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マヨマヨ~迷々の旅人~  作者: 雪野湯
第十章 アクタ

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マヨマヨの正体

「サシオン、マヨマヨとはなんだ?」

「マヨマヨ――正しくは、迷い迷いて迷いざるを得ない旅人。彼らも我らと同じ、別世界の存在だ」

「……俺たちと、何が違う?」

「彼らは自分の世界に戻ることを強く望んでいる。とても、強くなっ」


 サシオンは語尾に力を入れ、強調する。

 故郷に対する帰還への思いが尋常ではないということか。

 そして、それは同時に。


「あいつらの望郷の念が、今回の襲撃に関係して?」

「ああ、彼らは王都の地下に眠るコトアの殺害を目指して襲ってきた」

「そういや、王都の地下には女神様がいるんだっけ?」

「ん、ご存じなのか?」

「え……うん、ちょっとね」


「驚いた。まさか、一部の人間しか知らぬ情報を得ていようとは。フフ、ヤツハ殿はやはり油断ならぬ御仁だな」

「ふふ、買いかぶりすぎだよ」


 はい、まさしく買いかぶりすぎ。

 ティラがぽろっと口を滑らしただけだし。

 そんなことサシオンに話したら、ティラが怒られそうなので黙っておいてやろう。



「ま、それはともかく、サシオンって妙に地下水路に神経を使ってたよね。やっぱり、それって女神の存在のことで?」

「気づいていたか。そのとおりだ」


「なるほどねぇ。話を戻すけど、なんでマヨマヨは女神様を襲おうと?」

「アクタの結界を壊し、故郷へ帰るためだ」

「結界?」


「この世界は情報の断片を積み上げて作った歪な世界。それゆえに非常にもろい。そのためコトアはアクタを結界で覆い守っている。ただ、情報を集める彼女の特質上、結界があれど、外からの侵入は容易であるが」


「外からは? ってことは中からは?」

「脱出は困難だ。さらに困ったことに、アクタに情報が蓄積するにつれて、あちらこちらに綻びが出てきた。現在、コトアは綻びの修復のため、王都の地下で情報の安定に注力している。非常に無防備な状態だ」



「基本、一方通行。そして、女神様は弱っている。だから、マヨマヨはこの機会に女神を殺し、結界を壊して自分の世界へ戻ろうと……一部開放とかできないの?」


「やれないこともない。しかし、エネルギーの制御が難しい。僅かでも制御を間違えれば、どれだけの情報が無に消えるかわからない」


「それって、突然誰かが消えるってこと?」

「人だけではない。山や湖。村や国。下手をすれば大陸丸ごと消える可能性もある」

「それは厳しいなぁ。でも、襲ってきたマヨマヨはそれも構わずに……」

「たとえアクタが消えてなくなろうと、故郷へ戻れるなら構わないということだろう」


「無茶苦茶だな。いくら、帰りたいからって、世界を犠牲にするなんて……」

「以前はそこまではなかった。彼らは世界を旅し、アクタに舞い込む情報を集め、そこから帰還の可能性を探っていた。誰も傷つけることなく帰る方法を」


 

 世界を旅する――この言葉に、以前アプフェルから聞いた話を思い出す。


「マヨマヨたちはよく遺跡とかに出没するってアプフェルから聞いたけど、もしかして?」

「遺跡……つまりは、様々な宇宙から舞い込んだ情報。そこに眠る知識を駆使し、アクタの壁を安全に開こうとしていた。だが、一部の強硬派が……」


「強硬派? そいつらが王都を襲ってきた連中か……ということは、逆に穏健派の存在も?」

「今までのように、時間を掛けて帰還の可能性を模索している者たちもいる。そして、今回の襲撃はその穏健派から情報を貰い、準備をしていた」

「それで、そうそうたるメンバーが城に集まっていたんだ」

「王を守るというよりも女神コトアを守るためにな」


「はぁ~、なるほど」



 やっぱり、サシオンらは襲撃を知っていた。

 襲撃を知っていて、民の守りを捨て、城……その地下に眠るコトアに重きを置いた。

 

(コトアがやられたら世界消えるわけだし、仕方ないと言えば仕方ないけど、でも……)


「サシオン。襲撃を知っていたなら、街の防備はもうちょっと対処の方法があっただろ?」

「それについては面目ない。しかし、人手が足りぬ。マヨマヨと呼ばれる彼らは強大。アクタの住人では相手にならぬのだ」


「そんなに? たしかにノアゼットと戦ってたマヨマヨは、俺なんかじゃ到底相手にならないくらい強かったけど。でも、アクタにだって凄い魔導士がいるよね。何とか対抗できないの?」

「彼らは様々な世界からやってきている。故に、科学も魔法の知識もアクタ人を上回っている。身体機能もまた、アクタ人を遥かに超える」



「そうなの……そんなの相手によく守りきれたね」

(いず)れ、強硬派が痺れを切らし、この日が訪れることは予測していた。そのために女神の黒き装具を造っておいたのだ」


「女神の黒き装具は女神様の贈り物だって聞いたけど? 造っておいたって?」

「私がこの日のために造った、対迷い人の兵器だ。それを女神の名を借り、六龍へ提供した」

「サシオンがっ!? あんた、何もんだよっ!?」


「私は現在、アクタに住まう異世界の者たちの中で、最も技術の進んだ宇宙からやってきた人間だ。だから、彼らに対抗できる肉体・武器・技術・魔法を提供できる」

「そういや、俺とは違う他の宇宙っぽい話をしてたな……ちょっと待ってくれ、情報を整理したい」

「ああ、いくらでも待とう」


 サシオンは腕を組み、深く椅子に腰を掛けた。

 俺は今まで聞いた情報をまとめていく。



 1・この世界は他の世界の情報を積み上げて作った、ツギハギだらけの世界。だから、日本などのアクタとは違う文化の痕跡がある。

 時間の流れはアクタに住まう者たちの意識を頼り、共有できる流れを生んでいる。

 

 2・アクタは歪な世界であるため、非常にもろい。なので、コトアが世界を結界で覆い守っている。結界に穴が開けば、アクタの情報は無に消える。

 また、現在コトアは世界の修復のため無防備な状態。


 3・マヨマヨは、故郷への帰還を渇望する存在。一部のマヨマヨは女神を殺して、結界を破壊しようとしている。しかし、結界を破壊されるとアクタは滅びる。


 4・女神の黒き装具。アクタ人ではマヨマヨに対抗できないため、サシオンが対マヨマヨ兵器として造ったもの。



 長々とした話を簡単にまとめ終え、女神の装具の続きを尋ねる。

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