445.転売屋は温泉で考える
町でマリーさんとハーシェさんの二人と合流し、てっきりその日に温泉へ行くのかと思ったがそうではなかった
早々に宿を確保してあったようでひとまずそこに案内されたのだが、到着後も女たちは忙しそうに準備している。
何か手伝おうとしたのだが、何もするなと部屋に監禁されてしまった。
部屋の外にアニエスさんを配置するほどの徹底ぶり。
もちろん窓の外から出るなんてのは出来そうにない。
まぁ、そこまでする必要も無いんだが何もしないというのは非常に手持無沙汰だ。
時間があるんだしビアンカの様子を聞いたり、アイルさんと商談もしたい所なんだがなぁ。
どうやらそれもかないそうにない。
「おーい。」
「なんでしょうか。」
トントンと扉を叩くと、わずかに扉が開きアニエスさんがのぞき込んでくる。
そんなに警戒しなくても俺じゃ逃げ出すこともできないだろう。
力量差がありすぎる。
「腹が減ったんだが・・・。」
「夕食はもうすぐです、これを食べてしのいでください。」
「・・・干し肉?」
「非常食です。」
「それはわかる。だがどこから取り出した?」
「女性にそれを聞くのはタブーですよ。」
「むしろそんなところから出すなって言いたいんだが。まぁいい、遠慮なくもらう。」
心なしか人肌に温まった干し肉を受け取り、それを咥えて待つこと30分ほど。
「お待たせしました、食事の準備が出来ましたので出発します。」
「宿で食うんじゃないのか?」
「今日はビアンカ様の所で頂きます。」
「ビアンカの所で?」
「宿だと迷惑が掛かりますから、あそこならば多少騒いでも問題ありません。」
迷惑がかかるって、いったい何をするつもりだろうか。
流石に今回の人数は無理だぞ?
いくら薬があったってさすがにそれは・・・。
とか考えながらビアンカの家へと移動したが、用意されていたのは名産のキノコをふんだんに使った鍋だった。
もちろん薬なんかが入れられている様子もない。
食べても特に下半身に違和感はないし、女たちがにぎやかに話をするだけでその日はあっけなく終了した。
もちろん夜のお楽しみもない。
本気で俺を休ませるつもりのようで久方ぶりにゆっくり眠った気がする。
迎えた翌朝。
簡単な朝食を済ませて大量の荷物と一緒に俺達は温泉へと出発した。
「ハーシェさん大丈夫か?」
「このぐらいなら大丈夫です。」
「まさかこんなに綺麗に整備されてるなんてね。」
前に来たときはかなり足場が悪かったのだが、今は不要な木が切り倒され地面も踏み固められている。
これならハーシェさんがこける心配もなさそうだ。
「アイルさんはあそこを整備して住民に開放したいそうです。」
「ふむ、そうなるとあまり使えなくなるな。」
俺達だけの空間だからこそ、安心して利用できたんだが・・・。
温泉を独り占めしようってのがそもそも間違いないのだが、秘境が無くなるのは正直寂しいな。
「でも、開放すると言っても住民だけですし正直他の人は温泉好きじゃないみたいで。」
「まじか。」
「一応魔物もいますからね、冒険者が少ないので駆除が追いつきません。わざわざ危険を承知で温泉に入るぐらいなら家に大きなお風呂がありますから。」
「家がでかいってのはうらやましいな。」
「あら、シロウだって大きな家買ったじゃない。」
「それとこれとはまた別だ。外で入るからいいんだよ。」
「倉庫の上じゃだめですか?」
「やっぱり温泉がいいなぁ・・・。」
風呂と温泉は別物なんだよ。
確かに倉庫の上に作った風呂はなかなかのものだが、やっぱり違うんだよなぁ。
そんな話をしながら森の中を進むこと一時間ほどで目的の温泉へと到着する。
突然森が開け、岩場の真ん中に湯気が上っている。
他に客はいないようだ。
「だー、やっとついた。」
「シロウ様とハーシェ様はそこでおくつろぎください、すぐに天幕の準備をしたします。」
「え、でも・・・。」
「整備されていたとはいえ慣れてない道を歩いたんだから、無理が出るといけないわ。」
「そうです。その為に私達は来たんですから。」
手ごろな岩に腰を下ろしている間に、女たちがてきぱきと設営を終えてしまった。
「準備できたわよ~。」
「こっちもです、お着替えはこちらでどうぞ。」
「ってシロウもう脱いでるし。」
「もう見られてるしな。」
あ、誤解が無いように言うがマリーさんとアニエスさんとは致してない。
が、裸は見られているはずだ。
っていうかそういうの気にする二人じゃないし。
一応マナーとして前は隠してるぞ?
ちゃんと駆け湯をしてからゆっくりと湯につかる。
絶妙な湯加減だ。
「あぁぁぁぁぁぁぁ。」
「湯加減はいかがですか?」
「最高。」
「それはなによりです。」
なぜかうれしそうな顔をしたミラが俺の近くに寄ってくる。
まだ服は着ているようだ。
「入らないのか?」
「食事の準備が終わりましたら入ります。それまでは・・・。」
「私達がご一緒しますね。」
「よ、よろしくおねがいします。」
「あ、ずるい!」
アネットとビアンカが前を隠しながら入ってきた。
乳白色の為残念ながら見えないが、俺の横にすっぽりと収まった。
遅れてエリザがバシャバシャとやってくる。
前?
隠してるわけないだろ。
「もう少し大人しく入れよ。」
「だって・・・。」
「今回はそういうことなしなんだろ?せいぜいゆっくりさせてもらうぞ。」
「でもおさわりはありだけど?」
「余計したくなるだろうが。」
とか言いながらも横に座るアネットとビアンカの乳をしたから揉み上げる。
うん、アネットは張りがありビアンカ感度がいい。
横で震えるビアンカを見てエリザが俺をにらみつけてきた。
「その手は何よ。」
「なんだろうな。」
「見えないと思ったら大間違いなんだから。」
「とりあえずお前は隠したらどうだ?」
「いいじゃない減るもんじゃないんだから。」
そう言いながら俺の足の間に入ってくる。
まだ臨戦態勢ではない俺のブツを背中に当てながらエリザが大きく伸びをした。
ぶっちゃけ腕が邪魔だ。
「あ~、気持ちいいわね。」
「頭は寒いんですけど、首から下はぽかぽかです。」
「癖になるよな。」
「私もたまに来るんですけど、やっぱり冬が一番気持ちいいです。」
「夏は夏の良さがあるが、でも一番は冬だな。」
「ですよね!」
やはり温泉は冬だ。
それからしばらくしてマリーさんとアニエスさんが中に入ってきた。
流石にマリーさんはしっかり隠していたが、アニエスさんは堂々としている。
エリザ同様見られても問題ないらしい。
「失礼します。」
「お、おう。」
「マリー様今ですよ。今なら大胆に行っても問題ありません、揉んでもらうんです。」
「アニエス、そんなこと言ったらだめです。」
「情緒もへったくれもないな。」
「子を一人孕ませておいて、今更でしょう。さぁ次の座を狙いますよマリー様。」
「獲物かよ。」
とかなんとか言いながら、二人の胸と尻を堪能する。
最初は抵抗していたマリーさんだったが、最後はなかなかに大胆だった。
一度休憩をはさみ、最後に入ってきたのがミラとハーシェさんだ。
妊婦も入れるお湯ってことは確認してあるらしい。
「少しは疲れも取れましたでしょうか。」
「おかげさんで。」
「それは何よりです。」
「あぁ、気持ちがいいですね。」
俺の腕を枕にするようにして、二人が首まで湯につかっている。
その表情はまさに至福。
この顔を見れただけでもここに来たかがあったってもんだ。
「これからはあまり頻繁にこれそうにないな。」
「開発されるとそうなるでしょう。」
「いっそのこと買収されますか?」
「いや、さすがにそれは・・・。」
「そうですか。ビアンカさんの所では不評でもナミル様たちには好評かもしれません。特に貴族はこういうのに目がありませんから。」
「珍しさが勝るって?」
「そうです。特別感を演出して、貸し切りの温泉とすればこぞって来そうなものですけど。」
さすがハーシェさん、目の付け所が違うな。
特別感か。
確かにすぐに入れる風呂よりも、はるばる訪ねてきた方が充実感が違うよな。
「食事を提供し、豪華な天幕で眠りにつく。頭上には満天の星空、目の前には癒しの温泉。流行らない理由がありませんね。」
「あとは安全の確保か。こればっかりは冒険者に依頼するわけにもいかないしなぁ。」
「完全に駆除することは出来ませんが、魔除けを設置しておけば十分でしょう。貴族であればおつきの兵士もつれているはず、何かあれば対処できると思います。」
「ミラも乗り気か。」
「もちろんアイル様たちが譲ってくれればの話ですが。」
「難しいよなぁ。」
「いっそのこと別の場所で開発しますか?」
「もう少し金がたまったらな。」
まさか二人がこんなに食いつくとは思わなかった。
だが、新しい金儲けとしてはいいかもしれない。
帰りにアイルさんに聞いてみるか。
「そろそろ上がってきなさいよ~、のぼせちゃうわよ~。」
「飯の時間か。」
「今日は精の付くものをたくさんご用意しましたので、お腹いっぱい召し上がってくださいね。」
「・・・はい。」
今回は俺の休暇。
だから昨日もしなかったし、さっきもそういうことはナシと話したはず。
なのになぜそんな料理が・・・。
うん、俺を元気づけるためだよな。
そうだよな。
とまぁ、そんなことを考えてみても、もちろんそんなわけもなく。
結局食べるもの食べて、することしての温泉旅行になったのだった。




