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World End をもう一度  作者: 新月 乙夜
外伝

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次元迷宮攻略事情1


ゲート〉の出現が落ち着いたころ、次元迷宮探索の最前線は30階層前後となっていた。そしてこのころになると、攻略上重要な階層というのはだいたい限られてくる。1階層、10階層、15階層、20階層、25階層、30階層である。もちろん個々の次元迷宮を見ればこのほかにも重要な階層はあるが、全体の傾向としては主にこの六つの階層が重要視されていた。


 1階層は最も人が集まる階層だ。モンスターも弱く、この階層に限れば命の危険はほぼないと言える。よって人海戦術によってスタンピードを防ぎつつ、転移石を集めてより深い階層の探索と攻略をサポートする。それが1階層に期待されている役割だ。


 15階層は今更言うまでもないだろう。この階層には多数の石版があり、その大部分は「クエストの石版」である。このクエストをこなすことで赤ポーションをはじめとするマジックアイテムを入手することができるのだ。


 これらのマジックアイテムは高額で取引され、次元迷宮に人を集めるその原動力となっている。またより深い階層へ向かうためにもマジックアイテムは必要で、15階層でどれだけアイテムを揃えられるかは、稼ぎにもその後の攻略にも大きく関わってくる要素だ。


 15階層でより効率的にアイテムを揃えるために欠かせないのは事前の準備だ。その一つは納品するべきアイテムを事前に揃えておくこと。納品用のアイテムは自分で集めても良いが、窓口などから購入することもできる。


 ただいずれにしても、15階層までは自らの足で赴かなければならない。エレベーターはおろか、トロッコなどの移動手段も実現していないからだ。15階層でも転移石はドロップするが、需要量に対して供給量はまったく追いついておらず、残された手段は自分で歩くしかない。


 だが1階層から15階層まで踏破しようとすると、一般的には次元迷宮内で寝泊まりする必要がある。いわゆる「遠征」だ。遠征のためにはそれ用の物資が必要で、つまり手間も荷物もついでにコストも大幅に増える。クエストのクールタイムのかねあいによっては赤字になりかねない。


 そこで注目されたのが10階層だ。10の倍数の階層では転移石のドロップ率が十倍になる。転移石のドロップ率は通常0.05%程度とされているが、それが0.5%程度になるのだ。単純に考えて200体モンスターを倒せば転移石が一つドロップすることになる。


 10階層の転移石があれば、そこから15階層までは1日かからない。つまり帰還用に1階層の転移石を用意しておけば、遠征せずに15階層でマジックアイテムを集めてくることが可能になるのだ。しかも遠征用の物資の代わりに納品用のアイテムを持って行けるので、より多くのクエストをこなすことができる。


 これにより10階層の転移石の需要が増え、その買取り価格も上がった。ただ10階層の転移石をメインターゲットにしている探索者は少ない。10階層まで行けるなら15階層は目前だからだ。それにモンスター200体討伐というのは、決して少ない数ではない。稼ぎの効率としてはあまり良くないのだ。


 それで10階層で活動している探索者というのは、自分たちが15階層へ行くための準備として転移石を求めている者たちがほとんどである。ついでに納品用のアイテムも集めれば無駄がない。遠征が必要になることは多いが、浅い階層なら通り抜けるのにさしたる時間はかからず、つまり10階層により多くの時間を費やせる。効率が良いのだ。


 それにチームの全員で15階層へ行く必要はない。例えば20人のチームがあったとする。彼らが10階層でハントをする場合、1人あたり10体のモンスターを倒せば転移石が一つ手に入る計算だ。選抜メンバー4人を15階層へ送り込むのであれば、1人あたり40体のモンスターを倒すだけで良いことになるのだ。


 まあ40体というのもなかなかの数字ではある。ただ10階層にもスライムはいる。それでスライムを狙うことで全体の負担を軽減するのが主流だ。それに同一階層でハントを繰り返すだけなら準備はある程度決まったものになってくるし、また知見の蓄積も早い。洗練され効率化が図られるのも早かった。


 こんな具合で、15階層までの攻略や探索が商業化されるのは案外早かった。ただそこで足踏みするわけにはいかない。より深い階層にはより魅力的なマジックアイテムが眠っているだろう。またどれだけ攻略や探索が進んでいるかは国家の面子にも関わる。15階層程度で満足するわけにはいかない、いや満足できないのだ。


 そういう者たちが次に目指したのは25階層である。石版からの情報によれば、25階層はモンスターが出現しないセーフティーエリア。さらに15階層ごと、つまり30階層にはまた多数の石版が配置されているはずで、25階層はそこを目指す良い橋頭堡となるだろう。また次元迷宮内に人類の拠点を造るという意味でも、セーフティーエリアは決して無視できない場所だ。


 ただし問題もある。その最たるものが補給だ。仮にセーフティーエリアを拠点化したとしても、補給を維持できなければ意味がない。ただの広場を拠点とは言わないのだ。だが前述した通り、次元迷宮内にエレベーターは存在しないし、トロッコを通すこともできていない。つまり補給物資を運ぶにも完全な人力に頼る他ないのだ。


 そこで重要になるのが20階層である。10階層と同じく、20階層では転移石のドロップ率が十倍になる。補給線維持のためにこれを使わない手はないだろう。また20階層なら、25階層をベースキャンプとすることで遠征を行いやすい。それで20階層にも人が集まるようになった。なおスライムを狙う手法は10階層と同じである。


 そして30階層である。30階層はこれまでで最も重要な階層と言えるだろう。なぜなら30は10の倍数であり、同時に15の倍数でもあるからだ。つまり30階層には多数の石版が配置されており、同時に転移石のドロップ率も十倍なのだ。


 だから本来なら、20階層と30階層に戦力を分散するより、30階層に戦力を集中させた方が良い。だがそれを阻む要因があった。26階層くらいから、銃器(AMB)の効きが悪くなってくるのである。言い方を変えると、モンスターの防御力がAMB(Anti-Monster Barrett)の攻撃力を上回り始めるのだ。


 これはかつて人類を苦しめた、「鉛玉がモンスターに触れる前に弾かれる」のと同じ現象ではない。AMBは確かにモンスターに当たっているのだが、その上で効かないのだ。こうなると銃器に頼って攻略を進めてきた者たちは手も足も出なくなってしまう。その傾向は各国の軍隊(自衛隊を含む)で顕著だった。


 次元迷宮では基本的に下の階層へ行くほどモンスターは強くなる。よって30階層では26階層と比べてよりAMBの効きが悪くなる。ボスクラスを除けば全く効かないモンスターはまだいないが、それでも全体の六割で効きが悪く、倒すためにはより多くのAMBが必要だった。


 解決策は大きく三つ。より多くのAMBを持ち込むか、より強力な銃器を使用するか、それとも近接戦闘用の武器を用いるか。ただ銃器を使用する以上はどうしても補給の問題がつきまとうし、「棍棒を振り回すための訓練」を受けた兵士はなかなかいない。ちなみに「全て迷宮産の資源でAMBを作る」計画は、火薬の部分で手こずってまだ実現していない。


 それで、主に転移石を狙うのなら、30階層よりも20階層の方が良いとされている。AMBがこれまで通りに通用するからだ。20階層で転移石を集めつつ、25階層をベースキャンプにして30階層を目指す。これが現在のトレンドだ。


 一方で30階層より下となると、攻略も探索もなかなか進んでいないのが現実だ。大きな要因の一つはやはりAMBの効きが徐々に悪くなっていくこと。ただそれだけが全てではない。35階層には特に何もなく、次の区切りは40階層なのだ。


 次の区切りまでに10階層分を降らなければならず、AMBが効きづらくなっていくことも合せ、その距離が大きな壁となっているのである。しかも40階層へ到達しても、そこは転移石のドロップ率十倍のエリアであり、多数のクエストを期待できる45階層はまだ先。つまり31階層以降はAMBがさらに効かなくなっていき、さりとてすぐに利益が出るわけでもない。それが挑戦を鈍らせる要因だった。


 さてここで一度、話を30階層に戻す。30階層ではクエストの報酬として多数の武器が用意されている。銃器ではなく、剣や槍、棍棒などの近接戦闘用の武器だ。29階層まではモンスタードロップや宝箱など、不確実な方法でしか手に入らなかった武器が、ここでは大盤振る舞いと言っていい。AMBが効きづらくなっていくことも合せて考えれば、「次元迷宮の意図」は明白である。


【ここから先が、本当の冒険だ】


 30階層、その31階層への降り口のところには、そのメッセージを伝える石版が必ず置かれている。「スタンピードを防ぐため、あるいは効率よく稼ぐために次元迷宮に挑んでいるのならここまでにしておけ」と、そういうメッセージだ。


 実際、31階層以降は探索や攻略を行わないことにした国もある。もちろんそれは国軍を運用する上での方針であり、民間の探索者が挑むことを禁止しているわけではない。だが国がそういう判断をするほど、31階層以降は割に合わない。銃器中心、つまりAMBに頼った攻略であるほどそう言える。


 さらに31階層以降への挑戦を躊躇わせる要因がもう一つ。50階層だ。50は25の倍数だから、そこはセーフティーエリアである。だが10の倍数でもあり、本来なら転移石のドロップ率が十倍になるはずのエリアでもある。だがセーフティーエリアにはモンスターが出現しないはずで、つまり50階層の転移石は手に入らないのではないかと考えられているのだ。


 もちろん50階層の転移石が手に入る可能性もある。だがその場合、50階層はセーフティーエリアではないことになる。セーフティーエリアなしでその周辺やより下の階層を探索したり攻略したりするのは大変だろう。つまりそこでまた攻略は足踏みすることになる。そういう将来が見えてしまっているのだ。


 ただその一方で、30階層のクエスト報酬にエリクサーはなかった。若返りの秘薬も蘇生薬も毛生え薬もない。これらのアイテムは人類の夢とも言うべきモノで、人類の欲望は大いに刺激されている。


 それらのアイテムの実在を疑う者も多い。ただ石版からの情報によれば、それらのアイテムは【ある】。世界中の大富豪や製薬会社が巨額の報奨金を約束していることもあり、ともかく45階層を目指そうとしている探索者は少なくなかった。


 さて、ここまで次元迷宮の攻略や探索の現状についてつらつらと記述してきた。ただここまでで触れていない、それでいてとても重要なファクターがある。1.0kg以上の魔石をドロップするモンスター、「ボスモンスター」である。


某狂人「え、15階層くらい1日で行けるでしょ?」

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― 新着の感想 ―
[一言] 中国とインドの国境で殴り合う軍隊・・・ リアルパイセーン 個人的には異世界側も面白そうだなとは レジャー施設か意外と雇用で役に立つかしそうだし。
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