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不良令嬢と残虐鬼辺境伯の政略結婚!!  作者: 桜あげは 


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43/99

43:新人兵士の洗礼

「クレア様、こちらが僕と同じ新人、ガガとポポの兄弟です。ポポの年齢は僕と同じで十六歳。ガガは一つ上の十七歳です」


 ガガは年の割にガタイの良い体をしている。逆にポポは細くて小柄だ。

 ボルドを含めた三人とも、辺境にある小さな村の出身らしい。

 このゼシュテ国では、畑や家を継ぐ長男以外は、こうして兵士に志願することが多い。


「おいおい、伝説のすごい兵士が来ると聞いていたが……なんだこれは? 女に優男? 本当にこれがうちの隊長になるのか?」


 腕を組んだガガが、挑発するようにじろじろとクレアたちを見ている。

 彼の後ろには金魚の糞のようにポポがくっつき、同じく腕を組んでふんぞり返っている。

 新人仲間の反抗的な態度を見て、ボルドはオロオロし始めた。


 ガガとポポはクレアがサイファスの妻だと知らないらしい。

 そして、戦場で自分たちを救った「伝説の新人兵もどき」だとも気づいていない。

 ものすごく不遜な態度だった。


「あはは、懐かしいねえクレア。王都でも、こういう奴らがいっぱいいたよねぇ! 全部潰したけど」


 アデリオは思い出に浸っているようだ。


「駄目だぞ、アデリオ。こいつらはサイファスから預かった大事な兵士だ。潰すと後が面倒だろう?」

「えー……。いいじゃん、その時は一緒に国外に逃亡しようよ」


 二人で話していると、ガガが割り込んできた。

 自分を無視されたと思った彼は、けんか腰で怒鳴る。


「おい、お前ら! 嘗めてんのか!」

「そうだ! 無視してんじゃねえよ!」


 ガガの後ろではポポも一緒になって叫んでいる。

 クレアは顔を真っ赤にしたガガとポポをチラリと見て言った。


「上官に向かって反抗的な態度は良くないぞ?」

「クレアが言うと説得力皆無だね。俺は覚えているよ。王都から行軍した際、クレアが当時の上官に……」

「あれは、あいつが仕事を邪魔したり、阿呆な指揮を執ったり、俺の酒を全部没収して飲みやがったからだ!」

「最後のが一番大きな理由でしょ?」


 再び無視されたガガは我慢ならないといった表情で腕を振り上げる。


「たから! 俺たちを無視するなっ!」


 勢いよく下ろされた腕が空を切る。

 クレアもアデリオも、軽々とガガの攻撃を避けていた。


「ちきしょう! ちょこまかと逃げやがって。正々堂々と……」


 自分が不意打ちしてきたくせにぼやくガガは、次の瞬間声を失う。


「――っ!」


 彼の臑にアデリオの蹴りが見事決まったからだった。

 痛さのあまり、ガガは地面に倒れて蹲り、足を抱えて悶絶している。


「アデリオ、いきなり急所を狙ったのか」


 戦いで暴れるのが楽しみなクレアは、試合の時にわざと手を抜いて相手の出方を見たりする。

 しかし、アデリオは問答無用で確実に相手の急所を狙って沈めに来るのだ。

 ある意味、クレアより危険人物だった。


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