表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/69

【四巻発売&縦読みフルカラー化記念SS】星《ルーベン side》

 ────どうして、僕はこんな生き方しか出来ないのだろう?

意地の悪い考え方しか出来ないから?

自分本位だから?

両親に人を騙し、操り、殺めることしか教えられなかったから?

いいや、きっと違う……たとえ、真っ当に生きようとしても出来なかった筈だ。

だって、僕は────パーソンズ公爵家に代々仕えるギャレット家の人間だから。


 産み落とされたその瞬間から、僕の生き方は……運命は決まっていた。


 『初めて人を殺したのは六歳の誕生日だったか……』と思い返しながら、学園の廊下を歩く。

文化祭の準備ですっかり様変わりした校内は、キラキラしていて……とても眩しかった。

自分も普通の人間だったなら、この光景を喜べたのだろうか────と自問自答しつつ、僕は屋上へ出た。

夜空に輝く星々を見上げ、『決行の日も近いな』と考える。


「────こんなところで、何をしているんだい?」


 聞き覚えのある声を耳にし、僕は慌てて後ろを振り返った。

すると、そこには────カーター伯爵の姿が……。


 いつの間に真後ろに……!?


 音もなく忍び寄ってきたカーター伯爵に、僕は驚愕を露わにする。

『油断も隙もないな……』と思いながら。


「ちょっと夜空を眺めていただけです。そういうカーター伯爵はどうして、こちらに?」


「私はちょっと外の空気を吸いたくてね」


 見え透いた嘘を吐き、手すりに近づくカーター伯爵はそっと身を乗り出した。

ふわりと優しく頬を撫でる夜風に目を細め、彼はじっと星空を眺める。


 今なら、事故に見せ掛けて転落死させられるのでは……?

いや、待て。相手は校舎の屋根から飛び降りても、ピンピンしている人物だぞ?

たとえ、不意打ちでも華麗に着地される未来が見える……。


 カーター伯爵の優れた身体強化を思い浮かべ、僕は心の中で『無理だ』と首を横に振った。

『果たして、この化け物を倒せるやつは居るのか』と考える中、カーター伯爵が口を開く。


「君は────命を燃やして輝く星のようだね」


 唐突に意味不明なことを口走るカーター伯爵は、星に向かって手を伸ばした。


「いつか破滅すると分かっていても、()に呑み込まれたくなくて必死に輝く。まさに星そのものさ」


 暗喩を使って遠回しに警告しているのか……カーター伯爵は分かりづらい言葉を並べる。

きっと、『これ以上、変な真似はするな』と釘を刺しているんだろうが……選んだ表現のせいか、それとも柔らかい声色のせいか全然怖くなかった。

『情に訴えかける作戦か?』と思案しつつ、僕は一つ息を吐く。


「……哀れだと思いますか?」


「さあ?それは何とも言えないね。ただ────美しくない生き方だとは思うよ」


 キッパリと僕の生き方を否定するカーター伯爵に、思わず目を見開く。

『そこは嘘でもいいから褒めておけよ』と、思いながら。


「それは……醜いという意味でしょうか?」


(いびつ)だとは思うが、醜いとは感じないよ」


 『同じ生き方をしたいとは到底思わないけど』と付け足し、カーター伯爵は踵を返した。

言いたいことを言えて、スッキリしたのだろう。

『結局、僕に釘を刺しに来ただけか?』と首を傾げていると、カーター伯爵は扉の前でいきなり足を止める。

そして、視線だけこちらに向けた。


「もし────美しくなりたかったら、私のところへ来るといい。そのための道を示そう」


 投降勧告と捉えられる捨て台詞を残し、カーター伯爵は屋上から出ていった。

一人取り残された僕は、彼なりの最後の温情に目を剥く。

と同時に、小さく笑った。


「美しく、か……血と泥に塗れた僕には、到底無理だね」


 『もう全て手遅れだ』と呟き、僕は投降勧告を静かに退ける。

どこか歪に見える星々の輝きを眺め、スッと目を細めた。


 死にたくなくてもがいているのに、僕は結局死へ向かっているのか……実に無様だね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ