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World End をもう一度  作者: 新月 乙夜
オペレーション:ラビリンス

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次元迷宮No.12752その4


 魔石一〇個  → 赤ポーション一個    リキャストタイム:三〇日。

 魔石三〇個  → 赤ポーション五個    リキャストタイム:一六〇日。

 魔石九〇個  → 白紙の魔道書      リキャストタイム:三年。

 魔石一二〇個 → 鑑定のモノクル     リキャストタイム:五年。

 魔石二五〇個 → マジックポーチ(3㎥) リキャストタイム:一〇年。


 以上が秋斗が紙に書いて提供した、新たな石版に関する情報である。対応してくれているのは買取所の責任者の男性で、彼はそのメモ用紙を見てからテーブルの上に視線を動かす。そこには証拠となる物品が並べられていた。


「なるほど、確かに全て揃っていますね……」


「では、これで信じてもらえたでしょうか?」


「はい、確認いたしました。ただ情報料をお支払いするには、石版の場所を教えていただく必要があるのですが……」


 男性の言葉に秋斗は大きく頷く。ただここで問題が一つ。次元迷宮No.12752は一般開放を急いだせいで、三階層の完成された地図がまだないのだ。だから地図上で「この辺」と言うことができない。それで二人は連れ立って実際に現場へ向かうことにした。


「岩壁を十数メートルくらい登らないとなんですけど、大丈夫ですか?」


「うっ。い、一応ロープを持っていきましょう」


 責任者の男性は頬を引きつらせながらそう言った。男性が動きやすい服装に着替えるのを待ってから、二人は連れ立って次元迷宮No.12752へ入場。三階層へ向かった。そして目的地へ着くまでの間、男性は色々と話を聞かせてくれた。


「へえ、それじゃあ、今注目されているのは、緑ポーションなんですね」


「そうですね。赤ポーションも需要は大きいですが、こちらは供給量も増えたので。青ポーションは、一応使い道があることは分かったので、これからくるかも知れませんね」


「ああ、あのパキスタン人の」


「そうです、そうです」


 責任者の男性はそう言って大きく頷いた。青ポーションは「経口魔力回復薬」だ。だがこれまでそもそも魔力の存在が疑問視されていた。それが魔法が確認され、さらに魔法を使い続けると虚脱状態になることが分かり、それで「魔力も存在するのだろう」と言うことになったのだ。


 ただ現在はまだ魔法を使える者は少ない。それで青ポーションの需要も大きくないのが現状である。その一方で大きく注目されているのが緑ポーション、「経口状態異常回復薬」だ。本来は次元迷宮内で毒を受けたときなどに使用するアイテムなのだが、これが普通の病気にも効果があることが分かったのである。


 使用例は幾つも報告されているが、一例を挙げると、末期のガン患者に投与された例がある。緑ポーション一つで末期ガンは完治しなかったものの、明らかに症状は改善。手術によって全てのガン組織を取り除くことができた。他にも慢性病の緩和、アレルギー症状の根治、アルツハイマー病の回復など、奇跡とも思えるような報告が世界各地から上げられている。


 今や世界中の製薬会社が緑ポーションに強い関心を示しており、ある会社は研究費も含めて一〇〇億ドル以上の投資を発表したとか。こちらの過熱ぶりも相当なモノだ。これも次元迷宮バブルの一つと言えるかも知れない。


「そう言えば、三階層で石版が見つかるのはやっぱり珍しいんですか? 十五階層はいっぱいあるって聞きますけど」


「そうですね。特にクエストの石版が十五階層以外で見つかるのは珍しいですが、例がないわけじゃないですよ。二階層で見つかった例もあります。ただ、今回もそうですが、便利とは言い難いパターンが多いですね」


 今回の場合で言えば、リキャストタイムが長い。十五階層の場合、報酬が赤ポーション一個なら、リキャストタイムは三時間程度が相場だ。だが秋斗が見つけた石版は一ヶ月。魔石だけで手に入るのは良いが、とても便利とは言い難い。


「ラインナップは結構豪華だっただけに、ちょっと惜しいですね。まあ、そんなに楽じゃないぞって事なんでしょうね」


 責任者の男性がそう言うと、秋斗も笑って同意する。さてそんな話をしている内に、二人は目的地に到着した。三階層の隅っこ、そそり立つ岩壁を二人は見上げる。秋斗は濃い霧が立ちこめるその少し下を指さしながら、買取所の責任者の男性にこう言った。


「ほら、あそこ、少し平らになっているように見えるでしょう?」


「……ああ、はい、そうですね」


「あそこです」


 秋斗がそう言うと、責任者の男性は頬を引きつらせた。彼は岩壁を見上げ、ゴクリと唾を飲み込む。そして顔を強張らせながら「行きましょう」と言った。


「大丈夫なんですか?」


「凹凸が多いので、たぶん……。それにロープを持ってきたのはいいのですが、実は固定方法が……」


 うっかりミス、と言うべきか。責任者も大変である。ともかく二人は岩壁を登ることになった。最初に秋斗が登り、次に男性が登る。手の届く距離まで登ってきた彼を、秋斗は右手を伸ばして引き上げてやった。


「はぁ、はぁ……。よく、魔石を担いで登れましたね……」


「頑張りました」


 秋斗がそう答えると、責任者の男性は苦笑を浮かべた。確かに頑張る以外の方法はない。そして彼の呼吸が落ち着くまでの間、秋斗は石版を見つけた時のことをこう説明した。


「下から見上げて、空間がありそうだったから登ってきたんです。何かあるかと思って。でも見渡す限りは何もなくて。ちょっとイラついて鉄パイプを振り回したら、偶然岩壁の一部が崩れて、そこに石版があったんです」


「……鉄パイプも持って上がったんですか?」


「はい。下に置いておいて、スライムに喰われたら大変なので」


「なるほど」


 実際、そういうケースは幾つかあり、責任者の男性は簡単に納得した。そして二人は石版の方へ近づく。男性はそっと石版に触れた。


「……確かに納品クエストですね……。項目とリキャストタイムも報告いただいた通りです」


 そう言いつつ、彼はリキャストタイムの残り時間に注目していた。そこからどんな順番で納品をこなしたのか、そして何時間くらいかけて魔石を集めたのかが分かる。


(最初に一番少ない項目をやったのはお試しですか。三階層まで来てるのだから、魔石の十個くらいは持っていても可笑しくない。そしてすぐに一番多い項目に狙いを定めた。手持ちの分も含めて一階層で魔石を集め、手に入れたのがマジックポーチ。運が良かったですね。マジックポーチがあれば、魔石集めの負担は軽減される……)


 責任者の男性は秋斗の行動をトレースして納得した。そもそも現実にこうしてクエストの石版はあるのだ。不審な点はない。彼は秋斗の方に向き直ってこう言った。


「情報の確認が取れました。ご足労いただき、ありがとうございました」


「いえ。じゃあ、戻りましょうか?」


 秋斗がそう言うと、責任者の男性はまた頬を引きつらせた。ヒィヒィ言いながら岩壁を降りて買取所に戻ると、彼はグッタリとしてテーブルに突っ伏す。秋斗が苦笑していると、受付のお姉さんがお茶を淹れてくれた。ちなみに彼女も苦笑していた。


「し、失礼しました。それでまず買取りですが、お売りいただけるのは赤ポーションを一つ、でよろしかったでしょうか?」


「はい」


「……他のアイテムは、いかがなさいますか?」


「ポーションとモノクルとポーチは自分で使います。魔道書はまた値段が上がるかも知れないので、それを期待してもう少し待ちます」


「分かりました。では気が変わりましたら、持ち込みの方をお願いしますね。赤ポーションですと、今の相場で一個三〇万円になりますが、よろしいでしょうか?」


「はい、お願いします」


「畏まりました。それで情報料ですが、クエストの石版の情報で確認が取れたものについては、一律で五〇万円になっております。よろしいでしょうか?」


 ちなみに、例えば十階層くらいの場所に石版があった場合、現地へ行くだけでも一苦労なので、確認を自衛隊などに依頼することになる。それでこの場合は「確認が取れていない」とされ、報酬は三〇万円になる。


 ただし情報料が支払われるのは情報が正しかったと確認されてから。「確認が取れていない」という扱いなのに「確認がとれてから」じゃないとお金が入らないのである。要するに確認のための手数料が引かれている、と言うことだ。


 閑話休題。提示された金額に秋斗は頷いた。ただし八〇万円(二割が税金で持っていかれるので手取りは六四万円)をすぐに受け取れるわけではない。買取り金額が五万一円以上になる場合は口座振り込みになり、しかも振り込まれるのは翌月の末日。要するに一ヶ月以上待つ必要があるのだ。


 とはいえ、秋斗は今すぐに現金が必要というわけではない。彼はマイナンバーカードを取り出して手続きを行った。マイナンバーカードには公金受取口座が紐付けされており、お金はそちらに振り込まれるようになっている。


 またマイナンバーカードには顔写真も載っているので、次元迷宮への入場手続きもこれでできる。一枚で入場手続きも買取り窓口での手続きもできるとあって、政府はこれをテコにマイナンバーカードの普及を進めていた。


 それはともかく。窓口での手続きを終えると、秋斗は次元迷宮には入らずに帰宅した。家に帰ってくると、彼は「ふう」と息を吐く。これでおおよその「アリバイ作り」は完了した。実際にはもう少し深い階層へ潜っている様子を見せる必要があるのだが、そちらはおいおいやれば良い。


「これで、あと必要なのは……」


 これで、あと必要なのは魔法の開発のみ。ゲートの簡易封印魔法。これを開発するのだ。


責任者さん「ロッククライミングを習うべきでしょうか……?」

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