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マヨマヨ~迷々の旅人~  作者: 雪野湯
第七章 深まるアクタの謎

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王都の地下へようこそ

 裏通りの一角にある井戸の真下には小川が通っており、その小川を挟むレンガ造りの壁には封印付きの鉄製の扉が備え付けられていた。

 地図と同じくサシオンから預かった魔力の宿る鍵を使い扉を開けると、すぐに下へ続く階段が目に入った。


 

 俺が先頭に立ち、人差し指を立てて魔力を込める。

 指の上には、光の魔法の球体がほわんと浮かぶ。

 エクレル先生の下でみっちり修行をさせられているおかげで、この程度の下位魔法の制御ならお手の物。


 クラス3以上の上位魔法は精神と身体の不一致で安定しないけど、使えないわけじゃない。

 ただ、使えば制御が甘いので、周りに無用な被害を広げてしまう。

 これについては、今のところ日々鍛錬しかない。



 俺は光球を得意げに振り回し、周囲を照らし出す。

 するとそこへフォールが、「ランプがありますよ」と言いながら鞄からランプを取り出してきた。


 俺は小さく「そう」と答えて、光球を引っ込める。

 なんだか、恥ずかしい……最後尾にいるアプフェルは口を押さえて笑っている。


 俺を先頭に、フォール、スプリ、アマン、ウィター、アプフェルの順で階段を下りていく。

 そうして何十段も続く階段を降り切った先には、俺たちの心を奪う光景が広がっていた。



「おお~、地下水路って、こんなにデカいんだ……」

 

 天井は高く、俺の身長の三倍はある。整備用に用意されている道は大人三人が横並びになっても楽々に通れる広さ。

 周囲の壁や道は表面がつるつるとしていて、石とも金属とも言い難い不思議な材質でできていた。

 

 道脇には簡単なフェンスが設けられていて、先には水が流れている。

 フェンスから顔を出して、水を眺める。

 水の通り道は整備された用水路。

 おじいちゃんは整備された川が流れていると言っていたけど、これのことだろうか?

 水深は1mほど。横幅は3mくらい。流れは結構早い。

 水はとても高い透明度を誇っており、流れがなければ水の存在すら感じさせないほど。

 


 視線を周囲に向ける。

 水路の壁の要所要所に明かりが灯されている。

 動力源は分からないが、蛍光灯やLED照明のような人工的な光だ。

 光は通路を十分すぎるほどに照らしている。

 これなら、ランプを持ち歩かなくても支障はない。


 俺たちはランプをしまい、スプリから地図を受け取り広げる。

 地図は水路の全体図ではなく、賭博場とその周辺のもの。

 


 今回、捜査対象となる場所は賭博場と人身売買の会場の二つ。

 しかし、人身売買の会場はフォレの部隊が表と地下水路から挟撃をかけるのでそっちに気を回す必要はない。

 よって、俺たちは賭博場の地下水路の裏口だけを見張っていればいい。

 

 こっちもサシオンと共に挟撃をかければ仕事はやりやすいけど、おそらくサシオンはアマンの身の安全のために、わざと俺たちに見張りだけの役目を振ったのだろう。

 

 でも、これだと仕事に参加したという建前が少ない気がする。

 となると、サシオンだけで十分処理できても、わざと何人かこちらへ逃がしてくる可能性が高い。

 逃げてくるのは大した敵じゃないだろうけど、油断しないように気をつけないと。




「うんじゃ、行きますか」

 道順の確認を終えて地図を閉じ、みんなへ目を向ける。

 だが、みんなは俺がまじめに仕事をしているというのに、地図ではなく地下水路に目を惹かれていた。

 

 アマンは水路に流れる水を見ながら、おっきなお目々を燦々(さんさん)とさせて、黒しっぽをクネクネ動かしている。

「素晴らしいです。地下水を利用しているのでしょうか? しかし、この清らかな水。地下水とはいえ、ここまで美しいなんて」


 アプフェルは壁にある照明を観察しながら、片耳を折って首をかしげている。

「魔力を感じない。電気? じゃあ、これって未知の技術? この地下水路は女神様がお与えになった失われし技術なのかな?」


 ほかの兵士三人も辺りを物珍しそうに見回している。



「おいおい、君たち。仕事中だっての。興味深いのはわかるけどあとにしろよ」


 そう、声をかけると、みんなはごまかすような笑顔を浮かべて、仕事へ意識を戻した。

 しっかりと仕事に集中しろよ、と言いたいところだけど、みんなの気持ちはわからないでもない。


 周りにあるのは明らかに『アクタ』の、『ジョウハク国』の技術を超えている。

 それどころか、地球の技術さえ上回っている。

 俺は水路へ目を向ける。


 

 地球で使われている水道だって、水道管には汚れがたまっていく。

 しかし、ここの水路には一片の汚れも存在しない。

 地下水利用しているのなら、不純物がゼロなんてないはずなのに。

 

 ということは、完全に水を浄化できる施設があるということか?

 だけど、それをもってしても、ここまで美しい水。水苔すら生えない水路を生み出せるだろうか? 水路自体に何か特殊な加工が?

 アプフェルはこれらを女神の与えた技術と言っていたが、その一言で片づけてしまうには乱暴すぎる。

 

 おまけにこの水量。

 以前、各家庭に風呂がないのは水が貴重だからだと考えたことがあった。だけど、どうも違うみたいだ。

 ならば、風呂釜を設置する費用の問題か?

 井戸から水を運ばなきゃいけないし、面倒だから?

 でも、これだけの水路があるなら、蛇口だって作れそうなんだけど……何で、こんなにも技術に幅があるんだろう……?


 そこで俺は首を横に振った。


(あ~、ダメダメ。仕事に集中しろって言った奴が何を。それにどのみち、いま考えてもわからない。なら、考えても仕方がない。どうしても知りたければ、あとで調べればいいことだ)



 俺たちははしゃぐ好奇心に休んでもらい、一路、仕事予定の現場まで向かう。




評価点を入れていただき、ありがとうございます。

お二方からの評価に思いもよらず驚いてしまいました。

これからも頂いた評価に応えられるよう頑張っていきたいです。

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