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452.転売屋は呪いの品を身に着ける

禍々しい雰囲気を醸し出す品の数々。


人形、指輪、小刀。


そのどれもがおどろおどろしい色と雰囲気を纏っていた。


何だこれは。


まるで呪いの宝石箱じゃないか。


「なにこれ・・・。」


「どう考えてもお宝じゃなさそうだ。」


「いや、わからないぞ。呪われていても高いものは高い。」


そう言いながら手前にあった小刀の刀身部分を持ってみた。


『人喰いの小刀。この小刀に支配された者は人の生き血を求めて無差別に襲い掛かることがある。呪われている。人の急所が見えるようになる。最近の平均取引価格は銀貨49枚。最安値銀貨10枚最高値銀貨87枚。最終取引日は419日前と記録されています。』


うむ、ばっちり呪われている。


それをゆっくりとモニカの前に移動させ、床に置いた。


呪われていたとしても装備しなければ呪いは発動しない。


その証拠に特に襲い掛かりたいと思うことはなかったし、ちゃんと手放すことが出来た。


「人喰いの小刀、銀貨25枚って所か。」


「呪われていますか?」


「あぁ、ばっちりな。モニカ、解呪は出来そうか?」


「このぐらいでしたら聖水に浸せば大丈夫だと思います。」


「つまりその程度ってことだな。ならこっちの人形はっと。」


隅のほうで此方を睨み付けるような目線を向けてくる人形をそっと手に取る。


『夜鳴き人形。夜な夜な泣き声を響かせ、身近な人間から生気を吸い取る呪われた人形。吸い取った生気は髪の毛の長さに比例するのでわかりやすい。最近の平均取引価格は銀貨5枚。最安値銀貨1枚最高値金貨1枚最終取引日は673日前と記録されています。』


「夜鳴き人形だとさ。夜な夜な泣き声を上げて生気を吸い取るらしいぞ、ついでに髪の毛も伸びる。」


「誰が喜ぶのよそれ。」


「さぁ・・・。」


「コレも解呪出来ると思いますが、正直怖いですね。」


「ねぇ、さっさと封印しようよ。」


「なんだエリザ怖いのか?」


「そ、そうじゃないけど・・・。」


ミラもアネットもあまりいい顔をしていない。


唯一問題なさそうな顔をしているのはアニエスさんぐらいなものだ。


「つまりこの箱の物は全て呪われているのですね?」


「おそらくな。価値はまぁ、全部で金貨1枚もあればいいだろう。」


「お宝どころかとんだ不良在庫じゃないか。見なかったことにして元に戻すか?」


「せっかく家を買ってくれたのにそれは不味いだろう。後々で文句言われることを考えたらきれいにしておくほうがいい。」


「じゃあどうするんだよ。」


「下手に捨てて呪われても困るし、もしそうするにしてもモニカに解呪してもらってからだな。」


危険なものを捨てて誰かに迷惑をかけるわけにも行かない。


一応呪われた品を好む客もいるし、あの人の為に置いておくという手もある。


さて、どうするか・・・。


ん?


ふと箱の置くに光る指輪に目を惹かれた。


思わず手が伸びそいつを取り出してみる。


『見極めの指輪。これを装備すると宝箱などの罠を発見できるようになる。呪われている。最近の平均取引価格は金貨5枚、最安値金貨1枚最高値金貨12枚最終取引日は467日前と記録されています。』


ミラの手に光る指輪。


あれと似たような奴が俺の手で光っていた。


だが、似ているだけでどうやら別の効果のようだ。


罠を見つけられる用になるみたいだが、熟練の盗賊はこれなしでも発見できるし、呪いの割には効果が低い。


ミラと同じく真実の指輪ならメルディも鑑定スキルを手に入れられたのに・・・って、アレはミラの頑張りもあって装備できたのであって、メルディが装備したら瞬く間に衰弱してしまうだろう。


そんな事を思いながらも、なぜか俺の手はその指輪を右手の薬指に通そうとしていた。


「あ!」


「ちょっとシロウ!?」


「ん?」


時すでに遅くアネットとエリザが慌てた頃には指はすっぽりと指に収まっている。


あれ、なんで俺はこれを?


「ちょっと早く外しなさいよ!」


「あ、あぁ・・・。」


あまりの気迫に俺は慌てて指輪を外す。


って、あれ?


外れたぞ?


「え、外れた?」


「みたいだな。」


掌の上で転がる指輪。


それを再度鑑定してみるもやはり呪われていた。


「モニカ、呪われてるよな?」


「・・・そうですね、それなりに強い呪いが掛けられています。やってみないとわかりませんがギリギリ解呪できるかと。」


「なら、なんで外れたんだ?」


「さ、さぁ・・・。」


「なんともないの?」


「あぁ、この通り問題ない。」


スポスポと自分の指で出し入れしてみるも普通に取り外すことが出来る。


でも呪われている。


いったいなぜだろうか。


「ご主人様には呪いは効かないとか?」


「いや、さすがにそれはないだろ。」


「だが、今まで呪い関係の品を扱ったが特に問題なかったな。」


「確かにそうですね。」


「でもミラさんも扱ってますよね?」


「そういった品はシロウ様に一任しておりましたから、私はあまり触っておりません。」


「モニカ、そんな事あり得るの?」


「神の祝福を授かっていれば可能性はありますが・・・、正直聞いたことはありません。」


神の祝福かはわからないが、一応神様とやらとは面識がある。


俺を掌の上で踊らせようとするような神様とな。


「つまり祝福があれば大丈夫なんだな?」


「え、授かっておられるんですか?」


「いや?」


「で、ですよね。」


「でもそれしか可能性がないのよね?じゃあこれはどうなの?」


エリザが指さしたのは箱の中に転がる腕輪だ。


どれ、本当かどうか見極めてみようじゃないか。


『手癖の腕輪。身に着けると手が素早く動くようになる代わりに、女性の体を触りたくなる呪いにかかる。たいていはその呪いの為に身を滅ぼす。最近の平均取引価格は銀貨17枚、最安値銀貨1枚最高値銀貨31枚、最終取引日は2年と151日前と記録されています。』


・・・。


ん?


呪われているけれど呪いの種類が違う?


鑑定スキルを発動させてみたものの、いつもと違う反応だった。


あれか?


たまに鑑定スキルで解らない内容が相場スキルで解るけど、あれが発動したのか?


まぁいい、とりあえずつけてみよう。


そんな軽い気持ちで腕輪を通してみる。


うん、ばっちりだ。


「どんな装備なの?」


「手が素早く動くようになるらしい。」


「へぇ、便利ね。」


「でも呪われているんだよな?」


「あぁ、なんでも女性を見ると・・・。」


ふと心配そうな顔をしたミラが視界に入った。


程よい大きさの胸に俺好みの尻。


その体を見ていると何とも言えない気持ちになってしまう。


いやいや、いくら俺の女だからって人前でそんなことは。


一瞬の葛藤をしたものの、気づいたときには尻を揉んでいた。


「え?」


「ん?今動いたか?」


尻を揉んだ感触はある。


だが、ミラは不思議そうに自分のお尻を見るだけで俺が触ったことには気づいていないようだ。


フールも俺が動いたのはわかったようだが、何をしたのかは見えていないらしい。


「ちょっとシロウ。」


「ん?」


「ミラだからいいものの、いきなり何やってるのよ。」


「お前には見えたのか?」


「確かにかなり早く動いたけど・・・。」


どうやらエリザには見えたらしい。


しかしあれだな、良い体してるよな。


程よく締まった体、でも出るところは出てるし・・・。


そう思った次の瞬間には再び手に胸を揉んだ感触があった。


エリザが慌てて自分の胸を押さえるも、ほかのみんなは不思議そうな顔をしている。


いや、アニエスさんはそうでもないか。


「ちょっとシロウ!?」


「なんだよ。」


「なんだよって、貴方ねぇ。」


「ふむ・・・、シロウ様少しよろしいですか?」


「ん?」


そんな俺達のやり取りを見てアニエスさんが近づいてくる。


エリザ同様に引き締まった体だが、エリザよりかはボリュームは少ない。


でもないわけじゃないから世の男が放っておかないだろう。


どれ、エリザと比べて揉み心地はどうかなっと。


そう思うや否や、また俺の手が目にもとまらぬ速さで動いた。


だが再びあの感触を味わう事はなく、胸に手を伸ばした所でアニエスさんに腕をつかまれてしまった。


「え、ご主人様何を?」


「あ、あれ?」


「どうやらその腕輪が悪さをしたようですね。シロウ様でしたらそんな姑息な手段を使わずに堂々と触られます、やはり呪いには掛かるようです。モニカ様、解呪を。」

「はい!」


モニカが慌てて俺に近づき、先程の腕輪に向かって手をかざす。


淡く白い輝きが腕輪を包み、しばらくして静かに消えてしまった。


「はぁ、解呪出来ました。」


「シロウ様どうぞお外しください。」


「お、おぅ。」


言われるがまま腕輪に手を伸ばし、ゆっくりと動かすと綺麗に外れた。


その途端に、さっきまで感じていた劣情がふっと消えるのがわかる。


やっぱり呪われていたようだ。


だれだよ祝福されてるから大丈夫とか言ったやつ。


あ、俺か。


「まったく、何も考えずにつけるからこんなことになるのよ。私達だったらよかったものの、モニカだったらどうするの。」


「わ、私は別に・・・。」


「痴漢で訴えられるとか最低じゃない。そんなものさっさと捨てちゃいなさい!」


俺の手から腕輪を奪い取り、エリザが箱の中にたたきつけてしまった。


あーあ、他のものが壊れるだろ。


「次からは過信して何でもかんでも身に着けちゃだめよ、わかった!?」


「へいへい。」


「まったく、もっと緊張感持ちなさいよね。」


「でもなんでさっきは大丈夫だったんだ?」


「知らないわよ、そんなの。」


本当に謎だ。


何か理由があるのだろうか。


その謎を解明するためにはまた新しい何かを身に着けてみて・・・。


いや、何でもありません。


全員の冷たい目線を浴びて俺は箱に手を伸ばすのをやめた。


ともかく秘密の部屋から出てきたものは回収したんだ、これにて引っ越しは終了っと。


はぁ後はこの回収したのをどうするか。


ちゃんと考えないとな。


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