‼ 今日の帰りに依頼主さんから卵と牛乳をもらったので、師匠も明日の朝ごはんにどうかなって?」

 リアはもうこの街になじんでいて人気者だった。


「今それはどこにある?」


「保管庫に置いてありますよ」

 この家にお世話になってから、我々の魔力を使って食品保管庫に氷魔力を充満させている。まあ、リアの魔力は膨大なので1週間おきに魔力で氷を補充すれば十分なのだが。


「そうか。なら明日の朝食にデザートを作ろうか。牛乳なら早く飲み切ってしまわなければいけないだろからな」

 

「本当ですか‼」

 リアは嬉しそうに笑った。


 ※


―翌日―


 なんとか午前中の忙しい時間が終わって、一息つくことができた。

 冒険者は午前中に仕事を受注して、早ければ夕方に帰ってくる。だから、午前中と夕方は忙しく、そのあとで酒場で飲み会をするのが常だから夜までは大変だ。


 運がいいことに、正午を過ぎて今日はほとんど冒険者がやってこなかった。

「少し休憩しましょう」

 そう言って、私は酒場の氷保管庫に入れておいた二つの小さな器と匙を取り出した。リアとルイは朝食にこれを食べて絶賛してくれた。


「どうぞ」

「これは?」

 セシル嬢は不思議そうに小さな器を受け取る。


「卵プディングですよ。昨日、リアが卵と牛乳をたくさんもらったので作りました。やはり甘いものは疲労回復に良いですし、卵と牛乳は栄養満点ですからね。これを食べて乗りきしましょう」

「ジークさん……あなたと同僚で本当に良かったぁ」

 そう言うとセシル嬢は少し大げさに喜んでくれた。


 まさか、こんな穏やかな老後を送ることになるとはな……思ってもいなかったよ。


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