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タナカ・ハナコは聖女ですか?〜彼女の堕落的異世界生活〜  作者: 陸路りん


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エレノア・ホワイトは聖女だった②

 その出来事を夢で思い出しながら、エレノアは目を覚ました。

「お嬢様」

「なんだい? ケイト」

 薄桃色の瞳をして栗色の髪を綺麗に結い上げた侍女、ケイトが封筒を持って近づくのに水色の髪をした聖女ことエレノアはベッドの上で寝ぼけ眼を擦りながら応じた。

「なんか婚約破棄だそうです」

「はぁ?」

「この手紙届けにきた人が言ってました」

「……それって事前にネタバレしてていいものなの?」

「さあ?」

 二人は目を合わせて首を傾げる。

「とりあえず準備しようか」

 考えても仕方がないのでエレノアは言った。

「はい」

 ケイトも冷静に頷くとエレノアの支度をすべく、作業へと戻った。 エレノア・ホワイト。彼女はこのリジェル王国に存在するホワイト伯爵家のご令嬢であり、聖女であり、そして日本からの転生者であった。

 この世界は『純☆愛、命短し騎士せよ乙女っ!!』というタイトルの乙女ゲームである。前世である日本とはまるで違い、絶対王政であり、貴族が存在し、そして魔法や精霊の存在する世界だ。

 そのことにエレノアは『守護精霊』の存在によって気づいた。

 この世界の人間は生まれてくる時に必ず『守護精霊』と呼ばれる動物の姿をした自身の分身とともに生まれ、そしてその守護精霊の姿は自身の生まれ持った性質や精神面の成長により、その姿や能力が変化する。エレノアにも黒いカラスの姿をした守護精霊、ローズが生まれた時から共にいた。そして聖女であるエレノアの守護精霊ローズの持つ能力は傷や病を癒やす治癒の力であった。

(先日の『ロラン』という男は自らの守護精霊の名を『アーロ』と言っていたな)

 銀色の毛並みが見事な大きな犬だった。

 エレノアはちらりと侍女のケイトを見る。彼女の肩にもリスの姿をした守護精霊アネモネが乗っていた。

 とはいえ、エレノアはその乙女ゲームのヒロインでもなければ引き立て役でもなく、はてはモブですらもおそらくない。

 エレノアの推測が正しければ、ここは乙女ゲームの舞台となる国の隣国、しかも今はそのゲームが開始する結構前の時代だと思われるからだ。

 エレノアの記憶の中で乙女ゲームの舞台となる国は『アゼリア王国』であった。そしてそれは隣国の名前である。

 しかしその国の王子の名前は乙女ゲームに出てくる王子『アズレン・アルタイル・アゼリア』ではない。

 エレノアが伯爵令嬢と聖女の地位を使って調べたところ、過去数百年にわたってそのような王子の名前は存在しなかった。

 そしてさらにはゲームで出てくるような便利な文明機器がこの世界には存在しない。

 普通に冷蔵庫や電子レンジのような物が存在していたゲームである。そのエネルギー源は電気ではなく『魔導石』という精霊の核ではあったものの、電子機器と呼んで差し支えないものがゲームには登場していた。

 しかしそれがこの世界にはない。

 火を焚かないと料理はできないし、風呂もたけないし、食べ物を保存するには干物や燻製にするしかない。

 つまりはそういうことだ。

 ちなみにエレノアの前世の名前は田中花子である。

 このあまりにも古風な名前は実の両親がつけた名前ではない。捨てられていた孤児院の院長がこれまで何十人、何百人と名前をつけてきてとうとうネタが尽き、初心に返ってつけた名前である。

(院長には悪いことをした)

 特に恩返しらしいこともせず、花子の方が先に亡くなってしまった。

 自分の精神年齢がもはや何歳なのかなどは考えたくもないが、少なくとも今の肉体年齢はピッチピチの16歳だ。

(それにしても……)

 気にかかるのはケイトの持ってきた情報だ。

『婚約破棄』とは一体何事だろうか。

「まぁ、いいか」

(行ってから考えよう)

 精神年齢から考えれば遥かに年下である婚約者殿が一体何を考えているかなどエレノアにはおよびもつかないことだ。

 彼女は思考を放棄した。

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