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World End をもう一度  作者: 新月 乙夜
外伝

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エリクサーを狙え!4


 アニルと諸々の交渉をした次の日。秋斗は近所の次元迷宮へ向かった。45階層にあるクエストの石版を使い、セキュリティカードを手に入れるためである。45階層の転移石は使い切ってしまってもうないので、今回は50階層から遡る予定だ。


 手続きをしてゲートを潜る。1階層は足早に通過し、2階層の人目に付かないところで、彼は50階層の転移石を使った。視界がホワイトアウトし、さらにフワリと浮き上がるような浮遊感がくる。身体の感覚が元に戻ると、そこはもう50階層だ。


「よし、じゃあ行くか」


 50階層に到着すると、秋斗はそう呟いてすぐに49階層へ向かった。49階層は「暗闇のアンデッドフィールド(秋斗命名)」。暗闇の中からゾンビやグール、スケルトンと言ったアンデッドモンスターが絶え間なく襲いかかってくるのだ。


 ただ49階層は完全な暗闇、というわけではない。49階層には50階層(もしくは48階層)へ向かうメインルートがあるのだが、そこには明かりが配置されている。その明かりで道が完全に見えるわけではないが、懐中電灯などを持っていなくても、明かりを追っていけば迷うことはない。


 とはいえメインルートは曲がりくねっていて、その分だけ移動距離が長い。だが安易にショートカットしようとすると、暗闇の中に隠れた段差や障害物に行く手を阻まれ、下手をすれば怪我をしてしまう。そこへモンスターが殺到してくれば、一瞬にして窮地に陥りかねない。結局、メインルートを征くのが一番早い、と秋斗は思っている。


 ただメインルートを通るとしても、49階層の踏破は決して楽ではない。49階層相当レベルのモンスターがひっきりなしに襲いかかってくるのだ。攻略者たちはこの物量に対処しなければならないのだが、何の準備もなく対処できる攻略者パーティーはいないだろう。そしてその準備だが、45階層で「聖水」というアイテムを手に入れることができる。


 名称:聖水

 対アンデッドモンスター用。振りかけて使う。


 相変わらず言葉足らずの鑑定結果だが、ひとまず聖水がアンデッドモンスターに有効であることだけは分かる。実際の使用方法としては、まず自分の身体に振り掛けるとアンデッドモンスターがあまり寄って来なくなる。完全に避けてくれるわけではないが、物量が緩和される効果は大きい。


 また直接振りかけると、アンデッドモンスターを撃退することができる。ただこれをすると聖水が何本あっても足りない。それで武器などに振りかけて擬似的なエンチャント状態にすることを秋斗は想定している。まあどう使うかは工夫次第だろう。


 聖水以外にも45階層には49階層で使えそうなアイテムが多数、クエスト報酬として用意されている。ただ少々意地悪な仕様になっていて、ほとんどの対策アイテムで一度49階層まで行かないと必要なドロップアイテムが揃わないようになっている。つまり49階層から45階層まで戻る必要があるのだ。事前情報なしだと、かなりきつい回り道に違いない。


「しかもセーフティーエリアを目前にしてっていうね。悔しいだろうなぁ」


 そう言って秋斗はニヤニヤと笑った。そして「アリスもなかなか性格が悪い」と嘯く。もっとも彼の立ち位置は運営側なのだから、彼も同罪だ。まあ階層的にもこのくらいの難易度がちょうど良いだろう。


 さらに49階層について語るなら、この階層は普通に攻略、つまりメインルートを進むだけだと稼ぎ的には旨みが少ない。寄ってくるモンスターのほとんどは小さい魔石しか残さないからだ。さらにドロップアイテムも高値が付くモノはほとんどない。ときおり中型魔石も手に入るが、これも確実に計算できるかといえば難しい。


 では49階層にボスクラスのモンスターがいないのかというと、そんなことはない。だがボスを討伐するためにはメインルートから外れる必要がある。つまり完全な暗闇の中を、寄ってくるアンデッドモンスターの群れをかき分けて進まなければならないのだ。それでもボスを発見できるかは運次第だし、またボスを発見して討伐できても、そこからメインルートへ戻れるかは別問題だ。


「討伐だけなら、聖水のゴリ押しでなんとかなると思うけど」


[道に迷ってしまったら、あとはもう転移石に頼るしかないな]


 暗闇という環境はそれくらい厄介なのだ。本来は。だが秋斗について言えば、彼は初見でこの49階層を踏破している。そのための大きな要素は二つ。暗視と聖属性攻撃魔法だ。なお、重要度は後者の方が高い。


 暗視があれば、そもそも暗闇はなんの妨げにもならない。そしてアンデッドモンスターに対して、聖属性攻撃魔法は抜群の効果を誇る。これを書き込んだ白紙の魔道書があれば、49階層の物量は問題にならない。実際、秋斗はそれを手に、ほとんど立ち止まることなくこの階層を踏破したのだ。


 とはいえ、それでも四時間弱かかったが。曲がりくねったメインルートを通ったからである。普通のパーティーならもっと時間がかかるだろう。加えてこの49階層では、しっかりと休憩を取ることも難しい。秋斗も「立ち止まらなかった」のではなく、正確には「立ち止まれなかった」のだ。そういう意味でも、この階層の攻略難易度は高いと言えるだろう。


 ちなみに秋斗はメインルートから外れた範囲の探索も行っている。これもシキのマッピング能力があればこそだが、その探索で彼は十数体の中ボス(中型魔石を落とすモンスター)と二体のボスクラスモンスターを撃破した。この戦果はかなりのもので、手法さえ確立してしまえばこの階層は稼げることを示している。まあ、そこが一番の難点なのだが。


「それにしても、49階層の転移石は使わないな」


 秋斗はほぼ無制限に聖属性攻撃魔法を使える。それで彼の場合、この階層での時間当たりのモンスター討伐数は、1階層でのスライムハントより多い。すると必然的に、多数の転移石がドロップすることになる。


 ただ彼の場合、すでに50階層に到達しており、そこにあるモンスター召喚用魔法陣で転移石を荒稼ぎしている。セーフティーエリアである50階層に転移するほうが何かと安全で、そのため49階層の転移石はこれまでに一度も使ったことがなく、ストレージには在庫が積み上がっている状態だった。


[今回は使っても良かったのではないか?]


「あ」


 シキに言われて秋斗は気付く。転移石を使った場合、転移するのはその階層のスタート地点付近。つまり49階層の転移石を使えば、すぐに48階層へ向かえるのだ。うっかりミスである。だがまだ手遅れではない。


 秋斗はすぐさま踵を返した。49階層はゾンビやグールが多数いるせいで臭い。ショートカットできるならしたいのだ。彼は50階層に戻ってくると、すぐに49階層の転移石を使う。そしてそのまま48階層へ向かった。


 48階層は荒野である。むき出しの岩肌が多数点在していて、それを迂回するように進まなければならない。いや登ってもいいが、どう考えても迂回するほうが早いだろう。そのため49階層と同じく直線最短コースを突っ切ることはできず、歩いて移動するだけでもそれなりに時間のかかる階層だった。


 出現するモンスターはゴーレム。大雑把に分けると三種類のゴーレムがいて、土塊でできたノーマルゴーレム、岩石でできたロックゴーレム、金属の身体を持つメタルゴーレムが現われる。基本的にどのタイプも防御力が高く、斬ったり突き刺したりするような武器は相性が悪い。それでハンマーやメイス、棍棒などの打撃武器がオススメだった。


[まあ、オススメする知り合いもいないわけだが]


「やめてっ!? 結構クルから!」


 シキの無慈悲なツッコミに、秋斗が大げさにもだえる。とはいえクルのは本当だ。悲しい現実から目をそらし、彼は小走りになって動き始めた。索敵範囲内にはすでに数体の反応があるが、基本的に戦闘は回避する。ゴーレムは足が遅いので、逃げるだけなら比較的容易なのだ。


 彼が軽快に走りながら周囲を眺めると、むき出しの岩肌には幾つか種類があることが分かる。つまり何種類かの鉱石が存在しているのだ。秋斗シキが調べた限り、この階層では鉄鉱石や銅鉱石など、実に20種類以上の鉱石の鉱脈があった。それらの鉱脈はすべて露天掘りが可能で、その中にはなんと金鉱脈もある。


 もっとも金鉱脈が露天掘りできるからと言って、それで大儲けできるかと言えばたぶんそんなことはない。金鉱石以外にも言えることだが、場所によっては崖を登らなければならないし、掘るのは全て人力。持ち出せる鉱石の量も限られてくる。よって鉱石よりは原石を狙う方が良い。大きめなダイアモンドの原石を掘り当てれば大儲けも夢ではない、かもしれない。


「どうしても資源が必要ってことになったら、ここも人で溢れかえるのかなぁ」


[その場合、人件費がエラいことになりそうだが]


 シキの指摘に秋斗も頷く。そもそもここより上の階層でも、特にクエストの報酬などで、金属資源などは手に入れることができる。どう考えてもまずはそちらが先だろう。つまりこの48階層が人で溢れかえるとしたら、それは相当ヤバい事態ということだ。


 なお露天掘りには道具も必要だが、48階層にはクエストの石版が多数あり、ゴーレムのドロップを納品することでツルハシを入手できる。このツルハシは49階層でも意外と有効で、この階層にはアンデッドモンスターの物量に対抗するための補給基地的な意味合いもある、のかもしれない。もっとも交換レートは少し高めに感じた。


 稼ぐのであれば、当然モンスターを討伐しても良い。ゴーレムを倒す場合、急所となるのはまず頭部。頭を潰せばどのゴーレムも倒すことができる。魔石を砕いても倒せるが、魔石は外からは見えないので、あまりアテにはならない。浸透打撃が使えればまた違ってくるが。なお「e」の文字は探してもどこにもない。


 ただゴーレムは基本的に巨体で、身長2.5メートル越えもザラだ。また動きは遅いが防御力と攻撃力は高く、いきなり頭部を狙うのは結構難しい。それでまずは足の関節を砕いて転倒させるなどし、動きを止めてからとどめをさすのがセオリーだ。あくまで秋斗の場合は、だが。


[ロープなどで足を引っかけてもいいかも知れんな。仲間がいるなら]


「シキさんや、なんでそんなにオレの心を抉ってくるんだね?」


 苦笑しながらそう呟いた。ゴーレムがドロップするのはやはり鉱石。いや、低品質のインゴットと言った方が良いかもしれない。金属の場合は純度が70%程度のモノがドロップする。鉄や銅だと大した稼ぎにはならないが、金など一部のレアメタルならそれなりの稼ぎが見込めるだろう。ただし鑑定できないと判別は難しい。


 また宝石の原石もドロップする。こちらは金属以上に見た目での判別が難しく、ただの石塊に見えることも多い。ただ大きさは基本的に小さいので持ち帰ることは容易だ。「ドロップしたモノなのだから」と考えて、鑑定せずに回収する者が多くなるのではないか。秋斗はそう思っている。とはいえ買取り価格は当然ピンキリだが。


 さらにこの階層にいるボスクラスモンスターだが、これも当然のようにゴーレムである。タイプも三種類だが、「メタルゴーレムだから強い」というわけではない。土塊でも身長が10メートル程度もある巨大なゴーレムや、口から熱線を吐くゴーレム、岩石の腕を飛ばすゴーレムに、高い再生能力を持つゴーレムなど、それぞれ厄介な特性を持っている。


「基本的にこの階層のボスクラスは、デカいし動きも遅いから、見つける事自体は楽なんだけどな」


 ノソノソと歩く他より大きなゴーレムを遠目に眺めながら、秋斗はそう呟いた。巨体とその重量はそれだけで凶器だ。大きければその分タフネスも高く、ちょっとやそっとでは倒れない。


 秋斗からすると、倒せないことはないが面倒な相手で、積極的に狩ろうという気にはならない。当然、今回もスルーだ。結局、彼は一体のモンスターも倒さずにこの48階層を抜けた。次は47階層である。


ゴーレムさん「お肌の乾燥が気になるエリアです」

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